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98 次郎4
次郎は子供の誕生を機に、長く身を置いていたヤクザの社会から足を洗いました。
その後。
カタギとして就職できた清掃会社は人員整理にかかり、わずか三カ月ほどでクビになってしまいました。
このままでは女房と子供を食わせていけません。
次郎は思いあまって、自分をこころよくカタギにしてくれた親分の元を訪ねました。
親分がそんな次郎を一喝します。
「もう手を切ったんだ、ここには二度と来るんじゃねえ」
「それが……」
次郎は組を抜けてからのことを話しました。
「知り合いが土木会社をやってるんで、そこに行ってみろ。オマエのことは包み隠さず話しておく」
「それでは元ヤクザってことが……」
「腹を割って話せばわかってくれるもんだ」