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19 狸の茶釜
あるとき。
寺の門前に茶釜が転がっていました。
その茶釜は狸の化けたもので、化け狸が茶釜に化けて寺に入り込み、お供え物を盗んで食おうとたくらんでいたのでした。
狸の茶釜は思惑どおり和尚様に見つけられ、化け狸はまんまと寺に入り込むことができました。
「さて、茶でも沸かすかのう」
和尚様は竈に茶釜をかけ、それから独り言のようにつぶやきました。
「火を焚くと尻が熱いだろうな。もしかたら火傷をすることになるかもな」
「まっ、まってくれ!」
突然、茶釜が狸に姿を変えました。
化け狸は正体を見破られて驚いています。
「やはり狸であったか」
「和尚様、なんでわかったんだ?」
「なに、カマをかけたまでじゃ」