プロローグ 5
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教会を監視していた研究所は危険を察知した。
「このままじゃまずいな。至急教会に向かう。雫、車出せるか」
「行けます」
「よし。急ぐぞ。藤堂は情報をリークしてくれ」
「十年前に竜胆博士が仮定した事が起きますね。急ぎます。セキュリティ本部応答して下さい」
『こちらセキュリティ本部です。何かありましたか』
「こちら、特殊空域研究所SASの藤堂です。至急セキュリティ本部の部隊の派遣を要請します。自衛官との連携により地域住民の避難と我々との同行部隊の編成を願います。これから数時間以内に高質力のマイクロウェーブが予想されます。被害を受ける地域は関東全域のおそれがあり地下シェルターへ誘導をお願いします。電力会社各位に電力の遮断の要請をそれにより警察、消防の配置もお願いします」
『了解しました。藤堂さんから送られたエリアの部隊に派遣を要請しました。合流して下さい』
「ありがとうございます」
「竜胆博士。絶対に保護しましょう」
「もちろんだ。被害を出させてたまるか! あの時、玖城黎華が異世界から現世に連れ込んだ災厄の存在は絶対に保護する」
藤堂は急ぐ車で持ち込んだ端末から教会の監視を続けた。
「寝台に寝かされている少年が保護対象の玖城刻夜くんですね」
「そうだ」
玖城刻夜を災厄と呼ぶのは明確な事実がある。
現世と異世界どちらも遺伝子を取り込んで生まれた人間だと言うこと。
何らかの衝撃が加わりバランスが崩れプラズマに似た現象が空間に及ぼす可能性があること。
「この画面に映る神父は、以前、監視対象の彼女、黎華が姿を消した時に映りこんだ学生でしたね」
「天薙紅刃。こいつは現世の人間なはずだったんだが、黎華とともに姿を消し再び戻って来たときには雰囲気が変わった。そんな気はしてはいたんだ……」
「なぜ、わかっていながら管理下に置かなかったんですか!? 俺が言うのもなんですが、めちゃくちゃですよ。ましてや十年ですよ! でも、確かに研究室はひっそりしてたあの時に比べ国を動かすほどに大きくなりましたが……」
雫が運転する車は教会のある森の入り口に到着。
派遣された部隊と合流し、竜胆の管理下の下に部隊の配置、今の状況を説明した。
「竜胆さん非常にまずいです」
藤堂は雫とともに車内から端末を通して配置についた防護服の竜胆に連絡をとった。
「どうした」
「まじで何ですかこれは……異常だ……」
「はやく説明してくれ! こっちも空間の圧力がすごい。なかなか進めないくらいだ」
「各エリアの守護部隊の配置完了。ちょっとここまで来て今さら動揺しないでよ! 竜胆博士、私が変わります。藤堂くんは急いで森一帯にアンチフィールドを展開して」
「了解です。……こちら藤堂です。これより、森一帯にアンチフィールドを展開します。各部隊長は守護に尽力をあげ、先ほど支給したポールを設置して下さい」
雫と藤堂は仕事を交換して対応した。
「竜胆博士聞こえますか」
「あぁ、教会の中はどうなってる」
「率直に言います。物凄い霊体反応です。空間の圧力はそこから漏れる余波によるものです。今、中では保護対象の少年が起き上がり宙に浮き始めました」
「そうか、いよいよだな。 ここまで来て間に合わなかったかも知れんな」
「アンチフィールド展開しました! 何ですかあの光は……その……神父が持っている剣が……」
きっと もうすぐ異世界冒険ファンタジーに行けるはず はず……。