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第262話 事故

秋季神奈川県大会の決勝が始まり、お互いの選手は整列を行なう。そして湘東学園側には約一名、右腕を吊るしている人物が居た。……不機嫌そうな顔をしている、島谷さんだ。


秋季神奈川県大会の準決勝と決勝は土日で行なわれるんだけど、土曜日の夜、寮の大浴場で事件が起きた。夏頃から1軍2軍3軍の順番で入浴する時間を分けていて、最初の頃は大浴場ではしゃいでいた面々も、それが日常になるとそこまで騒いだりしないのだけど、昨日は関東大会行きが決まったからか浮かれている子も多かった。


……だからと言って、島谷さんは騒いだりしている最中に怪我をした訳じゃない。むしろ聖ちゃんや優紀ちゃんが騒ぐ中、いつも通りお風呂に入っていた島谷さんは、特に何も無いところで滑ってこけた。


不幸中の幸いなのは、背中側から地面に倒れ込んだにしては軽症だったということか。咄嗟に左腕を庇ったのは流石だけど、右肘で地面を打ってしまい、島谷さんの絶叫が大浴場に響き渡った。すぐに2軍監督で寮監でもある萩原監督が車で病院まで連れて行ってくれたけど、結果は骨にヒビが入ったとのこと。


当然、秋の県大会で投げるのはもう無理だし、関東大会でも投げるのは駄目という指示が出ている。島谷さんは当分の間、安静にしないといけなくなった。たぶん関東大会では、島谷さんではなくて浜川さんか及川さんをベンチに入れると思う。


ようやく強豪校にも通用する頃になっての怪我は戦力的にも痛いし、本人にとってもタイムロスではあるけど、怪我はもう仕方ないし治療に専念するしかない。野球と関係の無い重い怪我というのは島谷さんで2件目で、1件目は当時2軍だった子が自転車で転倒して骨を折っている。


一方で怪我の確率が高い飛び込みやヘッドスライディングを多用する水江さんは無事だから、身体の頑丈さも才能の1つに含まれるね。前世では1年生の時に期待のエースだった子が、怪我に四六時中付き纏われた結果、卒業までほとんど成長出来なかった子もいた。


湘東学園では野球での怪我を極力減らす努力をしているけど、それでも練習中に傷を負う子は時々いるし、こういう事故で怪我になる子もいる。……島谷さんが復帰する舞台は、選抜甲子園かな。


今日の先発は、予定通り優紀ちゃん。現在の湘東学園2年生組の中で、プロのスカウトからの評価は1番下かもしれないけど、そろそろ注目されても良い頃合いだと思う。



湘東学園 スターティングメンバー


1番 二塁手 木南聖

2番 遊撃手 水江麻樹

3番 左翼手 伊藤真凡

4番 三塁手 実松奏音

5番 一塁手 江渕智賀

6番 中堅手 勝本光月

7番 右翼手 中谷雅子

8番 捕手  梅村詩野

9番 投手  西野優紀



決勝の相手の統光学園は左のエースに新開さんという左バッターにとっては打ち辛いピッチャーがいるので、左打ちの高谷さんより右打ちでパワーのあるなかやんを採用。と言っても向こうの先発が友理さんだし、その友理さんを打ち崩せるかはかなり微妙。


試合は友理さんとのジャンケンに勝ったので、湘東学園が後攻を選択。1回表の統光学園の攻撃は、1年生の門川(かどかわ)さんから。確かガールズで盗塁成功率98%とかアホみたいな記録を樹立させた選手で、かなり足が速いはず。


初回の優紀ちゃんの立ち上がりは、速球が122キロ。決してこれ、遅いわけじゃ無いんだよね。2年生の秋で122キロは標準的な球速で、高校3年生になっても125キロを投げられない人も多い。


球速の才能がある人はある程度の努力で130キロに到達するけど、その上は才能も努力も積み重ねた人しか投げられない。一方で変化球は、努力による部分も多い。……優紀ちゃんはカウント2-2と追い込んでから、落差のあるシンカーで門川さんを空振り三振に打ち取る。


2番バッターもピッチャーゴロに打ち取り、3番は昨年の秋からレギュラーで出場している池田さん。今年の夏の甲子園でも打っていたし、統光学園の野手の中では知名度の高いバッターだと思う。


……統光学園は、友理さんの世代を中心に育てられている。それで今年の夏の甲子園ベスト4だったから、本当に強いチームだ。来年の夏、甲子園のための1番の障害にもなるはず。


池田さんは優紀ちゃんのカーブを捉えて、なかやんの頭を超えるツーベースヒットを打つ。去年より格段にスイングが速くなっているし、私との対戦で何球も粘った挙句に合わせただけのバッティングをしてしまった池田さんはもういないね。


ピンチになって4番の友理さんが打席に立つ。1つ上の広沢さんがいた時は5番だったけど、秋からは友理さんが先発する時は友理さんが4番になっている。


たぶん統光学園のレギュラー陣の中での打率は下の方だと思うけど、パワーはあるし、勝負強い。そんな友里さんは初球、優紀ちゃんの未完成なナックルに空振り。ビデオとかで見ていたとは思うけど、実戦で見るのは初めてだろうし面食らっている。


……やっぱり外野より、内野にいる時の方がバッターの様子は観察しやすいね。2球目のスライダーに友理さんはバットを合わせるも、ファールになってカウントは0-2。ここで詩野ちゃんが1球外すかと思ったら、3球で決めに行った。そのストレートもファールになって、カウントは変わらず。


4球目のシンカーを友理さんは打ち、レフト前へのヒット。真凡ちゃんがバックホームするも、池田さんの足が速くて統光学園が先制点を獲得。試合は1対0となり、1回裏の湘東学園の攻撃に移る。

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