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29 千手観音
その昔。
あるところに大きなお寺がありました。
その寺は歴史が長く由緒もあり、広い本堂には阿弥陀様をはじめとして、たくさんの仏像たちが鎮座していました。
ある年の暮れ。
この日は住職や小僧ら全員が、のっぴきならない葬式や法事でいくつかの町や村に出かけ、寺には仏像たちだけが残って留守番をしていました。
この時間。
仏像らにとっては気の休まるひとときとです。
阿弥陀様は膝をくずしてから、隣に立っている千手観音に声をかけました。
「なあ、千手観音さんや。すまないが、ちょっと肩をもんでくれんかのう」
「すみません、ほかの者に言ってくれませんか?」
「忙しいのかい?」
「はい、いつも手いっぱいなもので」




