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9 わら人形
ある月明かりの夜。
ある神社の裏にある森、そこへ二匹のタヌキがやってきました。
母と子の親子です。
二匹が一本の大きな杉の木まで来たときでした。
子ダヌキは杉の幹にくっついている奇妙なものを見つけ、それを指さして母タヌキにたずねました。
「ねえ、あれってなあに?」
母タヌキが教えます。
「あれかい、あれは呪いのわら人形っていうんだよ」
「呪いのわら人形って?」
「ごらん、長くて太い釘がわら人形の胸に打ちつけられてあるだろ。ああやって、憎い者を呪い殺すんだよ」
「いったいだれがそんなこと?」
「人間だよ。ああやると、憎んでいる相手を呪い殺せるんだって」
「人間って怖いことをするんだね」
「ワラにもすがる思いなんだよ」