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元剣帝、再び異世界に剣を向ける ~千年後の世界で貴族に転生したので、好き勝手やってたら家を追い出されました~  作者: 日之影ソラ
第一部

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12/25

12.久しぶりに王都へ戻ります

 クエストボードに張られた依頼書には、現状で分かっている情報が開示されていた。

 王国軍は現在までに、二度大規模な殲滅作戦を実施している。

 一度目は魔王誕生の知らせがあってすぐのこと。

 王国騎士団の三割を投入し、魔王軍が勢力を広める前に叩こうとした。


 しかし、結果は惨敗に終わる。

 すでに魔王軍は、圧倒的とも言える戦力を保持していた。

 騎士団員が目にしたのは、視界を埋め尽くすモンスターの群れ。

 確認が出来ただけで、約五万体以上。

 数の力に押し負け、敢え無く騎士団は撤退した。


 二度目の作戦は、順当な計画のもとに遂行された。

 侵攻ルート上に罠を設置し、先手を取れるように、遠距離砲台も用意した。

 作戦に参加したのは、有志を含めて約一万人。

 周到な準備もあって、勝算は高いと思われた。


 が、結果は惨敗に終わってしまった。


 侵攻する魔王軍は、勢力をさらに広げていたのだ。

 その数なんと――十万体。

 一度目の倍の戦力を揃え、準備された策を全て真っ向から踏みつけた。

 後がなくなった王国は、近隣の冒険者組合に支援要請を出し、三度目の作戦に挑もうとしている。


「今回は最大の戦力である『勇者』が投入される……か」

 

 勇者って言っても、あいつのことだろ?

 だから大丈夫みたいな書き方してあるけど、全然説得力がないな。


 クロエと一緒にギルドボードの依頼書を眺めながら、呆れて笑ってしまった。

 要するに、二度の作戦失敗で戦力が不足しているから、冒険者も手伝ってほしいという話だ。

 言い回しは違うけど、お前たちも無関係じゃないだろ、的な一文も添えられていた。


「ジーク様、どうされますか?」

「一旦戻って皆にも伝えよう」

「かしこまりました」


 俺とクロエは組合所を出る。

 ここで俺は、本来の目的を思い出す。


「あっ、違うな。その前に買い物を済ませていこう」


 今日は五日に一回のオフ日だ。

 元々は夕飯の買い出しに行くつもりで、クロエと街に出たんだった。

 店に向う道中に組合所を通ったら、異様に混み合ってたから気になって現在に至る。


「材料買わずに帰ったら、ユミル辺りが怒るだろうからな」

「そうですね」


 クロエは小さく微笑み、店の方向へと振り向く。

 そのまま二人で買い物を済ませ、夕日がきれいに見える頃、家の扉を開けた。


「ただいまー」

「ただいま戻りました」

「あっ! ジーク様おっかえり~ クロエちゃんも!」

「お兄ちゃん、やっと帰ってきたの」

 

 出迎えてくれたのはユミルとシトナ。

 二人の手には、それぞれモップと雑巾が握られている。

 チラッと床や棚を見ると、ピカピカに磨かれているのがわかった。


「掃除は終わったみたいだな」

「もっちろん!」

「頑張ったのは私。ユミルはさぼってただけ」

「ちょっ、シトナちゃん!? なんでホントのこと言っちゃうの?」

「本当のこと……ね」


 クロエが冷めた目でユミルを見つめる。

 ギクッと反応したユミルは、小さく縮こまって謝る。


「ごめんなさい」

「罰としてお風呂掃除三日間」

「え、ひ……一人?」


 クロエは無言で頷く。


「……はい」


 ユミルは反論することなく、しょぼんとしながら返事をした。

 それから夕食の準備をして、全員で食卓を囲む。

 食事の時は全員が揃うし、話をするにはもってこいのタイミングだ。

 その場で俺は、組合所で見聞きしたことを伝えた。


「王国の要請か……受けるのか?」

「そのつもりだよ」


 グレンの質問に答えると、彼は目を細めて考えだす。

 何となく、彼が何を考えているのかはわかる。

 世界中で当たり前になっている亜人種差別。

 王国はその中心と言っても良い。

 亜人種は王都へ入れない。

 王都内で見かけるのは、奴隷として飼われている者だけ。

 ここにいる中にも、同じ扱いを受けていた者がいる。


「確かに王国を助ける義理はない。でも、侵攻ルート上にこの街もあるから、無関係ってわけじゃないんだよ。まぁだから、そういう理由で俺は参加する」


 正直に言えば、俺だって王国を助けたいとは思わない。

 自業自得だけど、散々な噂を立てられたからな。

 俺の仲間たちを侮辱する奴らを、許すなんてこともありえない。


「強制はしない。嫌なら待っていてくれ」

「いいや。ジークが参加するなら、オレたちも参加するぞ」

「うむ、グレンの言う通りである。主殿と共に歩むことこそ、我らの望み」


 グレンとリガルドがそう言うと、他の皆も同じ意見だと続く。

 結果的に全員参加で、魔王軍との戦いに参加することとなった。


 そして五日後――


 俺たちは二か月半ぶりに、王都の街に訪れていた。


「戻って来たのか……ここへ」


 見上げる青空に、街を覆う壁が入り込む。

 俺たちがいるのは王都外周に平原。

 戦いの地はここから西に向かった先、平原と渓谷の境となる。

 すでに王国の軍は作戦地点で待機済み。

 要請を受けた冒険者は、一旦王都へ集められていた。


「冒険者諸君! まずは助力に感謝する」


 姿を見せたのは騎士団長だった。


「先ほど報告があった。もう間もなく、魔王軍が渓谷を抜けてくる。魔王とはわが国最強の剣士……勇者ミゲル・エイルワース殿が戦う! そのためにはまず、モンスターの大群を突破しなくてはならない! 冒険者の皆には、可能な限りモンスターを殲滅してほしい」

「はっ! それくらい余裕だぜ」

「いつもやってることだからなぁ!」


 粋がる男冒険者たち。

 ガヤガヤと騒がしくなる様子を見て、騎士団長が笑う。


「ふっ、頼もしいかぎりだ。では行こう!」


 彼を先頭に、冒険者の一団は作戦エリアに向った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 聖剣が使えただけで、剣術が凄い訳でも身体的に異常に強い訳でもなさそう。 聖剣の性能任せな勇者なんだろうな。
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