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89 猿の楽園
猿の住む島があった。
遠い昔。
二匹の若いカップルが流れ着き、それから数百年の長い時を経て、島じゅうに群れが広がり、島は猿の楽園と呼ばれるようになっていた。
それが一年ほど前、島に不治の病が流行り、今では若い二匹を残すのみになっていた。
幸運にも生き残った二匹が話している。
「キッ、キ、キイー」
「キイ」
以下、人間の言葉にする。
「ねえ、この島をまた元のような楽園にしようよ。それが生き残った私たちの役目だとは思わない?」
「どうやって?」
「子供を作って、少しずつ仲間を増やしてゆくの」
「無理だ」
「どうしてよ」
「……」
「弱虫!」
「ところで頼みがあるんだ」
「なに?」
「おまえ、女言葉でしゃべるのをやめてくれないか」