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TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第137話 集中

4回戦。奏音が率いる湘東学園は3回表終了時点で3対1と勝ち越しており、今から3回裏、湘東学園の攻撃に入る。ノーアウトランナー1塁でバッターは奏音であり、当然のことのように奏音は敬遠をされた。


それを見て、後ろのバッターである5番の江渕はスッとスイッチが入る。選抜の準決勝、奏音の敬遠によって世間から責められた人間は、対戦相手の履陰社の選手や監督だけではない。後続の江渕が打たなかったことを、責めている人間は少なからずいた。


奏音の後ろのバッターが打てないから、奏音は敬遠されたというのは正しい。実際に江渕は奏音の敬遠後に打てず、チャンスを潰している。中には江渕に対して心の無い言葉をかける者もおり、その言葉は1つ1つ、江渕に突き刺さっていた。


奏音は江渕に対して、何度も周囲の言葉を聞くなと言い、愚直に奏音を信じる江渕はその奏音の言葉を頼りにした。そして打席に入る時も、周囲の声をなるべく聞かないようにし始めた。


それからというもの、奏音が江渕の目の前で敬遠された時、江渕は周囲が真っ暗になることがよくあった。観客も審判も、相手の投手すら見えない。それでも江渕は打席に立ち、暗闇の空間から浮かび上がる白球を目で追う。


この状態になると、江渕は思考がクリアになっていることに気付き、それと同時にボールが少し遅く感じられていた。初球を見逃した江渕は、それがストライクなのかボールかも分からない。審判の声が、江渕の耳に届かないからだ。


しかし感覚的に、外のボール球だということは分かる。そもそも、3球以内に打つことが出来ればストライクかボールかが分からなくても問題無い。少し間が空いて2球目、相手捕手のリードの傾向と今までのリードを照らし合わせて、内角の変化球を投げて来ると読んだ江渕は、読み通り内角に来た球を引っ張って打つ。


打った瞬間、真っ暗だった視界は晴れやかなものとなり、江渕は打球を目で追う。江渕の打球は、レフトのスタンドの上段に入り、2試合連続となるホームランになった。


江渕はダイヤモンドを周り、なるべく喜びの感情を表に出そうとした。しかし内心では、次の打席でも奏音が敬遠されないか、ただそのことだけが気がかりだったために、ホームランを打った喜びは半減していた。




4回戦の慶凰大藤沢との試合で、智賀ちゃんが2試合連続となるホームランを打った。前の試合でもそうだけど、集中力がとにかく凄い。智賀ちゃんの打席で初球にダブルスチールを仕掛けても、微動だにしなかったからね。


サインを見ていないことは前の試合から何となく分かっていたけど、これで確定したかな。でもそれを、責める気にはなれない。追い込まれ続けた結果、周囲からの野次や声援を聞かないために、相手投手だけを視界に入れ続けているんだ。かなり高いレベルでの集中だと、私は思う。


「智賀ちゃん、ナイスバッティング。ダブルスチールのサインが出てたこと、気付いてた?」

「え?……ふぇ!?すいません!?」

「あ、いやまあ、元々智賀ちゃんのアシストスイングは期待して無かったから別に良いんだけどね。たぶんこれから、御影監督は智賀ちゃんにはサインを出さないと思う。でもそれは決して、智賀ちゃんへの指示を放棄しているわけじゃなく、集中を邪魔しないためだから安心してね」


私の言葉に固まってしまった智賀ちゃんは、審判に早くベンチへ戻りなさいと言われるまでフリーズしていた。打席に立っている時は格好良かったのに、ベンチへ戻る今は百面相をしていて面白い。きっと3回戦と4回戦で、智賀ちゃんの評価は上がったはず。


もうすぐ、何で智賀ちゃんを5番に置いているんだという言葉も無くなるかな。2年生の今の時期にここまでホームランを量産できるようになるとは思わなかったし、本当に才能の塊だよ。


そして試合の方は、先発の久美ちゃんが5回3失点と相手打線に苦しんだ。相手も地区予選を抜けて4回戦まで勝ち上がっているチームだから、打線の方に良い選手が何人もいる。ヒットが繋がるし、テンポを崩した際に長打も打たれた。


個人的には5回表に先頭バッターへ四球を与えたのが、勿体無かったかな。それから2点を失ったし、僅差なら継投も考えていたと思う。フォームを弄り続けて球速は速くなったけど、細かなコントロールが出来なくなったのは痛い。


6対3で迎えた5回裏の攻撃は、私の打席から。ノーアウトランナー無しという場面で相手投手は、敬遠を選択しなかった。後ろが智賀ちゃんと本城さんだし、とうとう後ろのバッターが怖くて敬遠で逃げることも出来ないという状況になったんだと把握する。


カウント1-1から3球目、甘めに来たストレートを私は容赦なくかっ飛ばす。打球は綺麗な放物線を描き、白球は場外へと消えた。今大会で、私は初めてのホームラン。甲子園での私はちょっと自分でも出来過ぎだったと思っていたけど、まだ好調は維持出来てるね。

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