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80 ろくろ首
その昔。
霊界のはずれに一軒屋があり、そこにはろくろ首の夫婦が住んでおりました。
夫は頭が首から抜ける、ろくろ首。
妻は首が長く伸びる、ろくろ首。
生まれや育ちはちがっていても、二人はたいそう仲むつまじく暮らしていました。
そんなある日。
「ちょっくら出かけてくるからな」
旦那は体から首から上を抜くと、体を家に残したままふらりと外に出ていきました。
その夜、旦那の頭は帰ってきませんでした。
次の日も帰ってきませんでした。
それから一週間がたちました。
どこへ行ってしまったのか、それでも旦那の頭は帰ってきませんでした。
――あのひと、どうしたんだろうね?
女房は頭のない旦那に目をやり、首を長くして帰りを待つのでした。




