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第5話 外野フライ

多くのブクマ、評価ありがとうございます。

こちらの小説は不定期更新となりますが、可能な限り早いペースで更新していこうと思いますのでよろしくお願いします。

「外野フライを取れるようになるまで今日は付き合うからね」


私が軽々と梅村さんの意地悪な打球を捕っていたから、簡単なフライも捕れないことに落ち込む智賀ちゃんと真凡ちゃん。


とりあえず、基本的なことから教えていこう。


「2人ともバンザイが多いし、落下予測地点の後方に行ってから前に出る習慣を付けようか」

「前進しながら、ボールを捕るの?」

「そう。前に落ちる球を拾いに行くのは簡単だけど、予想よりノビのある打球は私でも捕るのが難しいからね」


初歩的なことを教えていたら、真凡ちゃんは前進しながらボールを捕ることに疑問符を浮かべていた。だけど、実際に落下予測地点より後方に移動してから捕球体勢に入るようになると、真凡ちゃんは予想以上にすんなりと打球を捕った。


「や、やった⁉︎」

「うん、初キャッチおめでとう。

捕ったらすぐに投げ返そうね」

「あ、そうだったわね」


予想している落下地点よりも後方まで移動させるのは、そうした方が捕りやすいというのもあるけど、後ろに逸らさないようにする理由もある。


「ひぃ!?」

「お、捕った」

「……身長のお陰ね」


一方で智賀ちゃんは、まだ後方に立つという意識があってもバンザイしてしまう。ただ、捕球は毎日ノックを受けていれば何とかなるだろう。やっぱり打球を見てすぐに落下地点を予測して、ダッシュするというのは難しい。


そして問題は、送球だ。


2人ともある程度の地肩はあるけど、コントロールが酷い。短い期間で矯正出来るかわからないし、ワンバウンドさせた方が良いと思ったのでそのことを伝える。


「外野からの送球は正確性が大事だから、バウンドさせてバックホームを目指そう。あ、お手本を見せるね」


お手本を見せるために、梅村さんの打球を見て落下地点の後方で待機する。その後、前進しながら捕球をして、その前進した時の勢いを利用して梅村さんの方向へバックホーム。計算通り、ツーバウンドだ。


すると、春谷さんが綺麗なグラブ捌きで捕球して梅村さんにトスをした。うん?春谷さんって経験者なのかな?


「あの速さで、わざわざバウンドさせるのですか」

「遠距離のキャッチボールをしていたのなら分かると思うけど、ボールをノーバウンドで捕るのは結構難しいんだ。試合では捕手や内野手が捕りやすいように、バウンドさせるのはありだよ」

「なるほどね。中継が入った時とかも、バウンドさせた方が良いの?」

「うーん、中継にはノーバウンドで投げて欲しいけど、ケースバイケースかな。距離感が掴めるまではワンバウンドさせた方が安定すると思うよ」


コントロールを安定させるために、バウンド送球は早めに身に付けさせよう。智賀ちゃんや真凡ちゃんの質問に答えて、もう1球だけノックを受けてバックホームをすると、今度も春谷さんはキッチリ捕球する。


……あの速さのワンバウンドの送球を軽々しく捕るなら、かなりの経験者のはずなのだけど、何でマネージャー志望なのだろう?何か、プレーできない事情でもあるのかな。


その後は智賀ちゃんと真凡ちゃんが交互にバックホームの練習をしていき、交互に指導をする。元々野球好きなのか、呑み込みは早い方だ。センスはある方だろう。智賀ちゃんはもうちょっと、目測というか距離感を把握させていく必要があるけど、脱初心者の日は近い。


ずっとノックをさせて申し訳無かったので、最後は私が梅村さんのために特大のキャッチャーフライを連続で打ち続ける。私の時だけ守備範囲ギリギリに打つ実力があることは確認済みなので、スピンも意図的にかけている。


しかし、梅村さんは全ての打球をきっちりとキャッチした。この守備力と肩力、キャッチング能力だけでも、有名なチームでレギュラーになれそうだな。


「ところで、春谷さんは経験者なのにマネージャーで良いの?」

「私はもう良いんですよ。カノンさんの野球人生に役立つことが出来れば、それだけで良いんです」

「経験者なの!?何でプレーしないのよ」

「真凡ちゃん、落ち着いて。人それぞれ事情はあるから、無闇に突っ込むのは良くないよ」


気になったから、春谷さんに自分のプレーはもう良いのか聞いてみると、私の役に立ちたいという一点張り。少し薄気味悪いものも感じるのだけど、本人がプレーをしたくないのなら、強制する力は私に無い。


……どこかで見た顔だと思ったけど、春谷という名前には記憶が無い。もしかしたら、対戦経験とかあるのかもしれない。だけど、私だって全試合の対戦相手の顔と名前を憶えているわけじゃないから、はっきりとは言えないかな。


真凡ちゃんが春谷さんに突っかかっていたので、宥めておく。この子、小さいのに血気盛んだから問題行動を起こさないか不安だ。


内野は内野の方でボロボロになるまで守備練習をしたみたいなので、今日はこれで解散だ。だけど、明日からの練習ではピッチングマシンを使った打撃練習と、ピッチャーが投げる球での打撃練習。守備練習に加えて、走り込みも行なっていくと宣言された。


……まあ、妥当な練習量と言うか、少ないようにも感じるな。朝練は来週から始めるみたいで、初心者組にはきつそうだ。投手志望の西野さんは結局、ファーストの守備に関しては脱初心者レベルなので色々と考え直そう。


10人の野球部には、現在顧問の先生すらいない。キャプテンによると、引き継ぎに時間がかかっているとのこと。伯母が連れて来たっぽいから、凄く不安。あまり変な人を連れて来てくれるなよ、とは言っているけど、フラグになってそうだ。

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