第214話 追加の1日
甲子園で負けた日の翌日。この日まで甲子園の滞在費が出るし、ホテルの方も格安で泊まって良いことにはなっている。新聞やニュースでの、私達の持ち上げられ方が凄いね。
『今世紀で一番暑い日に、今世紀一熱い試合!!湘東学園対大阪桐正』
『多久大光陵の芳田、延長の末に泣く。神奈川の統光学園が8強へ』
『大阪から出た2校がベスト8へ!選抜の再現なるか?』
でも、ドラマがあったのは私達だけじゃない。昨日の試合は、全ての試合が延長戦に突入して、第4試合の試合終了時刻が19時を過ぎていた。芳田さんのいる多久大光陵や、上松さんのいる三島東も負け、統光学園や銀光大阪が勝ち上がった。
今日は西東京の日大産と南京都の龍安大平刻の試合や、東兵庫の宝徳学園と西愛知の愛光大名伝の試合が注目されているけど、昨日の今日で観戦する気力のある面子は居ないね。1日経って気持ちの整理も落ち着いた子も多いことを確認して新幹線に乗り込み、甲子園を後にする。
奈織先輩と美織先輩は、関西の大学のセレクションを受けるからこのまま残るとのこと。矢城コーチも残っているので問題は起きないと思うけど、奈織先輩は試合終了後に1番泣いて自分を責めていたから心配ではある。
「甲子園でのスタメンは、あのオーダーが間違いなく総合力の1番高い状態でしたよ。だからセカンドが聖ちゃんだったらとか、無意味な仮定は止めた方が良いです」
「……でも、聖だったら7回裏のあの打球は捕れていたよね?」
「捕れていましたけど、聖ちゃんがサードを守らなかった時の方が悲惨なことになっていたので結果はもっと悪かったですよ」
……あの打球、もしも奈織先輩の守備力が向上していなかったら掠ることもなくライト前まで転がっていた。打球の勢いが少しでも落ちて無かったら、ホームはアウトになっていたかもしれない。流石にそのことまで、言わないけどね。
一方で本城さんは、プロへの志望届を出すみたい。既にU-18W杯の日本代表に内定しているし、これからも一緒に練習することになる。
プロの球団のスカウトからは、既に声がかかっているしね。甲子園も1回戦と2回戦はよく打っていたし、大阪桐正との試合もヒットは打っている。千葉オリオンズが4位か5位で指名すると言ってて、横浜ベイスタアズが上位指名も検討中と言っていた気がするから、少なくとも5巡目までには指名されるかな。
このまま行けば、本城さんは湘東学園で初のプロ野球選手だ。少しでもドラフト順位を上げるために、U-18での活躍にも期待だね。
「地味に、秋大がヤバい?」
「……秋大?真凡がU-18に選ばれたらレギュラーから5人が抜けることになるけど……何とかなるとは思う」
「私がサード、智賀ちゃんがファーストに行くから、センターは光月ちゃんで確定するとして……やっぱり、ショートが問題になる。私は代表に呼ばれるから、真凡ちゃんも呼ばれたら抜ける穴はサードとショートとライトとレフトだね」
「サードは井原、ショートは熊川になるかな?……2軍の練習試合の成績も見て、とりあえずはキャプテン代理として決めて行くよ」
詩野ちゃんは、メンタルも持ち直したみたいで秋大についてのことを話すことも出来た。秋の大会は、甲子園出場校ということで地区予選が免除され、県大会からになる。その県大会も、U-18W杯で日本が勝ち進めば4回戦ぐらいまで私は出られない。
だから1年生や2年生は選ばれにくいのだけど、私はともかく真凡ちゃんまで選ばれそうなので湘東学園の戦力は格段に下がる。外野の穴を埋める光月ちゃんや高谷さん、なかやんには期待するしかないね。
内野の方は、ファーストの智賀ちゃんとセカンドが聖ちゃんがほぼ確定だけどショートが難しい。サードも私が居ない間は1年生に任せることになるし、今の2軍から好調な内野手を何人か1軍に上げると思う。
「地区予選までの間は、練習試合も幾つか組めそうだし色々な形で試していきたいね」
「カノンが代表に合流するのって、いつ?」
「U-18のメンバーが確定するのは甲子園準決勝と決勝の中日で、決勝が終わったらすぐ合流だから……1週間も経たない内に、また大阪まで行かないといけない」
「ということは、新体制での練習試合はカノン抜きの方が良いね。見た感じ、2軍の水江さんが良い感じだしサードで試すよ」
2軍の練習試合のデータを見ていると、そこそこ強い高校に勝ったりもしているから期待は出来る。1番の大金星は、履陰社に打ち勝ったことかな。外野手の枠で上田さんと下田さんは、1軍に上げても良い打撃成績だし、内野手の方も水江さんや井原さんが活躍している。牛山さんは、やっぱり代打枠で1軍に上げたいね。
投手の方も浜川さんと及川さんの両先発が頑張っているから1軍でも試したい。甲子園が終わって、秋の県大会になるとベンチ入りの人数が18人から20人に戻るけど、誰を上げようか本当に迷う。
まあ、しばらくは現副キャプテンの詩野ちゃんがキャプテン代理をしてくれるし、御影監督とも相談して決めて行ってくれるだろうから、私は私のことを頑張ろうかな。




