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64 女狐
その昔。
ある山深い村に、源助という猟師が一人で暮らしておりました。
雪の降る夜のこと。
表の戸を叩く者がおり、源助が戸を開けてやると美しい女が立っていました。
「道に迷ってこまっています。一晩、どうか泊めてくださいませんか?」
「さあ、あがるがいい」
源助は女を家の中に入れてやりました。
――こんなあばら家に、若い娘が一人で訪れるわけがない。こいつは女狐の化けたものだな。
源助はいきなり女に飛びかかると、あっというまに柱に縛りつけました。
女が狐に姿を変えて問います。
「私は皮をはがれ、毛皮にされるのでしょうか?」
源助は首を横に振って言いました。
「すでにおまえ、化けの皮がはがれておるではないか」