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元剣帝、再び異世界に剣を向ける ~千年後の世界で貴族に転生したので、好き勝手やってたら家を追い出されました~  作者: 日之影ソラ
第一部

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17/25

17.本当に魔王ですか?

「剣よ――」


 俺は剣を背後に生成。

 射出できるように待機させる。


「妾の魔法で粉砕してくれるわ!」


 対する魔王も魔法陣を展開。

 不意打ちの時に使っていた砲撃の魔法を発動させる。

 互いに攻撃の準備を整え、呼吸のタイミングで発射させる。


 剣と砲撃がぶつかり合い、激しい火花を散らせる。

 どちらの攻撃も撃ち落とされ、相手には届いていない。


「ほう、貴様は中々やるではないか? そこで寝ている出来損ないとは違うようじゃのう」

「一緒にされると困るな。こちとら千年不敗だ」

「千年とは! 大きく出たものじゃ……良い、良いぞ! ならば妾も少々本気を出してやろう」


 魔力が上がっていく。

 掌に収束した魔力が形をなし、鋭い刃へと変化した。


「デスサイズ、それがお前の武器か」

「いかにもじゃ。この鎌で貴様の首を刈り取ってやろうぞ」


 さらに魔力が上昇していく。

 これまで手を抜いていたのは事実だとわかる。

 とは言え、まだ驚くほどの変化ではない。

 かつて魔王と戦った身としては、この程度では足りないとさえ思う。


「来い」

「貴様が来るのじゃ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ジークが不在となった七人は、モンスターの戦闘を継続中。

 彼がいなくなっても危なげなく戦い抜き、今のところの被害はない。


「さすがに疲れてきたな」

「うむ。できれば一度下がって休息を取りたいところだが……」


 グレンとリザルドの前には、留まることのないモンスターの群れが見える。

 勢いは一向に衰えない。

 他の冒険者たちも奮闘しているが、体力の限界が近づき、徐々に劣勢へ傾きつつある。

 ここで彼らが退けば、戦況は一気に悪くなるだろう。


「ユミル」

「大丈夫クロエちゃん、まだいけるよ!」


 だが、火力を担当するユミルの魔力にも限界が近い。

 回復役であるアカツキでも、無尽蔵に回復させられるわけではない。

 他の皆も同様に、限界と言う文字が浮かび上がる。


「こうなったら、信じて待つしかないな」

「そうであるな。信じよう、我らが主殿が――」


 魔王を倒すことを。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 剣と大鎌が交錯する。

 魔法による砲撃は、剣の弾丸が相殺する。

 一撃一撃を受けるたびに、地形が変わるほどの衝撃波が生まれる。


 軽薄、無邪気。

 その奥に秘めたどす黒い強さ。 


 戦いは拮抗したまま、両者壁を駆けあがり渓谷の上へ出ていた。


「ここまでやるとはのう。貴様本当に何者じゃ?」

「さっき言っただろ? 通りすがりの冒険者で、下のほうで寝てる勇者 (仮)の弟だよ」

「そう言いながら、実は貴様が本物の勇者なのではないのか?」

「冗談言うなよ。というか、そういうお前こそどうなんだ?」

「む? 何がじゃ?」

「お前……本当に魔王か?」


 俺が彼女に問いかけると、あからさまに不機嫌になり、眉間にしわを寄せる。


「どういう意味じゃ?」

「お前、魔王にしては弱すぎるんだよ」

「なっ……」


 彼女は驚き目を見開く。


 何度も言うが、俺は魔王と戦ったことがある。

 千年前の出来事だが、今でも鮮明に覚えているよ。

 それほどに壮絶な戦いだった。

 勝てるかどうか、勝敗がつくまでわからなかったんだ。

 だからたぶん、俺以上に魔王の強さを知っている人間はいないだろう。

 そんな俺だからこそわかる。

 彼女は魔王を名乗るには弱い。

 よくて魔王の配下にいた四天王くらいの実力しかない。


「妾が弱いじゃと……妾のどこが弱い!」

「一言で表すなら全部だな」

「すべて……?」

「ああ。魔力、膂力、戦闘センス、どれをとっても足りない。魔王っていうのは、もっと圧倒的でないと駄目だ。お前にはそれがない」


 向かい合うだけで肌がピリピリする感覚。

 彼女からはそれを感じない。

 俺は思ったことをそのまま言葉にして伝えた。

 それを受け取った彼女は、しばらく黙りこみ……


「ふふっ……ふふふ、ふははははははははははっ」


 突然、大きな声で笑いだした。

 壊れてしまったように、高らかに笑いだした。

 彼女の声が渓谷に響く。


「そうか、そうかそうか! 貴様も妾を愚弄するのじゃな! 妾では足りぬと、魔王には成れぬというのじゃな!」


 錯乱したように彼女は言う。

 その発言には、俺の言葉ではないものも含まれていた。


「ならば見せてくれようぞ! 妾が真に魔王である証拠を! 圧倒的な力というものを!」


 彼女はデスサイズを上にかざす。

 込みあがる魔力に大地が、空気が揺れている。

 高密度な魔力がデスサイズに収束し、激しい金属音が鳴り響くと同時に、デスサイズが巨大化する。


「これは……」

「どうじゃ! これが妾の力、この一振りさえあれば、貴様ら人間など一瞬で塵に変わるじゃろう!」

「……」

「恐怖で返す言葉もないか? 撤回するなら今のうちじゃが、どのみち許さぬ。貴様はここで――消えるがよい!」


 彼女はデスサイズを振り下ろす。

 刃が振り下ろされた直後、地は裂け先に新たな渓谷が生まれた。


「ふふふっ、他愛もない」

「――誰が?」


 が、俺には通じない。

 立ち上った土煙が晴れると、五体満足で立っている俺が見える。

 刃を剣で受け止め、自らは無傷。

 その事実に驚愕し、彼女は後ずさる。


「ば、馬鹿な! なぜ生きておるのじゃ?」

「なぜって、死んでないから生きているに決まっているだろ?」


 頓智のような回答をして、剣をグイっと持ち上げる。

 デスサイズが弾かれ、元の大きさに戻る。

 唖然とする彼女を見て、俺は不敵に笑う。


「今度は俺が見せる番だな」

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