表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元剣帝、再び異世界に剣を向ける ~千年後の世界で貴族に転生したので、好き勝手やってたら家を追い出されました~  作者: 日之影ソラ
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/25

11.お前が勇者かよ

 魔王侵攻の知らせは、アクトスの街まで届いていた。

 侵攻するルート上には、この街も含まれている。

 かなり距離はあるし、先に王都がぶつかるから、現状では慌てるほどではない。

 それと同時に、王都で勇者が誕生したという噂も流れてきた。


「は? あいつが勇者!?」

 

 夕食のテーブルを囲う中、クロエが街で聞いた噂について話してくれた。

 その内容がなんと、俺の兄であるミゲル・エイルワースが勇者に選ばれたというもので……

 あまりに驚きすぎて、持っていたフォークを落としてしまったよ。


 グレンが呆れた表情で言う。


「あいつって、一応お前の兄貴だろ」

「いや、そうだが……本当なのか? クロエ」

「はい。組合にも確認しましたが、ミゲル様が勇者に選ばれたのは事実のようです」

「そ、そうか……」


 あいつが勇者とか……いやいや、笑えない冗談だろ。

 だって、あいつに剣術の才能なんてないぞ?


 貴族として暮らした十八年間。

 二つ離れた兄のミゲルは、いつも俺に威張ってばかりだった。

 自分には才能があるだとか、お前より賢いとか。

 ことあるごとに自慢してきて、うっとうしかったのを覚えている。

 まぁ確かに魔法に関する才能はあったと思う。

 貴族の家系に生まれたこともあって、並外れた魔力量を持ち、数々の魔法を扱えていた。

 ただ、剣術に関しては微妙だ。

 稽古と称して何度か手合わせした経験はあるけど、大して強くもなかったな。


「手抜きまくったからな~ あれで自信つけたのかも」


 目立ちたくなかったから、ミゲルとの稽古はいつも手を抜いていた。

 早く終わらせたくてわざと攻撃に当たりにいったり、適当に攻撃を受け流して、当たったふりをしたりとか。

 あれで自信をつけてしまったのなら、俺にも責任があるのだけど……


 ブツブツと頭の中で考えていると、ユミルがごくごくと水を飲みほして尋ねてくる。


「ぷはー! ねぇねぇクロエちゃん、勇者ってどんな風に選ばれるの?」

「勇者選定は、国王様によって行わるの。王城に保管されている聖剣を扱えるかどうか……確かそれが条件だったはず」

「へぇ~ お城に聖剣なんてあったんだね」


 聖剣エグゼカリバール。

 王家に代々伝わる伝説の聖剣で、かつて魔王を討ち滅ぼした剣……と言われている。

 最初に言っておくが、これはたぶん嘘だ。

 歴史上で魔王が誕生したのは、今から千年前のこと。

 千年前に魔王と戦ったのは、何を隠そう俺だ。

 その時に聖剣は使ったけど、エグゼカリバールなんて名前じゃない。

 千年前から現在にかけて、別の魔王が誕生したという記述は残されていなかった。

 要するに、かつて魔王を~みたいな下りは完璧に嘘だということ。


 とは言え、聖剣エグゼカリバールが偽物だということではない。

 世界には数本の聖剣があり、俺もすべてを把握しているわけじゃないからな。

 俺の知らない聖剣を、王国が所持しているのかもしれない。

 どっちにしても、実物を見ていないから真偽はつけられれないのだけど。


「まぁ……選ばれたってことは、扱えはするんだろうな。使いこなせるのかは知らないけど」

「そうなのかな~ でも別にさ、あたしたちには関係ないでしょ」

「そうとも言えないのではないかしら?」


 ミアリスがそう言い、クロエに視線を送る。

 クロエはこくりと頷き、組合で聞いた情報の続きを話す。


「侵攻ルートにこの街も含まれる以上、組合としても何らかの手はうつ必要が出てくる……と、組合の上層部では話に出ているそうです」

「そりゃそうだよな。もしも王都が落とされたら、次に攻め込まれるのはこのアクトスだ」

「負けることがあるのか? あの王国は世界でもトップクラスの大国だろ。それに勇者もいるんだ」


 グレンがそう言ったが、俺は首を横に振って否定する。


「絶対に勝てる戦いはない。だから、常に最善の手を考えるんだ」


 かつての俺がそうしてきたようにな。


「王国がどう迎え撃つのか知らないけど、場合によっては俺たちにも召集がかかるかもしれないな」

「その場合はらどうされますか?」

「どうもこうもないだろ。王国が負ければ、この街も危ない。好き嫌いはあるにしろ、勝ってもらわなきゃ困る」


 もしもの時は参戦する。

 せっかく冒険者としての基盤ができ始めたんだ。

 こんな所で住む場所を失ってたまるか。


「まっ、その時の話だけどな。そもそも王国から要請がなければ、組合も動けないだろうし」

「そうですね」


 そんな話をした翌日だった。

 クエストボードには、デカデカとポスターのような依頼書が張られていた。

 

 王都より支援要請。

 魔王軍の侵攻に伴い、大規模な防衛作戦を実施予定。

 確実な勝利を目指し、近隣に住まう冒険者に作戦への参加を要請する。


「思ったよりも早かったな」

「はい」


 俺とクロエは依頼書を眺めながら、ぼそりと呟いた。

 屋敷を出て二か月と少し。

 まさかこんなにも早くあの場所へ戻る日が来るなんて、誰も予想できなかっただろう。


「やれやれだな」


 嫌な顔を見ることになりそうだ。

 魔王だか何だか知らないが、本当に余計なことをしてくれたよ。

 

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白いと思ったら、評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 探せば普通に他の人も聖剣使えそう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