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俺の幼馴染はかわいいらしい

俺の幼馴染はかわいいらしい〜小西編〜

作者: 蔵夏

ご覧いただきありがとうございます!

小西はどんな思いで中学生活を送っていたのでしょうか?

中1の春、俺は恋をした。


あれは入学式の日。


俺は新しい制服に身を包み、中学校の門を通る。


「今日から中学生…か。」


「楽しい中学生活になると良いわね。」


母さんと共に入学式に出席する為、新入生受付を目指して歩いていた。


トントン


「あの…?」


振り向くと俺と同じく新入生らしい女の子がこちらを見ている。


「このハンカチ落としましたか?」


「あ…!俺のです。ありがとうございます」


「いいえ!新入生ですよね?これからよろしくお願いします!」


その女の子はニコッと微笑んだ。


「!!」


俺は衝撃を受けた。


こんなに笑顔が可愛い女の子は初めて見た。


「は、はい。」


そう言うだけで精一杯だった。


その時、


「渚、何やってんだよ!早く行くぞ!」


向こうの方で新入生らしい男子が女の子を呼んでいる。


「あ、待ってー!…じゃあ、また!」


そう言って走って行ってしまった。


俺はその光景をただ見つめることしかできなかった。


(渚ちゃんって言うのか)


学校に来る楽しみができた。


俺はそう思った。


クラスは渚ちゃんと離れてしまった。


入学式で渚ちゃんに話しかけた男子は山口光太と言うらしい。


山口は渚ちゃんの幼馴染で、家は隣同士。


クラスが違うせいか渚ちゃんの情報があまり入ってこない。


(山口ってやつに接触してみるか)


俺は幼馴染の山口に話しかけてみた。


「ん?何か用か?」


「い、いや、なんでもない…」


いきなり渚ちゃんの事なんて聞けるわけがない。


でも渚ちゃんの事しか聞くことがない。


(まぁ、あの2人に恋愛感情なんてなさそうだし、様子を見るか)


俺はそう軽く考えていた。


渚ちゃんはまず、見た目が可愛い。


周りにもそう思っている男子は多々いるようだ。


中にはいきなり告白する強者もいるらしい。


俺にはそんな事、できない。


来る日も来る日も渚ちゃんを遠くから見つめた。


授業中、窓から外で体育の授業を受けている渚ちゃんを見ていたら先生に怒られた事もあった。


気付いたら中2ももうすぐ終わり、春休みを迎える所まで来てしまった。


あと一年しかない…


俺は焦っていた。


まず、話しかけ、連絡先を交換する。


そうしたら告白しよう。


誰にも取られないうちに。


「高山渚さん、いますか?」


俺は意を決して渚ちゃんのクラスの入口から渚ちゃんを呼んだ。


「はーい!」


可愛らしい返事と共に渚ちゃんが走ってくる。


「あ、あの。今、少し話できるかな…」


「あ!あの時ハンカチ落とした子だよね?うん!大丈夫!」


渚ちゃんは覚えていてくれた。


それだけで嬉しかった。


無事に連絡先を交換する事ができた。


後は告白するだけだ。


告白する時の言葉をスマホに打っては消し、打っては消した。


「よしっ!できた。後はこの文を覚えて直接…!」


「さっきから何ブツブツ言ってるの?」


母さんが急に部屋のドアを開けた。


「わ!な、なんでもないよ!」


俺は慌ててスマホを後ろに隠した。


「ふーん。まぁ、いいけど。昼食だから早く来なさい」


とだけ言い、母さんは行ってしまった。


(…ふぅ。)


スマホに打った告白文をもう一度読み直そうとしたその時、


「!!!!」


先程後ろに隠した時に、指が当たってしまったらしい。


渚ちゃんへすでに告白文が送信されてしまっていた。


(渚ちゃん宛の所に下書きしなければよかった…)


後悔が押し迫ってきたが、どんな返事が来るか少しだけワクワクしている自分もいた。


返事が来たのは次の日の夜だった。


『ごめんなさい。付き合えません』


当然と言えば当然だ。


だが、少し期待していただけにガッカリした。


春休みは何も考えられずに過ぎて行った。


(もう一度だけ、俺にチャンスをください)


