第219話 アジア予選
甲子園の準決勝が終わって、正式なU-18W杯日本代表メンバーが発表された。春の合宿で内定を貰っていた人達と、夏の甲子園で活躍した人が合計で26人選ばれている。
広稜の新居さんが怪我で代表を辞退したから、追加招集は7人だね。真凡ちゃんに加えて、統光学園から友理さんと新開さんと広沢さん。銀光大阪から福春さん、習志野から降谷さん、金芦農工から吉岡さんが選ばれた。この内、友理さんと福春さんと降谷さんと吉岡さんの4人が投手だね。
アジア予選は連戦になるし、連投制限や球数制限がある以上、投手の頭数は多い方が良い。これでU-18W杯日本代表メンバーは確定し、投手は私含めて10人になった。
「えっと、アジア予選は6試合連続の後、1日の休みを挟んで5日連続?」
「そうだね。2次予選は日本がBブロックに入っていて、12ヵ国による総当たり戦だから11試合ある。アジア予選は2段階あって、既に1次予選を勝ち抜いた国々が2次予選に進んでるよ」
U-18W杯のアジア予選は特殊で、ランキングの上位6ヵ国がシード扱いになっているから日本はシードの恩恵を受けている。その上位6ヵ国を3:3に分けて、1次予選を勝ち上がった18ヵ国が9ヵ国ずつそれぞれのブロックに入る。
……日本は毎年、アジア予選は余裕で通過しているし、今年は高校生離れしているどころかプロ顔負けの選手が何人もいるから、予選で躓くことは無いと思いたい。
ちなみに1次予選は36ヶ国を4ヵ国ずつのブロックに振り分けて、上位2ヵ国が2次予選に進出するという扱いになる。1次予選は50%が通過できるのに、2次予選は16.7%だから普通の国からすると狭き門だね。
ただアジアから本戦に行けるのは4ヵ国という枠がある以上、どこかで絞る必要は出て来る。現段階でそれは、2次予選ということだね。シード6ヵ国の内、日本と同じブロックにいるシード国はタイとマレーシアだから全勝も狙えるかな。
他の地域はヨーロッパが13ヵ国、南米が5ヵ国、アフリカが4ヵ国、北米が4ヵ国。前回大会優勝枠と開催国の枠が1つずつでちょうど32ヵ国だ。
今回は本戦をオーストラリアで行なうので、オーストラリアは確定枠になっている。今年の南米のU-18はコロンビアやベネズエラがかなり強いそうなので、オーストラリアは命拾いした感じかな。いつもオーストラリアは南米予選で、本戦出場の当確ライン上を反復横跳びしている印象がある。
まあ、U-18W杯は1ヵ月ぐらいで終わってしまうお祭りみたいな感覚だ。本戦は楽しみだけど、まずは予選からだね。
「今回のアジア予選は日本で行なうし、感覚的には楽だと思う。日本代表の当面の課題は木製バットへの適応だし、真凡ちゃんは期待されてるはずだよ」
「そうね、そこが選出理由にもなっていたし、代打でも出場機会があれば良いわね」
「いや、ほぼ確実に、スタメンで出る試合はあるんじゃないかな?過密日程だから、野手の方もローテーションする可能性は高いよ。去年はわりと、入れ替わりが激しかったはずだし」
去年はアジア予選を勝ち抜いた後、本戦の予選を勝ち抜いて本戦トーナメントまで行って、準決勝でキューバに負け、3位決定戦でもカナダに負けて4位。今年は面子が揃っていると言われているし、U-18W杯では日本はまだ優勝をしていないから必死になっている人達もいる。
「友理さんも選ばれているから、投手陣の厚さは相当なものだね。……大阪桐正相手に、5回を投げて被安打3は立派だよ」
「それでも結局、統光学園は大阪桐正相手に4対0で負けたわよ。それにしても、決勝まで金芦農工が勝ち進んだのは意外だったわ」
「決勝戦が大阪桐正対金芦農工ってのは、面白いよね。全国各地から人を集めた大阪の大阪桐正と、地元の人しかいない秋田の金芦農工は真逆のスタイルだし」
「……漫画とかだと、勢いのある金芦農工が勝ちそうなものだけど」
「……野球に100%は無いけど、9割9分大阪桐正が勝つだろうね」
甲子園では、決勝戦の大阪桐正対金芦農工の試合が明日の昼から行なわれる。野球はどんなに弱いチームでも3割勝つという言葉があるけど、それはプロレベルの話で、残念ながら力量差がはっきりしている高校同士の対決だと逆転劇はそう簡単に起きない。
金芦農工が勝ち進んだのも、組み合わせの妙だ。もしも準々決勝以降、大阪桐正の山の4校の内、1校でも金芦農工の山に入っていたなら決勝戦はその高校対大阪桐正になっていたはず。運も実力の内と言うし、くじ運も実力の内だと思うけどね。
メディアでは金芦農工による下剋上を望んでいる雰囲気を醸し出しているけど、金芦農工のエース吉岡さんは今まで1人で投げ抜いて来ている一方で、大阪桐正は準決勝で藤波さんを出場させずに休ませている。個人的にはU-18日本代表にも選ばれた吉岡さんに、怪我が無いよう祈るだけかな。




