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第237話 捕手の力

森友さんも篠宮先輩も、貴重な長打力のある捕手だ。でもキャッチャーとして、藤波さんにとっては3年親しんだ森友さんと篠宮先輩では投げやすさが違うと思う。


……怪我をした理由は推測にしかならないけど、疲労の蓄積だね。甲子園からアジア予選、本戦予選と、森友さんがスタメンマスクをかぶることが多かった。キャッチャーは、ピッチャーに次いで怪我の多いポジションになる。


だとすれば、コーチ陣の中で責任を取らされる人が出てくるかもしれない。この怪我の影響は、かなり大きくなるかもしれないね。


昨日の試合も、序盤中盤は森友さんが1番しんどい立ち位置だったはず。……野球は怪我の多いスポーツだけど、その中でもハムストリング損傷が1番多い。投手の場合は投球時に負荷がかかるし、野手は走塁時や守備時に負荷がかかる。蓄積されれば、意識して無くても軽くダッシュした時に襲って来る。むしろ、意識していない時の方が危ない。


森友さんのことは心配だけど、試合はそれでも進む。1回の攻防が終わって、0対5と日本が大きくリードしている状態での途中離脱は不幸中の幸いになるのかな。


しかし2回表にスイスの4番に長打を打たれると、続く5番バッターにも打たれてあっさりとノーアウトランナー1塁3塁のピンチを迎える。篠宮先輩はいつでも試合に出られる準備はしていただろうけど、それでも急な交代だと気持ちが試合に入らないことはあるし、何より藤波さんの状態が1回とは違って良くない。


確か、2人は1年生の頃から大阪桐正でバッテリーを組んでいたんだっけ。仲の良い選手の怪我ほど動揺はするものだし、少なからず試合への集中に影響が出るはず。


それでも藤波さんは続くバッターをセカンドゴロに打ち取り、1塁ランナーを2塁でフォースアウトにする。3塁ランナーはホームに還り、これで1対5。ワンナウトランナー1塁になった後、フォアボールを出してワンナウトランナー1塁2塁となるも、後続のバッターを連続三振で乗り切る。


その裏、日本代表の攻撃は先程の1回表のスイスのように三者凡退となった。追い込まれてから難しい球を何とか打ち返して、サードゴロになった真凡ちゃんは、ちょっと落ち込んだ様子でベンチに戻って来る。


「……1回裏とは、まるで別人ね」

「速球の速さ自体は、そんなに変わってないよ。相変わらずコントロールは荒れているけど、枠ギリギリに来るようになったね」

「それで時折データに無かったスローカーブも投げて来るのは、正直打ち辛いわよ」

「チェンジアップとストレートだけだと思っていたら、あれは打てないね」


三者凡退の理由はスイスのエースが、2回からデータには無かったスローカーブを投げて来たからだね。今まで投げて無かった理由がよく分からないけど、たぶん初回の荒れ具合を見てストレートよりさらにコントロールが悪い、デッドボールになりやすいスローカーブを投げにくかったのだと思う。


そのスローカーブが時折良い感じで枠内に来るから、打ち辛さは増した。しかし何回ワンバウンドしたのと思うぐらいには球数も嵩んでいるから、6回ぐらいには100球に到達するはず。


……要するにそれまで、追加点は難しそうだということだね。


3回表のスイスの攻撃は2巡目に入った上位打線から始まり、藤波さんは1点を失うものの、それ以上の失点は許さなかった。3回表が終わって、2対5と3点差に詰め寄られる。


その裏の攻撃は私からの打順だけど、左中間に飛ばして長打にするつもりがレフトの守備が良すぎて長打にならず単打になる。ワンナウトランナー2塁の形にはなったものの、追加点は無かった。


4回以降は互いに点が入らず、5回裏が終わって、別球場の情報も入って来る。ここでみんなの目が釘付けになったのは、ドミニカ対イングランドの試合だった。


「ドミニカが、イングランド相手に6対1で負けてる!?」

「……ドミニカは、(打線の調子の)波が(激しい)な。今(の得失点差)いくつや」

「日本が+6、イングランドは+1、ドミニカは+4です。今日の試合にこのまま勝った場合、スイスは予選敗退が確定するので、3試合目のイングランド戦で大敗する可能性は高いです」


誰かがドミニカの劣勢を見て叫ぶと、岡沢監督が色々と省略した言語で喋る。その圧縮言語に、即座に対応出来たコーチは凄いと思うよ。


ドミニカ対イングランドは6回表を迎えていて、6対1。まだまだ試合がどうなるのかは分からないけど、恐らくイングランドは投手陣をフル活用してドミニカの得点を削ぐはず。日本はもう少しスイス戦で得点を重ねないと、ドミニカに負けたら予選で敗退する可能性が高まる。


と言っても、そう簡単に点が取れたら苦労はしない。5回までで相手のエースは89球を投げているから恐らく6回までだろうけど、そのギリギリまでエースで粘って来た。そしてスイスのスタンバイしている投手陣を見るに、推測だけど細かく継投をしてくるはず。


……あと、2点は欲しいね。そして相手に得点をこれ以上与えたくないことを考えると、篠宮先輩には頑張って欲しい。

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