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52 山伏
この日。
ブゥオ、ブゥオ、ブゥオー。
山から里の村に向かって、法螺貝を吹く音が鳴り響いてきました。
この法螺貝の音。
山の頂上にいる山伏が、村に降りてくる合図として使っているものでした。
これを聞いた村人たちは、急いで食料を準備して山伏を待ちました。
一刻後。
山伏が村に降りてきました。
山伏は籠いっぱいの食料を背負い、帰りはこれを担いで山道を登ることになります。
村人が山伏をねぎらいます。
「山のてっぺんまで難儀だねえ」
「ワシは修行をつんだ身。天狗のように空を飛べるんで造作ないことよ」
ブゥオ、ブゥオー。
山伏は法螺貝を鳴らしてから帰っていきました。
村人が見送って言います。
「ホラを吹くなあ」