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18 木の精
その昔。
おじいさんがいつものように桃畑の草刈りに行きますと、この日、一本の桃の木の幹がぼんやりと光っていました。
「おっ、あれは!」
光る竹を切ったら、その中に竹の精がいた。
おじいさんは子供の頃、そんな不思議な話を聞いたことを思い出しました。
おじいさんは光る桃の木の前に立ちました。
「この桃の木には、もしかして桃の精が入っているのかも……」
おじいさんはそう思うと、さっそく草刈りの鎌で光る桃の木の幹を切りました。
ですが……。
桃の幹の中からは何も出てきませんでした。
さらに先ほどまでの光もいつしか消えていました。
おじいさんはあたりを見まわし、それからひとり言のようにつぶやきました。
「キノセイだったのか」