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TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第225.5話 修正

合宿は7日目を迎え、今までよりハードな練習となり、ベストを着てノックを受ける部員達は疲労が溜まって思うように動けなくなってくる。そんな中、何らかの形で答えを見つけた部員は気を吐いて練習を続ける。


外野組の1軍である高谷と中谷は、早くからイメージという答えを見つけた。ベストを着た状態でも上手く守れるよう、上手く打てるように身体の動きをイメージして、それを辿る。一方で答えに辿り着くのが遅かった上田と下田は、まだイメージとの差異に苦しんでいた。


朝早くから続けられた練習は、夕食前になると打ち切られた。風呂に入り、大部屋に敷かれた布団の海に1人、また1人と倒れ込んだ部員達は、糸留に呼ばれて合宿所の食堂へと移動する。


「まずは1週間、お疲れ様だ。合宿後半のスケジュールを配りたいが、その前にテレビを付けるか」


合宿所の天井には、少し古めのテレビが吊り下げられており、糸留はリモコンを操作して目的の放送へ変える。即座に部員達は意図を察して、テレビの方へ視線を向けると、その中には奏音が立っていた。


U-18W杯アジア二次予選の5試合目、日本対タイの試合だ。ナイターで行われるこの試合は、地上波で見ることが出来る。6回表、ワンナウトランナー2塁で迎えた奏音の第4打席。その日の奏音の成績を見て、解説者は奏音がサイクルヒットにリーチしている状況だと告げた。


「……相変わらず頭のおかしい成績だが、カノンが行なっていること自体は特殊なものでは無い。カノンが持つ最大の武器は、イメージ力だ」


そしてそんなカノンを見て、糸留はこの合宿の意図を話し始める。実は奏音と糸留は合宿前に一度、電話で話しており、その時に野球観が一致していたことで2人は驚いていた。


奏音は幼い頃から野球を始めている。3歳にして前世の記憶が蘇った後、奏音はバットを振り回してすぐに気付いた。野球の才能自体は、前世の時と大して変わって無いことに。男性から女性になったことで、また違った視点が生まれたりするかもしれないと奏音は考えたりしたが、そんなことは無かった。


そのため、奏音は前世の時から大事にしているイメージ力を鍛えることにした。と言っても、複雑なことはしていない。近所にあったバッティングセンターで、まだ打ち返す力も無いのに速い球を打席で見る。遠方でも、高速の変化球が投げられるマシンのある所なら何度でも見に行った。


イメージ力を鍛えるために、奏音は経験を積むという手段を選んだ。前世の経験も合わさり、素振りでもイメージしたボールがそこにあるかのように見えていた。ゴールデンエイジにひたすら経験を積んだ結果、質の高い素振りを繰り返した結果、彼女は一度見た球ならほぼ確実に芯で捉えられるようになる。


「いつの話かは知らないが、奏音はどん底に陥った時、イメージ力を鍛えるという答えで不調を脱したらしい。私も似たような経験があり、今の私が存在するため、このような合宿スケジュールにさせて貰った。合宿後半では、そのイメージ力を鍛える練習を中心に行なう」


糸留の話の途中で奏音がホームランを打ち、実況が前の打席のリベンジを果たしたと言ったことで、奏音が前の打席からイメージの修正というものを行ない、成功したということを糸留は告げる。それでもイメージという答えに納得が出来ない部員に、糸留はある証拠を見せた。


「この湘東学園で、奏音以外に既にイメージ力という答えに辿り着いてひたすら練習して来た人がいる。……今テレビに映っている、伊藤真凡だ。木製バットに注目されがちな彼女だが、木製バットだからこそ答えに辿り着いたのだと私は思っている」


糸留がテレビを指差した先にいる伊藤は、ずっと打球の飛ぶイメージをして来た。バットに当たって、力負けしてもヒットになるコースに落とす。もしくは弾き返す。そのためのバットの角度やボールをイメージしている最中に、彼女のイメージは徐々に身体の動きのイメージにもなっていった。


こうバットを振って、こう当てると、こう飛ぶ。そのイメージを持ってバットを振り続けた結果、彼女はU-18W杯日本代表のメンバーとして選ばれ、スタメンで起用されるまでになった。高校に入るまで初心者だった彼女が、爆発的な成長を見せた理由の1つでもある。


「もちろん、結果的に不調を脱するのであればイメージ力以外でも良い。ルーティンを組む人間、集中力を高める人間、それは人様々だし、別の答えを見つけているなら私は全力でサポートをする。合宿後半の主目的は、不調の時でも力を出し切れるようになることだ」


合宿は後半に入り、イメージ力を鍛える練習も取り入れ始める。最初は短時間でも、極度に集中することでイメージを形にするよう糸留は告げる。そしてそのイメージトレーニングの成果は、徐々に出始めるのだった。

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