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37 天狗の羽団扇1
その昔。
ある大きな山のてっぺんに、父と息子二人、合わせて三人家族の天狗の一家が住んでおりました。
ある日。
父が息子二人に言いました。
「おまえたちはもう大きくなった。明日から、二人とも隣の山を住み家とするんだ」
大人になったのだから独立しろというのです。
隣の山にはちょうど、二人がそれぞれ住めるような二つの峰があり、兄が東の峰、弟が西の峰に移り住みました。
その後。
兄弟の間でケンカが始まりました。
それは収まるどころかいよいよ激しくなり、互いに羽団扇を振り回し、風まで起こして争うまでになりました。
父が二人のもとにやってきて説教をしました。
「血を分けた兄弟ではないか、うちわもめをするでない」