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TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第194話 最終回

6回裏の湘東学園の攻撃は三者凡退に終わって、最終回の7回表を迎える。この回の先頭バッターは、5番の町原さん。2年生の外野手として、相当レベルの高い選手だけど、このバッターさえ無傷で切り抜ければ、勝ちはグッと近づく。しかし、そう簡単には行かない。


初球からアウトローいっぱいのストレートをファールにされ、際どいコースは見逃されてボール。打率が良いバッターは、とにかくボール球に手を出さないんだよね。


カウント1-2から5球目のツーシームもファールにされ、町原さんからは異様に睨まれる。スタミナはまだ余裕があるから大丈夫だと思いたいけど、いつまでも粘らせるわけにはいかないかな。粘られ続けて、最終的にはフォアボールとか最悪だし。


そう思って6球目。ずっと低めに出し入れした後にインハイへ速球を投げたけど、町原さんはバットを合わせて引っ張る。勢いのある打球はサードへ飛び、聖ちゃんの前で跳ねた。


……ここで起きた不幸は2つ。1つは町原さんの打球が3塁ベースに当たって高く跳ねたこと。2つ目は聖ちゃんが低身長で、跳んで打球を捕ろうとして、打球に触ってしまったこと。


もしも聖ちゃんの身長がもう少し高ければ、頭上を越えることも無かった。聖ちゃんの反射神経が普通なら、打球に触れることさえ出来なかった。


聖ちゃんのグラブの先端に当たり、勢いが落ちた打球は三塁線を転がる。レフトの高谷さんが必死にバックアップするけど、足も速い町原さんは2塁でセーフになった。聖ちゃんのグラブに当たらなかったら、2塁まで行けて無かったけど、これは仕方ないとしか言えない。


同点のランナーが2塁へ行き、続く6番バッターは送りバントを選択したから、ワンナウトランナー3塁という状況でバッターは捕手の新島さんを迎える。犠牲フライでもスクイズでも、何でもあり得るような状況だ。ただ町原さんの足を考えると、内野ゴロでも1点だと思う。


このタイミングで詩野ちゃんが、私へ声をかけるためにマウンドに来た。まあこの場面は、誰がキャッチャーでもピッチャーへ発破をかける場面だろうね。


「横浜高校と延長戦とか、考えたくないから抑えてよ?」

「一応、延長戦になっても残り投手が多い分、湘東学園の方が有利ではあるよ?

…………あはは。冗談だよ、冗談。いやでもやっぱり、怖いね」

「……何が?」

「負けるのが、だよ。ギリギリの勝負は楽しいと思いたかったけど、私には無理みたい。やっぱり、怖いものは怖い。私は結局、RPGとかでもレベリングを十分にしてからストーリーを蹂躙するタイプだしね。

……新島さんに対しては、コントロールを無視して力でねじ伏せて良い?」

「フライの飛距離を抑えるにはそれしかないし、バント失敗も狙えるからそれで良いよ。

……この試合は、7回表で終わらせようね」


軽い打ち合わせの後、私はワインドアップで投げる。私が腕を上げたのを見て、即座に3塁ランナーの町原さんは走り、新島さんはバントの構えを出来る辺り判断力は凄いね。この緊張する場面で、たぶん即興のスクイズを敢行したんだと思う。


そして私が全力で投げたボールは、新島さんのバットに当たり、後ろへ飛ぶ。久しぶりの、ワインドアップだ。ボールに力が入る感じがして、個人的にこの感覚は好きな感覚だと思う。


2年生になる前にはもうセットアップが基本だったから、ワインドアップの私なんて珍しいと思うし、新島さんは面食らった顔をしている。観客席からどよめいた声が聞こえるけど、気にせずに2球目を投げると、ど真ん中へ行ってしまった。そのストレートを、新島さんはまたバントで打ち上げる。


後ろへ打ち上がった打球を詩野ちゃんが追いかけるけど、バックネットに当たってファールになった。3球目は真ん中へ行かないよう低めを狙って投げるも、高めに浮いてしまい、それを新島さんは空振る。三球三振で、ツーアウトだ。




奏音が新島を三振に打ち取った後、横浜高校は8番バッターに代打を送る。打撃だけは誰にも負けないと意気込み、練習をして来た彼女は、奏音のストレートに空振った。


バックスクリーンに表示される球速は、140キロ。高校生の史上最速まで、あと僅か1キロに迫る速球に、彼女のバットは当たらない。


それでも彼女は名門の横浜高校で、打撃能力を買われてベンチ入りを果たした選手だ。速度に目が慣れた3球目、真ん中へ来た球を弾き返して外野へ飛ばす。


しかし飛距離は足りず、センターを守る勝本はほとんど定位置から動かずに落下してくるボールを捕球した。2対3で湘東学園は横浜高校を降し、南神奈川代表として甲子園の出場権を勝ち取る。


全日本高校選手権大会南神奈川県予選に出場した高校の数は、99校。南神奈川だけで2000人を超える高校3年生の野球部員が存在し、その中でこの日までに涙を流さなかったのは、僅かに3人だけだった。

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