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54 人柱
とある町はずれ。
そこには小さな石碑が立っていて、苔むしたそれにはサヨという名が刻まれています。
五百年ほど前。
この土地には暴れ川と呼ばれる川があり、大雨で荒れるたびに橋が壊れて落ちていました。
ある日。
領主の夢枕に神が立ちました。
「人柱を立てれば神の加護が必ずやあろう」
重臣の多くは反対しましたが、領主の命令に最後までさからえませんでした。
その人柱に選ばれたのは、橋のたもとに住む百姓の娘のサヨでありました。
サヨは人柱となって川に沈みました。
その年。
橋は川の氾濫で流され、サヨが縛られていた杭だけが川底に残りました。
みなは涙して後悔をしました。
サヨの石碑。
今でもクイの証として残っています。