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85 九尾の狐
九尾の狐は九本の尾を持ち、そのあたりの山々に住む狐たちの頭領でもありました。
あるとき。
家来である狐の一匹が、あわてた様子で九尾の狐のもとを訪れました。
「親分、大変です!」
「どうした?」
「風のうわさで聞いたのですが、このたび京の都に、人間の生き血を吸う鬼が現れたそうであります」
「人の生き血を吸う鬼だと? そのような鬼、わしはこれまで、見たことも聞いたことがないぞ」
「そやつ、どうやら最近、遠い異国の地から船で渡来したらしいのです」
「で、その鬼の名前はなんというのだ?」
「キュウケツ鬼というそうです」
「なんだと!」
これにはさすがの九尾狐もたいそう驚きました。
「尾じゃなくて、ケツが九つもあるとはのう」