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32 骨壺
今日。
ボクの大好きなおじいちゃんが骨になりました。
葬祭場でみんなが見守るなか、最後の最後、おばあちゃんが喉仏といわれる骨を拾って、骨壺に収めました。
骨壺のふたが閉められました。
「おじいさん、ずっとありがとうね。私はとても幸せでしたよ」
おばあちゃんが涙ながらに骨壺に語りかけます。
そんなおばあちゃんを見て、ボクはおじいちゃんの自慢話を思い出しました。
「おばあちゃんはだれよりも幸せなんだぞ。なんといっても、ワシと一緒になったんだからな。まあ女を幸せにするには、ちょっとしたコツとツボがあってな……」
そのおじいちゃん。
おばあちゃんの人生をいっぱい幸せにして骨壺に入りました。