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12 小便小僧
ここはある大きな美術館。
考える人は長いこと考えた末、自分が展示されてある美術館を抜け出して、その町の観光をすることにしました。
深夜。
考える人は警備員の目を盗んで屋外に出ました。
美術館の前の広い庭を歩き進みます。
と、そのとき。
「おじさん、こんな夜中にどこへ行くの?」
背後から子供の声がしました。
そこには小さな池があり、小便小僧が立ち小便をしていました。
「ちょっと町までな」
「ねえ、ボクも一緒に連れてって」
小便小僧は小便をやめ、池の水に膝までつかりながら急いでやってきます。
ところが……。
池の淵の柵まで来て立ち往生してしまいました。
「そんな柵、早いとこまたいでしまえ」
「ボク、子供だからマタゲないんだ」