第19話 バッティングセンター
武蔵野第一高校との試合が終わり、いつものように智賀ちゃんと真凡ちゃんの3人で素振りを500回行なった後、真凡ちゃんオススメのバッティングセンターに寄って汗を流すことにした。そう言えば、バッティングセンターにはよく行ってたと、言っていたような気がする。
真凡ちゃんオススメのバッティングセンターは、どこにでもあるような、こじんまりとしたバッティングセンターだ。真ん中の奥、中央上部にあるホームラン、と書かれた小さな的に当てると、3回600円分、25×3球分のメダルを貰えると言われたので、狙って当てることにする。
球速は、最速で130キロか。一番打ちやすそうだし、130キロで良いかな。ホームランパネルも狙いやすそうだし。
『ホームラン! おめでとうございます! 賞品が御座いますので、カウンターにてお受け取り下さい』
『ホームラン! おめでとうございます! 賞品が御座いますので、カウンターにてお受け取り下さい』
『ホームラン! おめでとうございます! 賞品が御座いますので、カウンターにてお受け取り下さい』
『ホームラン! おめでとうございます! 賞品が御座いますので、カウンターにてお受け取り下さい』
残念ながら1回分で4球しか的に当たらなかったので、カウンターに寄ってバッティングマシンを起動させるメダルを12枚受け取った。そのメダルを智賀ちゃんと真凡ちゃんに4枚ずつ渡して、店主にはサインを渡した。
……流石に店主が可哀想だったから仕方ない。サインでも書きましょうか、というと喜んで色紙を持って来てくれたので、たぶん私の事は知っていたのだろう。
『ホームラン! おめでとうございます! 賞品が御座いますので、カウンターにてお受け取り下さい』
「またホームラン打ってる……。
もしも全部のホームランでメダルを受け取っていたら、メダルが無くなっていたんじゃない?」
「受け取らないから問題無いよ。単に、今年のホームランランキングって張り出しに名前を乗せておきたいだけだし。
13本が1位の記録だから、30本ぐらい打っておけば安泰かなって」
『ホームラン! おめでとうございます! 賞品が御座いますので、カウンターにてお受け取り下さい』
「……これで、28本目。もう一回やれば、30本は超えていたわね」
全員で100球ほど速い球を打ち込み、真凡ちゃんのマメが潰れた所で解散にした。私は小3の頃からマメすらできないので、マメを潰した時の痛みは忘れてしまったが、結構痛そうだった。
「いったぁ……。やっぱり、安いグローブはダメね」
「バッティンググローブは安い高いじゃなくて、自分に合ったものを買わないと駄目だよ。
お店に行って、ぴったり合うものを買うのがベストかな」
素振りもよくしているし、マメができるのは仕方がない。見れば智賀ちゃんも結構な数のマメを潰していた。2人とも痛みは我慢できるようだけど、ちゃんと手当をするように言っておこう。
真凡ちゃんはパワーを伸ばすため、引き続き握力のトレーニングと、手首のトレーニングを続けさせている。今まではハンドグリップを握らせて、2㎏の重りを腕を使って上げ下げさせていたが、手首だけ曲げる動きに変更した。個人的に、打球のノビはリストの強さによって変わる気がする。あくまで主観だけど。
手首は意識して鍛えないと全然鍛えられないし、効果は感じにくいし、下手したら故障の元にもなりかねないので、慎重に鍛える。これで真凡ちゃんの飛距離が少しでも伸びてくれれば大万歳だけど、効果はあるかな?完全に自己流の鍛え方なので、結構不安だ。
「カノンは握力、どのぐらいあるの?」
「うーん、70㎏ぐらい?それ以上に、リストの強化は念頭に置いてやってるけど」
「えっ……」
「70㎏ですか!?私は50㎏なので、まだまだです」
「ええ……投手の大野先輩でも40㎏ぐらいなのよ……?」
握力は打撃には関係無いように思えるけど、個人的にかなり重要だと思ってる。よく重い球、と言われる球を打ち損じるのは握力が足りないからであって、握力が強ければ速いストレートにも押し負けないパワーを付けることが出来る……んじゃないかな?。
智賀ちゃんには握力強化はほどほどで良いよー、とは伝えたけど、私の握力を聞いてやる気になった模様。この子は既にホームランを打てるだけのパワーがあるのに、何を目指しているのだろうか。まあ、バットコントロールにも影響はするはずだから、握力を鍛えて損なことは無いだろう。
夏の県予選は、もう1ヵ月後に迫っている。小山先輩や大野先輩と野球が出来るのは、もう短い期間しかない。
……今はまだあまり考えて無いことだけど、3年生が引退したら久美ちゃんを含めて8人しかいない。このことについて2年生の鳥本姉妹に相談をしたことがあって、1人は確保していると言っていた。去年の秋頃に転校してきた子で、今はまだリハビリ生活中のようだ。
「来週は、千葉の県立習志野高校ね。……どこかで、聞いたことがある高校ね?」
「真凡ちゃん、そこ、春の甲子園で準優勝したところだけど、本当に合ってる?」
「合ってるわよ。
……え?来週に、そんなところと戦うの!?」
久美ちゃんから全体に向けたメッセージが入ったようで、真凡ちゃんが確認すると来週の対戦相手校についてだった。いや、春の甲子園で準優勝の高校と戦えるのは嬉しいけど、何で試合が成立するのか凄く不思議だ。
今のレベルだと、虐殺で済んだら御の字って感じかな。レベルの高いところと戦える現状はこの2人にとって凄く良い経験になるし、将来に活かしていきたい。




