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異能パンデミック!!  作者: バジ
9/11

3-2 特位能力

中部領 政府館・謁見室


異能官・福田玄治が殺害された翌朝。


玉座に座る中部領の絶対女王兒玉雅の前に、残る中部五官四名が跪いていた。


「それで?福田を含めた研究員のほとんどを殺された上に犯人には逃げられた、ですって?」


顔に掛かったレースの奥から伊藤たちを睨んでいるであろう兒玉からは、計り知れない威圧的なオーラが放たれていた。


「はっ!今回の失態誠に申し訳なく。この伊藤、どのような処罰も、、」


「何を言っているのかしら?伊藤?」


「?」


死罪も覚悟の上だった伊藤にかけられた思いもよらない言葉に四人全員が顔を上げる。


そしてその様子を見た兒玉は意外な言葉を放つ。


「己の身も守れなかった者たちは自業自得。その件に関したお前たちに咎は無いわ」


「っ!!寛大なご処置、痛み入ります」


兒玉の言葉に再び頭を下げる伊藤。


「でもね、黒田」


伊藤に続いて頭を下げようとした三人を見て兒玉がまた口を開く。


「・・・」


「貴方は敵と接触しながら取り逃がした、そうね?」


「お待ちください雅様!それでしたら私も実験個体を送りながら撃破されています!黒田殿だけの責任では、!」


このままでは兒玉は黒田に厳罰をあたえると考えた伊藤が話に割って入る。


「黙りなさい伊藤。私は黒田と話しているのよ?」


「ッ!!、、」


慌てて黒田を庇おうとした伊藤だが、兒玉の圧力によって口を閉じざるを得なくなってしまう。


「どうなの?黒田」


「確かに、私が侵入者を取り逃がしたのは事実です」


「そう。なら、」


黒田からの自白を受けた兒玉が静かに右手を上げようとした時、黒田が話を続ける。


「なにぶん、得位能力を所持した相手でしたので」


「「!」」


()()()()その単語が出た瞬間、兒玉と伊藤が僅かに反応を見せる。


「それは本当なのかしら?」


「詳細は不明ですが、後からやって来た白衣を着た女性、彼女は確かに得位能力としか考えられない力を有していました」


黒田が月城と相対した時、彼女が使ったのは嘗て革命軍の新田から奪った、自在に様々な武装を身に纏うという生成系の上位能力のみだった。


「雅様。黒田殿が仰っていられる白衣を着た女性というのが、福田殿たちを殺害したのと同一人物ならば確かに得位能力の可能性は高いかと」


しかし、黒田は兒玉と謁見する前に伊藤から異能研究施設を襲撃した人物について聞いていた。


そのため、自分が戦った人物が特位能力を持った異能者だと推測することができた。


「「???」」


得位能力という言葉を初めて聞いた、安倍と小泉は状況を飲み込めていないが黒田は確かに、その単語を口にすることでで今を生き抜く活路を手にしていた。


「・・・・」


兒玉が珍しく考える素振りを見せることで、謁見室は静寂に包まれる。


「「「「・・・・・」」」」


数秒にも数時間にも感じられた静寂は兒玉が再び口を開くことによって崩壊する。


「いいでしょう。伊藤、黒田、あなた達は何があっても、その侵入者の身元を割り出しなさい」


「「!!はっ!畏まりました!」」


伊藤と黒田は歓喜の声を抑えながら立ち上がり、兒玉に敬礼の姿勢をとる。


「安倍、小泉、あなた達は軍を出す準備をしておきなさい」


「「か、畏まりました!」」


安倍と小泉もまた、伊藤たちに続いて立ち上がり敬礼の姿勢をとった。


「私に宣戦布告したとこ、必ず後悔させてあげるわ」


伊藤たちに指示を出す兒玉は月城にも負けないほどの邪悪な笑みを浮かべていた。




高山市 闘技場・一般観戦席


伊藤たちが兒玉に召集された日の夜、安倍は一人で工事中の闘技場に足を運び、観戦席から作業員たちの様子を眺めていた。


「こんな所にいたんですか?」


突如、背後から声をかけられ驚き気味に安倍は振り返る。


「なんだ、小泉か」


「なんだは酷いですよ、安倍さん」


そう言いながら小泉は安倍の隣に腰をかける。


「何か用か?」


「いえ、これといって用事は無いんですけど、」


「何だよそれ、、、、なぁ、福田の爺さんってマジで死んじまったんだよな?」


「伊藤さんが確認されたと仰ってましたから、間違いないと思いますけど、どうかしたんですか?」


視線を彷徨わせながら問いかける安倍に小泉は不思議そうに答える。


「そうだよな、兄貴が言ってんだからそうなんだよな、、」


「安倍さん、福田さんとそんなに親しかったですか?」


「いや寧ろ、黒田の次くらいに嫌いだった」


「、、えっと、じゃあどうして?」


さり気なく自分を除く中部五官の半数が嫌いだったことを明かす安倍に動揺を見せつつ、小泉は話を続ける。


「いや、同じ異能者が死んじまったのに何も感じてない自分にちょっとだけ驚いただけだ。陛下に拾われる前じゃあ考えられない、ってな」


兒玉が本格的に中部地方統一に動く前、安倍と小泉は政府側に捕らえられ対異能者用の実験施設に収容されていた。


「確かに私も昔ならもっと、動揺してたかもしれません」


当時、非人道的な実験を繰り返される小泉や安倍たちの心は疲弊していくのと共に、無能者への怒りと実験に耐えられず命を落としていく異能者たちへの悲しみに満ちていた。


「まぁ、こんな施設を造ってりゃあ心変わりもするか」


何かに呆れるように安倍は呟く。


選別戦、軍に有益な可能性のある低位能力を持つ異能者を強制的に戦わせ、勝者は軍に招き、敗者を兒玉が化物を創るための生贄とするための中部領恒例の行事である。


「後悔してますか?陛下に着いてきたこと」


兒玉は中部領設立に伴って、領内の無能者すべての処刑を実行し、安倍と小泉が保護されたのも実験体を使って籠城をしていた施設に伊藤たちが攻め入った際だった。


すべての無能者を処刑した後、兒玉は役に立たない能力と判断した者を領民の目の前で生贄にすることで、同じ異能者に対しても容赦しないという絶対女王の地位を確固たるものにした。


