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元剣帝、再び異世界に剣を向ける ~千年後の世界で貴族に転生したので、好き勝手やってたら家を追い出されました~  作者: 日之影ソラ
第一部

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18/25

18.えーっと、君が魔王なの?

 今度は俺が見せる番だ――


 そう言って、俺は握っていた剣を離す。

 彼女は身構え、守るようにデスサイズをかざす。


「なぁ魔王もどきのお姉さん。お前は本物の聖剣を見たことがあるか?」

「……どういう意味じゃ?」

「そう警戒するなよ。ただの質問だ。で、あるのか?」

「……ない」

「そうか。だったらちょうど良い」


 俺は右手を前にかざす。


「見せてやるよ。本物の聖剣を――」


 俺の身体が光り出す。

 あふれ出る白い魔力は粒子となり、空気中に舞う。

 漂う粒子は右手へと収束し、光の棒となり、さらに形状を変えていく。


 俺が持つ力――【剣の加護】。

 実を言うと、そんな加護は存在しない。

 剣を生み出す能力は、まったく別の力の恩恵。

 俺の身体に宿るそれから漏れ出た力の一滴に過ぎない。


 ここまで言えば、もうわかるだろう?

 そうだ。

 俺の身体には……聖剣が宿っている。


「何じゃ……その剣は」

「これが本物の聖剣。名はグラニカだ」


 剣の聖剣グラニカ。

 俺が千年前に召喚されたとき、一緒に手に入れた相棒。

 見た目は普通の剣だが、発するオーラは桁違い。

 ミゲルが使っていた偽物とは、雰囲気からまるで別物だ。

 それを感じ取ったのか、彼女は大きく三歩下がった。


「逃げるか? もう二度と悪さしないなら、このまま見逃してもいいんだぞ?」

「ふ、ふざけるでない! 妾に……逃げ道などない!」


 彼女は声を荒げてデスサイズを振りかざす。

 さっきと同じように魔力を込め、強大化させて攻撃してくるつもりだ。

 だが――


「そうか……残念だ」

「……え?」

 

 今回は受けない。

 それよりも早く、俺の剣が彼女の首を撥ねているから。

 見えなかっただろう。

 気付けなかっただろう。

 最後の一振りだけは、全力を出したからな。


 巨大化したデスサイズが、元の大きさに戻る。

 それと同じくして、撥ねた首が地面に落ちる。

 首をなくした身体は膝から崩れ落ち、立膝をついたまま固まる。


「ふぅ……終わったか」


 悪魔とは言え、女性を斬るのは良い気分じゃないな。

 あの時に逃げていてくれれば、なんて後悔が過ってしまう。

 しかし、そんな後悔の直後、俺は違和感に気付く。


「どういうことだ?」


 首を撥ねた身体から魔力が消えていない。

 そもそも、切断面から血が流れてすらいないではないか。

 代わりに首からは、黒い靄のようなものがあふれ出ている。


「まさか……」


 まだ倒せていないのか?

 いや、こいつは本体じゃないのかも――


 ボワッ!

 突然、首と肉体が黒い霧状に変化した。

 一瞬だけ閉ざされた視界を戻すと、そこには小さな女の子が座っていた。


「うぅ……」


 シトナとアカツキより小さな女の子。

 髪の色や雰囲気は、さっきまで戦っていた彼女に似ている。

 頭から小さな角が生えていて、背中とお尻から悪魔らしい羽と尻尾が生えている。

 感じられる魔力も、さっきまでと同じだ。

 ということは、つまり。


「お前が魔王ルーリアなのか?」

「他の何に見えるのじゃ!」

「い、いや、まさか子供だったとは思わなくて」

「妾を子供扱いするでない! もう立派な大人じゃ! 妾は魔王なのじゃ!」


 元気に怒る小さな女の子。

 見た目の変化の影響は大きいらしい。

 子供が駄々をこねている様子にしか、もう見えなくなっていた。


 一気に戦意が削がれたな。

 さて、ここからどうするべきか……


「なぁお前、なんで魔王なんて名乗ってるんだ?」

「妾は魔王じゃ!」

「いや、さっきも言ったが、お前は魔王に届いていないんだよ。そもそも他の悪魔はどうしたんだ?」

「……仲間などおらぬ。妾一人じゃ」


 ルーリアは寂しそうに顔を伏せながらそう言った。


「一人? なんで、他の悪魔はいるだろ?」

「おらぬわ! 妾は一人でここまで来たのじゃ! お前たち人間を滅ぼして、妾が正しかったと皆に認めさせるためにっ!」

「認めさせる?」


 俺には彼女が何を言っているのかわからない。

 ただ、何か事情があることはわかった。


「一体何があったんだ?」

「なんで……人間のお前に話さねばならんのじゃ」

「いいから話せ。そうじゃなきゃ、お前が泣いている理由がわからない」


 ルーリアはハッと気づく。

 無意識に涙がこぼれ落ちていたようだ。

 そして、自覚した途端に涙は増え、拭いきれないほど流れる。

 

「何で……う……」


 俺は聖剣を解除し、地面に腰を下ろす。

 目線を同じ高さに合わせて、もう一度彼女に問いかける。


「何があったんだ?」

「……妾たちの村に、人間が攻めてきたんじゃ」

「村? 西にあるっていう悪魔の村か?」


 ルーリアはこくりと頷く。

 そのまま続けて語ってくれた。


 ことの発端は半年前。

 彼女たちの暮らす村を、どこかの国の兵隊が襲った。

 悪魔たちは困惑していた。

 何か悪さをしたわけではないのに、突然襲ってきたのだから。

 理由を尋ねた者がいた。

 返ってきた答えは……


 お前たちが悪魔だから。


「亜人差別か……それも酷い偏見の」

「そうじゃ。妾たちは悪いことなんてしてないのに、皆殺されて……妾の母も」


 話を聞いていてわかった。

 どうやら彼女の家系は、千年前の魔王と遠い血縁関係にあるらしい。

 だから、幼い彼女でもこれだけの力を持っていた。

 

 そして、力を持っていた故に、彼女は孤立することになった。

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