ごめんなさい。2
俺は藤堂夏樹だ。
幸いにも異世界で新たな肉体を手にいれている。
意識だけが異世界に行ったとして肉体に定着しなければ長い夢と変わらない。目的も本末転倒というやつだ。
これはおそらくシスターのおかげなのだろう。
俺の言うシスターとは、SASに協力してくれているフィリアという名の女性だ。趣味は魔具集めときた。この肉体はその魔具ドールかも知れない。いや、そうに違いない。
シスターが手を貸してくれたおかげでここで生きていけるのだからありがたい。
しかし、あの銀髪は素晴らしく綺麗だったな。
この世界じゃ会えないのは寂しいぞ。
冷静になれ、寂しいのは寂しいけれども。
ここでやる俺の仕事に考えを戻す。教会で起きた忌まわしい現実に直面したシスターは俺に知恵をくれた。それが異世界に行ける方法だったわけだ。非合法的な異世界召喚をやってしまったということになるらしいが、非合法はもはや気にしない現世でも世界的に処罰され居ても居ない研究員だからな。
目的を遂行する初めの一歩としてやるべきことは……。
すでに意識の確認と人形の初期動作の検証はできている。人形はシスターの能力によるものらしいが半信半疑でもあったが信じるしかないようだ。
リアルなゲーム世界。要するに自分が自分ではない自分のアバターを演じているそんな気分だ。
俺の目的はまず、刻夜くんを探し経緯を説明し、こちら側に率いれる。
逃亡した天薙神父の真相を探り突き止める。
フィリア様の言うことを信じるなら奴は魔王に支配されている可能性がある。つまり、この世界は魔王によって統治されていることになる。
俺も戦う術を習得しないといけない。
ゲームなら冒険者ギルドに行ってチュートリアルをこなすことで初期ボーナスが手に入るのだが、人生は絶対に甘くない。
俺の初期装備はまさかのTシャツと短パンでこれから虫取に行きますと言わんばかりの装備に携帯品はなし。
あたり前だが金もないのがリアルだ。
なら、何から始めるかそんなのは簡単だ身近で俺に投資できる人を探す。裕福な人間じゃなくていい。
極論で言うなら老人夫婦の二人暮らしが理想だ。
心に付け入る隙が多いいい意味で優しい人間と分かりやすいからだ。
そもそも、異世界に来たんだ俺にも何らかのスキルがあるのだろうか。
ゲームやら異世界転生ものの作品では能力や世界に馴染むのが早く感じるが、俺もそうとは限らない。
有用なスキルはあって困る事はないけど、目立つ事はしたくない。
使い方を誤れば目的の足枷になるだろうしな。
だからまずやることは地形の確認だ。
パッと見は畑に囲まれた和花な農地の村ってとこか。
少し先に見える丘に行ってみるか。
久しく外の空気や空すら拝めてなかったせいか知らない世界でも風が気持ちいな。でも、反比例的にスタミナが減った感覚が凄い。
しっかし、ここまで歩いてまだ人にすれ違わないとは……。
丘から見えた湖までもう一ふんばりだな。
「くっそ疲れた。この身体は人形と言うより本物の肉体じゃんか。もう何キロ歩いたよ。ったく体力しんどいぞ。刻夜君は無事なのか?死んでるオチないよな。俺が死にそうだけど」
湖がどうにか近くに見えてきたようだが、もうすでに辺りは日が落ち暗くなってきた。
「まだ遠くだが、明かりが見える。家か舟か、とにかく飯食べてー」
ばた。