「んなわけないだろ。陛下たちが無能者共をぶっ殺してくれたから俺たちは今こうして生きてられるんだ」


「そう、ですよね。ごめんなさい、変なこと言って」


「・・・(でもよ、)」


小泉の言葉を否定しつつ安倍は心なかで呟く。


「(陛下はきっと俺や小泉が福田の爺さんと同じ目に遭っても昼間と同じことを言う)」


謁見室での兒玉の言葉を思い返す安倍の視線は自然と小泉の方を向く。


「?」


「(小泉だけでも安全に暮らすには、、、、、いや、やっぱ、このまま陛下に着いてくしか無いか)」


安倍は一瞬過った考えを否定するように頭を振ると、再びライトが照らす闘技場広場を眺めるのだった。




関東領 政務庁・長官室


本郷や内藤たちとの合同会議を行なった翌日の早朝、新しい任務に向かう前に月城は三神からの呼び出しに応じていた。


「呼び戻してすまなかったな」


「問題ありません。彼もまだホテルで眠っていますので」


昨日の会議で真壁を驚かせた丁寧口調で話す月城に対して三神は特に反応せずに要件を話し始める。


「これを持っていけ。昨晩届いた」


そう言って三神は手のひらサイズの小箱を取り出した。


「これは、、開けてもよろしいですか?」


小箱を手にとった月城は三神に確認してから蓋を開ける。


するとそこには、虎のようなイラストが刻まれたバッチが2つ入っていた。


麌家(ぐけ)の家紋だ。中国領に入ったらそれ使い、当主に謁見を求めろ」


「麌家のご当主は現在、療養中と聞いておりますが?」


「・・それと共に知らせが届いた」


月城の言葉を聞いて三神は一通の書状を彼女に渡す。


「・・・・・っ!なるほど、委細承知しました」


書状を読んた月城は一瞬驚いた表情を見せたが、その後すべてを察したかのように書状を返すと一礼して出口に向かう。


「・・夜魅、真壁雅人には十分注意しろ」


月城が扉に手をかけたのと同時にかけられた、三神の一声が彼女の動きを止めた。


「・・・もっちろーんでーす!分かってますよー三神さまー!」


そしてすぐに振り返ると、満面の笑みで三神に言葉を返してから月城は長官室をあとにするのだった。




中国領・第一前線基地(旧津山市) 司令本部・作戦立案室


中国領は内戦終結以前から関西領と領土を奪い合う戦争を続けている。


日に日に激化する関西領との戦闘を最低限の被害に留めつつ優位に運ぶために中国領は、旧岡山県津山市全体を前線基地として活用している。


「あぁ、あぁ、分かった。兄上は、、、、、そうか」


作戦立案室にて部下たちと会議をしていた男性、第一前線作戦参謀本部総長、麌権次(ぐ けんじ)に一本の連絡が入っていた。


「・・・・・くそ!!!」


二十代後半の権次はお世辞にも軍人向きとは言えない華奢な体格の持ち主だ。


しかし、不思議と人を引き付ける雰囲気と部下にも親しく接する人徳のある性格もあって皆から好かれる上司だった。


そんな権次が、大声を上げながら机を叩けば自然とその場にいる全員から注目されることになる。


「・・権次様、あの、」


明らかに殺気立っている権次に誰も声をかけられない中、長い沈黙を破ったのは彼の右腕とも言える女性、総長補佐の勝呂瓜(かつろ うり)だった。


生まれている時代が違えば間違いなくモデルをしていたであろう長身のスレンダーな体系な上、きつくも見える細目の女性であり、軍の中にも彼女の隠れファンは多い。


「っ!すまなかった、瓜」


勝呂に声をかけられ正気に戻った権次はすぐに謝罪の言葉を口にする。


「いえ、ご本家は何と?」


先程の電話を権次に繋いだ勝呂は、相手が麌家からだと知っていたため、内容について質問する。


「・・・皆も聞いてくれ、」


勝呂からの問いかけに答えるように権次は立ち上がると、室内にいる全員に呼びかけた。


