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46 琴の付喪神
その昔。
ある旧家の蔵の奥深く、そこに古い琴が大切にしまわれておりました。
それがこの夜。
琴は長い年月を経て付喪神となり、己の手によって音を奏でられるようになりました。
こうして付喪神となった琴は、自分で琴が弾けるようなって嬉しくてたまりません。
夜な夜な、蔵の中で弦をつま弾いては、その音に酔いしれていました。
ですが、もともととても古い琴であります。
毎晩のように弦をはじいているうちに、数ある弦もやがて一本二本と切れていきました。
そして、この夜。
パシッ!
ついに最後の一本が音を立てて切れました。
付喪神の琴は、それから二度と音を立てることはありませんでした。
蔵の隅でコト切れていたのでした。