表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/25

9.八つの星【オクタグラム】

 クエストを終えた俺たちは、山岳エリアを抜け帰路につく。

 隠しておいた馬車に乗り、リガルドの運転で街まで戻った。

 馬車を門横の貸し出し所に返したら、徒歩で組合所まで行く。

 街の中を歩いていると、周囲からの視線を感じるのは変わらない。

 ただし、向けられる視線の種類は、少し変化していた。


「あっ、ジークさん! お帰りなさいませ」


 組合所に入って、最初に声をかけてくれたのは受付嬢のリーナだ。

 彼女は冒険者登録の時に対応してくれた人で、あの後も何度か関わることが増えた。


「確認お願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 俺はカウンターに採取した素材と、モンスターからドロップした結晶を提示した。

 討伐したモンスターが結晶を落とすのは、現代でも変わっていない。

 モンスターによって形や大きさが異なるから、討伐クエストの確認に利用されている。

 それ以外にも、魔道具の動力源になる便利な素材だ。


「確認が出来ました。では、こちらが今回の報酬になります」

「ありがとうございます」


 高ランクのクエストになると、一回で数万トロンも貰えるから楽で良い。

 報酬を確認していると、小さくぼそぼそ話声が聞こえてくる。


「おいあれって」

「ああ……」


 俺たちのことを話している。

 いつものことだし、最初から変わっていない。

 ただし、街中でもそうだったが、話の内容に変化が表れていた。


「あの集団がどうかしたのか?」

「は? お前【八つの星(オクタグラム)】を知らねーのかよ!」

「オクタグラム? 何だそれ」


 男は大きくため息をこぼす。


「オクタグラム……登録してからたった一か月半で、メンバー全員がシルバーランク以上になった超新星ギルドだ」

「一か月半で? そんなのありえるのか?」

「実際にありえたんだよ。リーダーの男に至っては、一か月でゴールドになった化け物だ」

「やばいな……それ」


 話を聞いた男は驚愕し、俺たちを見つめながらごくりと息をのむ。

 今の会話でわかるように、俺たちへ向けられているのは畏敬の視線に変化していた。

 

 約一か月前のこと。

 俺たちはギルドを立ち上げた。

 ギルドと言うのは、冒険者だけで組織された集団のことで、派閥みたいなものだ。

 名前は【八つの星(オクタグラム)】。

 登録直後から数々のクエストをこなし、怒涛の勢いでランクを上げていった。

 現在では、俺とグレン、リガルドとユミルがゴールドランクとなり、他のメンバーもシルバーランクになっている。

 そんな感じで活動を続けていた結果、知らぬ間に俺たちの噂が広まっていって……


「また見られてるよ~」

「無視しとけ」

「嫌ならワシが壁になろう」

「やったー! シトナちゃんもこっちおいでよ」

「お兄ちゃんと手繋ぐから平気」

「はっ! その手があった!」


 前とは別の意味で、注目されるようになっていた。

 馬鹿にされているわけではないので、俺としては気にならないのだけど。

 彼女たちには視線が気になるらしい。 

 報奨金の確認を終え、俺は早々に立ち去ることにした。


「じゃあ、また明日」

「はい! お待ちしております」


 リーナにあいさつをして組合所を後にする。

 向かった先は以前の宿屋ではなく、住宅街の一軒家。

 二階建ての木造建築には、【八つの星(オクタグラム)】と書かれた表札が飾られている。


「たっだいま~」

「あら、お帰りなさい」


 扉を開けて最初に出迎えてくれたのは、エプロン姿のミアリスだった。

 その後に続いて、アカツキとクロエが顔を出す。

 今日は彼女たちが留守番組で、夕食の支度を整えてくれていた。


「お帰りなさいませ、ジーク様」

「ただいま」


 ミアリスとアカツキも、こちらに来て服装が変わっている。

 クロエだけは、屋敷と同じメイド服のままだ。

 別に変えても良いと言ったんだが、こっちのほうが慣れているからと譲らなかった。

 彼女なりのこだわりがあるのだと思い、それ以上は言っていない。

 

 ちなみにこの家は、活動拠点として最近購入したばかりだ。

 少し前まで宿屋で暮らしていたけど、色々と面倒だったからな。

 クエストを受けてお金も溜まったし、思い切って二階建てのホームを購入した。

 屋敷に比べれば一回り以上小さい。

 それでも、八人で暮らすには丁度いい広さだ。


「夕食の準備はもう少しかかります。先にシャワーを済ませてきてください」

「わかった」

「わーい! あたしが一番ノリ~」

「それは駄目だユミル殿。主殿が先だ」

「いいよリガルド。女性が先で良い」

「やったー! ジーク様大好きー!」


 調子のいいことを口にして、ユミルはシャワー室へ駆けていく。

 やれやれと呟いて、順番に済ませたら、全員で一つのテーブルを囲んで食事だ。

 屋敷よりもテーブルは小さい。

 その分、互いの顔が近くて話しやすい。

 こういう所は、狭いほうが俺は好きだな。


「ジーク様」

「ん? どうしたクロエ」

「街で聞いた話なのですが、何やら『魔王』が新たに誕生したそうです」

「魔王が? どこで?」

「ここよりずっと西、王国を超えたさらに先だと聞きました。定かではありませんが、モンスターを引き連れて侵攻を開始しているとも」

「へぇ~ それはまた一大事だな」


 魔王と聞くと、千年前に戦った相手を思い出す。

 あれは確かに強敵だったな。

 同じレベルの相手なら、王国も危ないかもしれない。


「もしかすると、我々にも戦闘要請が来るかもしれません」

「そうだな。まっ、その時になったら考えよう」


ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白いと思ったら、評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