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44 二宮金次郎像
ここはある小学校の校長室。
この日。
二宮金次郎像は薪を背負ったまま、校長に向かって頭を深く下げました。
「校長先生、どうか私をこれまでのように、この学校の校庭に残してくださいませんか?」
「ふむ」
校長は渋い顔をしました。
それは先月のこと。
この小学校の校舎の建て替えが決まりました。
新しい校舎は今の校舎の隣に建つ予定で、そこにはかつてより二宮金次郎像があって、近いうちに小学校からの立ち退きを迫られていたのです。
「それはできませんな」
校長は首を横に振りました。
「私がいて、学校になんの損が?」
二宮金次郎像は食い下がりました。
「今の子供たちには、そうした古い考えのソントクは必要としないのです」