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リブ、オール・ファンタジア  作者: 猫山ことり
第1章。 迷い込んだ異世界
1/2

フィールド1。始まり、その1(上)

はじめまして、猫山ことりです。


ダブル主人公の光と影を描きます。

現実世界から、トリップした日向ワタルは

そこで強力な魔力を持つゼオンと出会います。



科学と魔法の激突。差別。


取り返しのつかない事。


2人は時に激突、暴走。

それでも信じる友情と信頼のお話。



愉快な妖精も、出てきます。

それではよろしくお願いします。


 


    唱えなさい、呪文を。





    そして、ようこそ。我らの世界へ。



 挿絵(By みてみん)



 




     【 フィールド1. 始まり 】




 -----5月晴れの季節。



 なのに珍しく、朝から雨が降り続いている。



 あの日。




 僕はどうしても言えなかった言葉を言うつもりだった。



 その日もいつも通りの学校で、いつも通りの日々が

 過ぎるはずだった。




 なのに僕はその日、つまらない事で彼女と喧嘩して、

 謝る事さえ出来ないまま、放課後が過ぎて行った。










 でも偶然、帰り道で彼女の姿を見つけたんだ。


「ワタル、あれって由羅ゆらじゃないか?」






 マサハルの声も無視して、僕は走りだした。


 大体、昼間ケンカしたのだってアイツが僕と由羅ちゃんを冷やかして、

 茶化したからだ。


 だから僕は心にも無いことを言って、彼女を怒らせてしまった。







 背後でマサハルの、はやす声が聞こえる。





 アイツは親友だけど男友達が女と仲良くするのを見ると、

 俄然がぜんワルぶりに拍車がかかる。






 中学の男達によくある事で、他人の恋の邪魔ばかりするのだ。







雨はますます、激しくなる。



交差点の向こうで、彼女の赤い傘が見えた。




もう少しで追いつく!








 その時、誰かが僕の中でささやいた。



〈ワタル止めて。彼女を止めて〉

〈あっちへ行ってはいけないわ〉





訳が分からなかった。幻聴だと思った。





でもその声の険しさに、僕の胸が騒ぎ出した。


だから信号が赤に変わるのも構わずに、水飛沫(みずしぶき)

激しく僕のスニーカーは速さを増した。







 あの日。


僕はどうしても言えなかった言葉を、言うつもりだった。





ずっと彼女を見ていたから。


ずっと好きだったから。






「由羅ちゃん!」










だけど、その言葉はとうとう最後まで伝えられなかった。


何故なら。










 僕の声に振り向いて赤い傘越しに、彼女の顔が見えた。






交差点の真ん中で。






 帰り道の雨の交差点で彼女に声をかけた瞬間、

彼女はトラックにねられて、死んでしまった。



あっけないほど突然に。







 僕の悲鳴に驚いて人ゴミが、野次馬(やじうま)

に代わった。



アスファルトをきしませたタイヤの(あと)

後に続くクラクション。


救急車の音。



野次馬の中で僕を見つけてパニックになった僕を

羽交い絞めに止めて「救急車!救急車!!」と叫ぶのが聞こえた。






 後は訳が分からない。







 夢だ。これは夢なんだ。

こんな現実がある訳がない。




 僕はまだ、彼女に何も言ってない。


何も言ってないのに。





「ワタル、ワタルしっかりしろ」



マサハルの声が呪文みたいに聞こえる。





ああ、これは悪い夢だ。


夢ならどうか、覚めてくれ!










 

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