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101 面倒くさがり屋の幽霊
「あなた、開けたらちゃんと閉めてよね!」
今夜も居間で女の甲高い声がする。
続いて間の抜けた男の声。
「ああ」
その話の受け答えからして、どうも彼らは夫婦のようだ。
この家はオレが首を吊ってからというもの、三年ほど空き家となっていたのだが、どうやらこのたび、管理人からその事実を知らされていない夫婦が入居したらしい。
そして、この旦那。
オレに似て面倒くさがり屋で、ひどくだらしがない男のようで、開けた戸を閉めない悪いクセがあるらしい。
オレのやったことで、奥さんから叱られる旦那には申し訳ないが、ここを出て新たな住処を見つけるのも面倒である。
ずいぶんうるさくなったが、オレはそのままここに住み続けることにした。