俺は夜空の星達に向かってお願いした。




新学期。


また渚ちゃんと違うクラスだ。


もう一度だけ、告白したい。させてくれ。


これでダメだったら諦めて友達になってもらおう。


HRが終わり、後は帰宅するだけだ。


渚ちゃんを探して廊下を歩いていると、ちょうど目の前に歩いているのが見えた。


「渚ちゃん!何組だった?俺6組だったよ〜。」


どうでもいい事を言いながら昇降口近くまで来てしまった。


俺は立ち止まった。


「渚ちゃん、俺、やっぱり渚ちゃんの事が好きなんだ」


「ごめんなさい、この前もお返事したけど付き合えません」


「理由、聞かせてもらえないかな」


「私、好きな人がいるの。だから付き合えないの」


渚ちゃんが顔を赤くしている。


渚ちゃんがそれほどまで好きな人って誰なんだ。


「そっか…分かった!じゃあこれからは友達として渚ちゃんの事見てるよ!」


としか言えなかった。


それからも時々連絡をすると渚ちゃんは律儀に返事をしてくれた。


渚ちゃんは俺の事を友達として本当に信用してくれているようだった。


渚ちゃんは悩んでいた。


好きな人が近すぎて私の事を恋愛対象として見てくれない、と。


名前を出さなくても山口の事だと分かった。


俺の提案で花火大会の日、山口の気持ちを試してみることになった。


俺と渚ちゃんは花火会場で待ち合わせて結果を報告する事になった。


思いが通じたら、その好きな人を連れてくる。


そして紹介する。


通じなかったら、一人でくる。




渚ちゃんは一人でやってきた。


ものすごく悲しそうな顔をして。


俺は渚ちゃんにこんな思いをさせる山口が許せなかった。


渚ちゃんの笑顔が見たい。


その一心で冗談を言った。


言い続けた。


「…ぷっ」


やっと笑ってくれたその時、遠くの方に山口の姿が見えた。


(渡してやるもんか。もう遅いんだよ)


俺はわざと山口から離れるよう渚ちゃんを連れて別の場所に歩いて行った。




それからは友達としてたまに連絡を取り合っていた。


と言っても、俺の中から渚ちゃんの事が好きだという気持ちは消えることは無かった。


諦められなかった。


今度は少しずつ距離を縮められたらと思っていた。


運動会で借り物競争があり、俺は『特別な友達』というカードを引いた。


渚ちゃんを連れていくしかない。


渚ちゃんの元へと走り、連れて行く。


「私を選んでくれてありがとね!」


渚ちゃんはそんな事を言ってくれる。


「こっちこそ一緒に来てくれてありがとう」


俺たちは笑い合った。


しかし、


「あ、こうちゃんだ!頑張れ〜」


やはり渚ちゃんの目には山口しか映っていない。


俺は山口に激しく嫉妬した。



運動会が終わり、受験勉強でいっぱいいっぱいの毎日を送っていた。


12月になった。


世間ではクリスマスシーズン真っ只中だ。


…俺はというとインフルエンザにかかり、家から出られなかった。


インフルエンザ中にクリスマスが過ぎてしまい、プレゼントを渡すどころか買えもしなかった。


(こうなったらお守りを渡すしかない)


お正月、初詣で2つお守りを買った。


1つは自分用。


もう1つは渚ちゃんへのプレゼントだ。


今、周りでは友達にお守りをプレゼントするのが流行っている。


何か言われたら流行りに乗っただけと言えばいい。


俺は渚ちゃんの家に向かった。


事前に連絡はしなかった。


門前払いされたら嫌だから。


到着すると、緊張で心臓が口から出そうだった。


意を決してインターホンを鳴らすと、驚いた様子だったが出てきてくれた。


「これ、渡しに来たんだ。今、友達にお守り渡すの流行ってるからさっ!」


「あ、ありがとう!」


と言ってくれたが明らかに戸惑っている。


俺は玄関の方を見た。


汚いスニーカーが一足、きれいに並べられていた。


(あいつ、来てるのか)


