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49 タコ太郎1
ここは海の底。
そこに一組のタコの夫婦が暮らしておりました。
亭主のタコ太郎は根っからのグータラで、今日も昼になるというのにまだ寝ています。
そんなタコ太郎を見て、女房が言います。
「ねえ、あんた。早く起きて、なにか食べ物をとってきておくれよ」
女房はしばらく何も食べていませんでした。
生まれたばかりの子供の世話で忙しく、どうしても巣穴から離れられなかったのです。
「ねえ、お願いったら! 子供たちも、おなかをすかせてるんだから」
そんな女房の頼みもどこ吹く風。
「わかった、わかった」
タコ太郎はグニャグニャとして、いっこうに動こうとしませんでした。
女房があきれ顔で言います。
「あんたって、ほんと骨のない男だねえ」