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90 天狗の羽団扇2
ある日。
山に住む天狗のもとを、ふもとの村の長が訪れました。
「天狗様、どうかお助け下さい」
村の長の話では、夜になると溜池に怪しい火が現れるようになり、みなが怖がって田んぼに水が引けず、こまっているのだといいます。
その晩。
怪火が村に現れると、天狗はさっそく羽団扇で風を起こしました。
ですが、怪火はフラフラとするばかりです。
羽団扇でいくらあおいでも、吹き飛ぶどころか消えもしませんでした。
明け方。
怪火は溜池に帰っていきました。
みんなであとを追って行くと、溜池の淵に立っている柳の古木の根元で消えました。
火の玉は柳の木の妖だったのです。
だれとなくつぶやきました。
「柳に風ではなあ」




