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6.残ったクエスト全部ください

 男たちが去った後も、俺は出口の扉を見続けていた。

 そんな俺にクロエが呼びかける。


「ジーク様」

「……」

「ジーク様!」

「――!? え、何?」

「何?ではありません。やりすぎです」


 クロエに指摘されて、初めて殺気立ったことに気付く。

 彼女の後ろに目を向けると、アカツキとシトナは怖がってしまっていた。


「ああ……すまん。ついカッとなった」

「お気をつけください。早々に敵を増やしてしまうと、活動にも影響が出てしまいます」

「そうだな。うん、反省するよ」


 クロエの言う通りだと思った。

 怯えさせたアカツキとシトナには、目いっぱいに笑顔を見せて頭を撫でる。

 すると、少しは安心してくれたのか、表情が和らいだ。


「ありがとうございます」


 不意にクロエがそう言った。

 俺は表情に出ない程度に驚きながら、彼女に目を向ける。


「私たちのために怒ってくださったのですよね? 個人的にはとても嬉しいです」

「クロエ……」


 彼女は優しく微笑んだ。

 ふと、他の皆の表情も気になって、何気なく振り向く。

 他の皆もクロエと同じだ。

 言葉には出さなくとも、感謝を伝えたいという気持ちは伝わってくる。

 それが嬉しくて、俺は小さく笑った。


「お待たせいたしました。こちらへ……どうかなさいましたか?」

「あーいえ、何でもありません」


 戻って来た受付嬢が、俺たちの様子を見て違和感を覚えたようだ。

 殺気は奥まで届いてはいなかったらしく、彼女だけはケロッとしている。


「では、右手に見えるボードの奥にお進みください」

「わかりました」


 そのまま何事もなかったように従い、横長の大きなボードの横を通って部屋に入る。

 部屋の中は薄暗くて、外の光が入りにくくなっていた。

 中央には微かに光った水晶が置かれている。


「あちらの水晶が認定装置になります。お一人ずつ触れていただくと、適性の高いジョブが水晶内に映し出されます」


 受付嬢は説明すると、水晶の奥へと移動した。

 俺たちを待ち構えるように立ち、俺たちに問いかける。


「どなたから認定しますか?」

「じゃあ俺からお願いします」


 俺が手を挙げて名乗り出た。

 よくわからない装置でちょっと不安だが、他の誰かに試させる前に、自分で確かめておきたいと思った。


「前にお進みください」


 指示に従い、水晶の前まで歩み寄る。

 軽く触れてから、三秒間瞑想すると、水晶が起動するらしい。

 俺は言われた通りに触れ、目を瞑ってみる。

 すると――


「水晶が!」

「光り出した……」


 水晶は七色に変化しながら光を放つ。

 それを見て目を輝かせるアカツキとシトナ。

 俺もまばゆい光に気付いて目を開け、水晶に映し出されたジョブを見る。


「剣士か?」

「はい。貴方の適性ジョブは剣士です。しかも……凄い数値ですね。今まで見たことないくらい、剣士の適性が高いですよ」


 受付嬢は興奮気味にそう言った。

 俺にとっては当たり前の事実だったので、そこまで驚きはしない。

 千年前は剣帝と呼ばれていたんだ。

 剣士としての適性が一番高いことくらい、見る前からわかっていたからな。

 ちなみに、俺が剣帝だったことを知る者は、現代には存在しない。

 後ろにいる彼女たちにも、余計な気を遣わせたくなかったので言っていない。


「ジーク様すごい!」

「別にすごくないよ。じゃあ次、ユミルがいくか?」

「いいの? やったー!」


 そのまま順々に適性ジョブを見ていく。

 彼女たちについては未知数な部分が多いし、俺は密かにワクワクしていた。


「いっくよー!」


 ユミルは元気よく水晶に手を触れる。

 瞑想を忘れていて、注意されるまでお約束。

 そうして――


 クロエ:錬金術師(アルケミスト)

 グレン:剣士

 アカツキ:治癒術師

 ユミル:魔法使い

 リガルド:戦士

 ミアリス:召喚術士(サモナー)

 シトナ:吟遊詩人(バード)


 全員の適性ジョブが出揃って。

 こうして並んでみると、個性豊かな面々が集まったことを実感する。

 認定が終わったら、名前とジョブが書かれたカードが発行される。

 このカードが冒険者としての身分を表す物になるらしい。


「クエストについても簡単に説明しますので、このまま部屋の外へ移動しますね」


 受付嬢に連れられ、俺たちは部屋を出る。

 出てすぐのボード前に立ち止まり、受付嬢が指で示しながら説明する。


「こちらがクエストボードになります。ここに掲示された依頼書から、指定されたランクのクエストを選んで、受付まで持ってきてください」


 受付嬢が言ったランクとは、冒険者の位を示す基準だ。

 各基準とランクアップの条件は以下の通り。


 プラチナ:街を救う、魔王を滅ぼすなどの偉業を成し遂げた冒険者。特別認定。

 ゴールド:ベテラン冒険者。同ランク以上のクエスト百件達成、組合審査合格。

 シルバー:中堅クラス。同ランク以上のクエスト三十件達成、組合審査合格。

 ブロンズ:一般冒険者。クエストを三件以上達成。

 コッパー:登録直後の冒険者。


 上のランクへいくほど受注可能なクエストが増える。

 また、高ランクのクエストのほうが報酬も良い。


「今受けられるのは、ブロンズまでか」

「そういうことになります」


 早々にランクアップして、受けれるクエストを増やしたい。

 そう思った俺は、ボードに残っているクエストを見渡した。

 どうやら残っているのは、ブロンズ以下のクエストばかりらしい。

 全部で十二件くらいか。


「一度に受注できるクエスト数に制限はあるんですか?」

「いえ、ありません」

「だったら、ここに残ってるクエスト全部ください」

「え、えぇ!? さすがにそれは……」

「駄目なんですか?」

「駄目ではないのですが……本当によろしいのですか?」

「はい」


 タジタジの受付嬢に、俺はキッパリと言い切った。

 ランクアップの条件が実績を積むことなら、これが一番手っ取り早い。

 

「か、かしこまりました」


 受付嬢は動揺していたが、クエストは受理された。

 ボードにあった残りのクエスト全十二件を、これから達成しに行く。

 依頼書に指定された場所は、アクトスの街の西にある森林エリアだった。


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[一言] 銅は英語の発音ではカッパーですよ。×コッパー
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