表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元剣帝、再び異世界に剣を向ける ~千年後の世界で貴族に転生したので、好き勝手やってたら家を追い出されました~  作者: 日之影ソラ
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/25

22.もう一人の転生者

 積み上げられた死体は、全て彼女の知人。

 俺は彼女に謝らせたかった。

 小さな女の子に罪を擦り付け、現実から目を背けようよした大人たちに。

 謝らせて、認めさせたかった。

 彼女が何を思い、何を成そうとしていたのか。

 たったそれだけのことだったのに……


「ジーク、みんなが……」


 叶わないという絶望が目の前にはある。

 もしもこれが罰なのだとしたら、一体誰に対してのものだろうか。


「ジークぅ」

「ああ、わかってるよ」


 俺は彼女の頭を撫でる。

 気休めにしかならないけど、何もないよりマシだ。


「少し下がってろ」

「……うん」


 彼女を下がらせ、自分だけが前に出る。

 死体の山で座る一人の男。

 彼が敵であることは間違いないとして、何者なのか問わなければならない。

 そして、何者だったとしても、戦うことに変わりはない。


「ん、おや? もう新しいお客さんかな?」


 男はこちらに気付き、振り向いて微笑みかけてきた。

 見た目は普通の男性だ。

 微笑みかけてきた表情には、殺意も敵意も込められていない。

 どこにでもいそうな男の、ありきたりな笑顔。

 それがこんなにも怖いと感じたのは、生まれて初めての体験だった。


「お前は何者だ?」

「僕かい? う~ん、何て言えばいいのかな~ 定説の破壊者? いや、世界を正す者かな」

「……質問を変えよう。それをやったのはお前か?」

「それ?」


 男はキョトンとした表情で首を傾げた。


「お前が座ってる山だよ」

「あーこれか。そうだよ? いらなくなったから処分したんだ」

「いらなくなった……だと」

「ああ。悪魔っていうから期待したんだけど、子供一人に劣るなんて期待外れも良い所さ」


 子供と言う単語が引っかかる。

 おそらく、ルーリアのことを言っているのだろう。

 だけど、彼女の反応を見る限り、一方的に知っているだけのようだな。


「おや? もしかして後ろにいるのは魔王の女の子かな?」


 男がルーリアに気付いた。

 ニコリと微笑みかけ、ルーリアはびくりと反応する。


「君は中々よかったよぉ? でも残念だな~ やっぱり子供じゃ、人類を滅ぼすまでは出来ないよね」

「おいお前、さっきから何の話をしている?」

「何って僕のプランの話だよ」

「……その言い方だと、全部お前の仕業みたいに聞こえるが?」

「そう言ってるのさ。近隣に悪魔の村を襲わせたのは僕だ。人間への憎しみを強化して、反旗を翻させるためにね。まぁ、結局中途半端で終わちゃったけど」


 男は楽しそうに語っていた。


「ホントはさ~ もっと上手くいく予定だったんだよ?」


 仕掛けた悪戯をばらすように、無邪気で屈託のない笑顔を浮かべながら。


「でも思った以上に腑抜けで困るよ。まーでも、こうやって殺すと気分が良いね」


 どす黒い何かを内に秘めている。

 俺とルーリアはそう直感した。

 この男は危険すぎる。


「なぜそんなことをする? お前は人間じゃないのか?」

「人間だよ。見ての通り」

「だったらなぜ、人類を滅ぼそうとする」

「それが僕の使命だからさ」

「使命だと?」

「そうさ。僕は増え過ぎた人類を間引くために、この世界に召喚された」


 この世界?

 召喚と言ったのか?

 生まれたのではなく、呼び出されたという意味。

 そんな言葉を使うということは、彼も俺と同じ異世界からの転生者。

 どこかの誰かが呼び出したのか。

 こんなイカレタ人間を……


「世も末だな。そう命令されたのか?」

「命令? 違うよ、僕は最初からそのつもりだった。僕は向こうでも他人って奴らが嫌いだったんだ。そんな僕を呼んだんだし、そういう意味だろ? 僕の存在が世界の意思だ」


 どういう思考の曲解だよ。

 呼び出された理由を勝手に解釈して、好き勝手暴れまわっている。

 というのが、あの男の言い訳か。

 とことん阿保らしい。


「お前、名前は?」

「人に聞く前に、まずは自分から名乗ったらどうだい? さっきから質問ばかりで失礼だよ」

「死体の山に座ってる奴に言われたくないが、俺はジークだ」

「僕はタクトだよ。魔王の女の子と一緒にいるってことは、もしかしてこの中に知り合いでもいたのかな?」

「いいや、俺の知り合いはいない。いないが……不愉快だな」


 俺は剣を生み出し、切っ先をタクトに向ける。

 タクトはニヤリと笑い、挑発するように言う。


「僕とやる気かい? 二人がかりなら勝てると思ったのかな?」

「なめるなよ。お前と戦うのは俺だけだ。それとさっきの話だけどだ。色々とツッコミたい所だが、一番の間違いを指摘しておいてやる」

「間違い?」

「ああ。人類を間引くことが世界の意思だって言ってたけど、それはありえない」


 俺がそう言うと、タクトは眉を顰める。

 ずっとニコニコしていた彼が、初めて見せる不快な表情。


「……何を根拠に言っているのかな?」

「根拠は――この俺の存在だ」


 かつて世界を、人類を救った男がここにいる。

 記憶と力を受け継いで、二度目の生を授かっている。

 もしも世界が人類滅亡を望むなら、俺が存在しているわけがない。

 だから間違いだと、俺は断言できる。


「そうか、そういうことか! 君もこっち側の人間なんだね」

「一緒にするなよ。元は同じでも、何から何まで真逆だろ」

「ああ、その通りだ! 理解したよ……君はここで消さなければならないってね!」


 どす黒いオーラを纏わせる。

 タクトが初めて、俺に殺意を向けた。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白いと思ったら、評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