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第303話 40人

湘東学園は1軍と2軍と3軍に分けているけど、1年生が大量に入った今、最も多いのは3軍だね。1軍枠と2軍枠が合計で40人で、県大会では20人のままだけど、甲子園になると枠が18人になる。この時、2軍は一時的に22人になる。


春の神奈川県大会で、3回戦の相手は厚木工業高校。ここ3年、夏は初戦を突破したことがなかった高校だけど、今年の春は地区予選を勝ち抜け、2回戦までを神憑り的なくじ運で勝利してきている。部員数は23人と、かなり少ない方だね。


「ひじりんと優紀ちゃんと智賀ちゃんが抜けるし、どうせなら2年生だけでスタメン組もうか」

「……私はあまり良い気分じゃないけどね。他校の3年生も、試合には出ているしその分差が詰まるよ」

「いざという時のキャッチャーの、公式戦の経験が少ないのは問題なんだよね。1軍より2軍にいる方が練習試合に出られる分、お得だとすら言われているんだよ」


詩野ちゃんはわりと真っ向から反対意見をぶつけて来るけど、1軍の控えより2軍のスタメンの方が経験値を積める状況なのは結構な問題にもなってる。それに夏の県大会、甲子園と合わせると試合数はかなりの数になるし、休める日は作りたい。


選抜で詩野ちゃんが怪我で出られなくなった時の、坂上さんの不安そうな顔は忘れることが出来なさそうだ。格下相手の県大会で、経験値が積めるかは微妙だけど。



湘東学園 スターティングメンバー


1番 右翼手 高谷俊江

2番 左翼手 中谷雅子

3番 中堅手 勝本光月

4番 一塁手 牛山恵美

5番 遊撃手 井原美琴

6番 三塁手 熊川茉莉

7番 二塁手 関口賢美

8番 捕手  坂上清香

9番 投手  島谷浩美



土曜日になって、春の神奈川県大会の初戦を迎える。3回戦のスタメンで、春の選抜決勝のスタメンだったのは高谷さんと光月ちゃんだけだね。選抜甲子園に出場したことがあるのは中谷さんと坂上さん、島谷さんと熊川さんで、牛山さんも代打での出場はしている。唯一試合に出られなかったのは、便利屋の関口さんだけかな。


……関口さん、内野ならどこでも守れる器用さがあるし、バッティングも悪くないんだけど、突出した欠点がなければ長所もない。ただベンチにいると安心感はある。私がマウンドに登ると熊川さんがサードの守備に就くんだけど、そのタイミングで熊川さんが怪我をしても、関口さんという保険があるのは大きい。


投手の駒数を多くしているから、内野どこでも一定以上の守備力というのは湘東学園だと強みか。ただショートの井原さんと並んで1軍当落線上にいるから、そろそろバッティングの方でも結果は出して欲しい。


ショートのスタメン1番手の水江さんは、1年生の北条さんと競争することになるだろうけど、ショートのスタメンを奪われても代打で使いたいぐらいにはバッティングが良いから夏の大会もベンチ入りは確定かな。最悪サードでも悪い守備はしないしね。優紀ちゃんの代打で出して、そのまま私と交代することも出来る。


1番から3番の外野陣は、そこらの甲子園強豪校と比べても遜色がないどころか上回っている。あと1年あるし、更なる成長には期待したい。


「こうしてベンチスタートすると、U-18W杯の時のことを思い出すわね」

「真凡ちゃんがベンチスタートだったの、数戦だけだったでしょ。

それにしても、優紀ちゃんと智賀ちゃんとひじりんが居ないとベンチが寂しいね」

「優紀が居ないと応援の声が小さく感じるし……そもそもベンチにいる人数が少ないから声が小さいのよ」

「それもそうか。あ、北条さんはこの回で10点差ついたら裏の守備から出すね」

「わかりました」


初回、1回表の湘東学園の攻撃は高谷さん、なかやんが連続ツーベースヒットで先制した後、光月ちゃんがヒットで2点目。牛山さんがライトフライで倒れた後は、四球とヒットでさらに2点を稼いで4点で終了。


2回表で2巡目のなかやんと牛山さんがホームランを打ち、10点を取ったので裏の守備から井原さんと交代。井原さんは結局、四球とセカンドゴロだけだったけど、その後の北条さんはヒットとツーベースヒットで見せ場を作っていた。なんかもう、ポテンシャルの違いを感じる。


4回戦ではショートに水江さんを使うつもりだけど、これはプレッシャーになってそうかな。投手の方は島谷さんが5回を完封したので、何事もなくコールド勝ち。一応、準備をしていた宮守さんは不満顔。でも島谷さんも50球に達していないから消化不足みたいな顔してる。


「今日は出番がなかったけど、明日の試合ではスタメンマスクを被って貰うからね。宮守さんと尾崎さんのリード、しっかり頼むよ」

「はい!」


春の神奈川県大会の3回戦に19対0で勝利し、明日の4回戦では鎌倉学院と当たる。背番号20番を付けた塩野谷さんにスタメンマスクを任せるつもりで、この子は詩野ちゃんとプレイスタイルは似ていると思う。性格とか、詩野ちゃんとは正反対なんだけど何処か雰囲気が似ているかな。


宮守さんの縦スラを初見で捕れる時点でキャッチング能力に不安はないし、何なら番匠さんのあの荒れ球を初球から難なく捕球している時点で、初見では弾いてしまった坂上さんや原田さんのキャッチング能力を上回っているということになる。キャッチャーとして、一番重要な能力は持っているということだね。


……まあ詩野ちゃんは、番匠さんの荒れ球を余裕で捕るんだけど。塩野谷さんはそこまでバッティングセンスが良くないから、その点で坂上さんや原田さんは塩野谷さんを上回っていることになる。でも私としては、捕手には守備力を求めたい。


試合が終わった後、応援団の方に挨拶に行くと40人の枠には入れなかった2年生や1年生達が見える。そしてその中に、園城寺さんと番匠さんはいなかった。

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