イラッとした。


「じゃ、じゃあまた学校で!ありがとね!」


と渚ちゃんは言って家に入ってしまった。


2人が好き合っていることは見ていれば分かる。


なのに、あの2人はなぜあそこまですれ違うのか。


俺には分からない。


俺なら渚ちゃんを幸せにできるのに。


新学期、山口に宣戦布告しよう。


俺は帰り道にそう決めた。




新学期。


俺はクラスの誰よりも早く帰る支度をし、校門の前で山口を待ち伏せた。


山口が見えた。


俺は山口と公園に行って話す事になった。


「お前、渚ちゃんの事どう思ってんの?」


俺はストレートに聞いた。


「…は?」


山口は固まる。


「好きなのかって聞いてんだよ」


「なんでそんな事答えないといけないんだよ」


「いいから答えろよ」


「…。好きだけど」


「なら何故伝えない?正月も渚ちゃんの家にいたんだろ?伝えるタイミング、山ほどあるだろ」


「…は?何言ってんの?彼氏がいるやつに告白なんかしたら迷惑だろ。しかも相手は渚だぞ?」


…山口はかなりの鈍感だったらしい。


「…お前、まだそれ信じてんの?まぁいいや。伝えないなら、俺は本気で渚ちゃんを奪いに行く。俺は渚ちゃんが好きだから」


「!?」


これで堂々と宣戦布告できた。


山口もさすがに俺たちが付き合っていない事が分かったらしい。


「俺は渚ちゃんの事本気だから。一度振られて、渚ちゃんの気持ちがこっちに傾くまで友達でいようと思ってたし、お前らが両想いになるなら、渚ちゃんが幸せになるならしょうがないと思ってた。けど。お前ら、なんなの?すれ違ってばっかり。なら俺はもう我慢しない。」


(渚ちゃんを傷つける奴なんか俺の敵じゃない)


俺はそう思っていた。


山口の思いを聞くまでは。


幼馴染の言う事は説得力がある。


渚ちゃんをまるで全て分かっているような言い方だ。


(今までの俺の行いが全て間違っていたと、渚ちゃんを苦しめていたと言いたいのか?)


俺は間違っていたのだろうか。


たしかに渚ちゃんの気持ちを考えた事なかった。


俺は何も言い返す事ができず、平静を装いながら、なんとか帰宅した。



それから渚ちゃんに連絡することはやめた。


思いを断ち切ろうとしたからだ。


…全然ダメだ。


思いを断ち切ろうとすればする程、好きになっていってしまう。


会いたい、と思ってしまう。


(バレンタインデー、会えるかな。)


俺は考えていた。


逆チョコを渡そう、それでもう一度だけ気持ちを伝えようと。


ある日腹痛のため保健室に行くと、渚ちゃんと山口がいた。


俺は山口がいる所でわざとバレンタインデーに用事があるか聞いた。


すると思いもよらない返事が帰ってきた。


『俺たちは付き合っている』


(…いつの間に付き合い始めたんだ)


俺は何も考えられなくなる。


何も知らない渚ちゃんは俺にお礼を言う。


幸せに、と言うのが精一杯ですぐに保健室を出た。


渚ちゃんを取られてしまった。


その日は早退し、家で泣いた。


商店街はバレンタインデーの装飾でいっぱいだ。


(逆チョコ…できずに終わったな)


綺麗に包装されているチョコレート達を立ち止まって見つめては溜息をついた。



バレンタインデーは何もなく過ぎ、受験当日を何事もなく終わった。


試験の方はなんとかなった。


あと少しで渚ちゃんと離れてしまう。


渚ちゃんは山口と付き合っている。


だが、渚ちゃんは幸せになってはいない。


俺はある日、ある事を聞いてしまった。


それは渚ちゃんと友人らが話していた。恋人山口との事だった。


私に触れてこない、まだ手さえ繋いでいないと言って悲しそうな顔をしている渚ちゃんがいた。


友人らもそれはあり得ないと言っていた。


山口は渚ちゃんを幸せにできなかったのだ。


(これは、俺のラストチャンス)


俺はある日、渚ちゃんの家へ向かった。


最後の告白をするために。


家の前に到着した。


…まずは敵がいないか確かめる。


山口家のインターホンを押したが誰も出てこない。


よし。


今度は高山家のインターホンを押す。


渚ちゃんが出てくれた。


「俺、やっぱり渚ちゃんの事が好きだ。何度も諦めようとしたけど、無理だった。山口と付き合ってるのは知ってる。だけど…!俺じゃ、ダメかな?俺なら渚ちゃんがしたい事叶えてあげられるけど…?」


俺はそう言って渚ちゃんに近づいた。


「や、やめて!」


「やめろよ、嫌がってるだろ」


俺は気づけば山口に腕を掴まれ、睨みつけられていた。


「…っ!いってーなっ、離せよ!」


俺はそう言って離れた。


渚ちゃんが俺の事を怯えた目で見ている。


そして渚ちゃんは山口の事しか見れないと言った。


(あぁ俺の恋、終わったな)


俺はもう付き纏わない事を約束して、その場を立ち去った。


俺の初恋はとても苦い味だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 若さとはいえみんな不器用でしたね。(特に渚) 誤解を解かないで外堀埋めまくっていればいつかワンチャンあったかもなのに(ゲス
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