「・・?」


全員が権次に注目する中、勝呂も不思議そうに彼を見つめる。


「父上が、、当主、麌堅楼(ぐ けんろう)が今しがた、他界した」


「「「!?!?」」」


「そんな、」

「ご当主様が」

「これからどうなるの?」

「信じられない」


中国領は当主の堅楼を始めとした一家全員が上位能力以上の力を持つ麌家が様々な重役に就いている。


そんな麌家の当主、つまりは中国領代表の訃報にこの場にいる殆どがざわめき立つ。


「静粛に!権次様のお話は終わっていませんよ!」


「「「・・・・」」」


しかし一瞬動揺を見せたあとすぐに冷静さを取り戻した勝呂の一喝によって作戦司令室は再び静寂に包まれた。


「・・こほんっ!皆、落ち着いてくれ。本家では既に次代政権に向けての準備を行っている。それに兄上も僕と共に本家に同行してくれるとの知らせが入った。兄上のことだ、父上以上に虞家と中国領を繁栄に導いて下さるだろう」


「おぉ、策真様が!」

「さすがは麌家の方々だ!」


権次が皆を安心させるように穏やかな声色で話すことで、次第に場の空気に明るさが取り戻されていく。


「皆慌てず、いつも通りに参謀本部が機能するように努めてくれ」


「「「はっ!了解しました!!」」」


先ほどまでの沈んだ空気が一変、活気に満ちた声が権次に帰ってくる。


「さすがです。権次様」


「瓜、僕は本家に戻る準備をしてくる、あとを頼めるかい?」


「はい、お任せください」


普段通りの雰囲気を取り戻した部下たちの様子を見て、権次は自室へ戻るために手元の書類をまとめ始める。


「兄上が到着されたら僕の部屋に案内を頼むよ」


権次は最後にそれだけ伝えると作戦立案室を後にした。




第一前線基地・三番ゲート


権次が自室に戻ってから一時間ほどが経った頃、第一前線基地の入場ゲートに近づく小さな影があった。


「おい、アレ」


「あ?何だ?」


三番ゲートの監視任務に就いていた二人組の衛兵が、ゆっくりとこちらに近づいてくる人物を視界に捉える。


「おう!門番ごくろーさん、悪いが総長殿のところまで案内してもらえるか?」


ゲートの前までやって来たのは白い甲冑を身に纏った幼い容姿の男児が衛兵たちに要件を告げた。


「・・・プッ、アハハ!急に何を言い出すかと思えば!坊主、ここは危ねーから帰んな!アハハ!!」


突如現れた小学生程度の男児から告げられた言葉に衛兵の一人は腹を抱えて笑い出す。


「・・・」


その姿を男児は黙って表情の一つも変えずに眺める。


「お、おい」


しかし、もう一人の衛兵は男児を笑う同僚を何故か怯えた様子で止めようとする。


「ひーぃ、ひーぃ、な、何だよ?お前も何か言ってやれ、、、よ?、っ!痛だっ!!」


同僚の必死の静止も聞かず、腹を抱え続けていた衛兵の視界はいつの間にか天地が逆さまになっており、それに気づいた時、彼は無様に地面に転がっていた。


「人を見た目で判断しないほうが良いぜ?こんなご時世なら尚更だ。さて、そこのお前?」


「は、はい!」


未だに状況が呑み込めずに地面に寝転んでいる同僚に駆け寄るもう一人の衛兵に男児が声を掛ける。


「お前は、俺を案内をしてくれるのか?」


目が笑っていない笑顔でそう問いかける男児、麌策真(ぐ さくま)に対して衛兵は理想的とも言える見事な敬礼をしながら答えるのだった。


「も、勿論であります!策真様!!」




第一前線基地・総長室


本家に戻るための支度を権次がちょうど終えた時、総長室にノックの音が響いた。


「どうぞ」


「よおー!権次、元気にしてたか?」


ドアを開けて現れたのは、()()()()()()()()()()()の隊長にして麌家長男の麌策真だった。


「ご無沙汰しております。兄上もお元気そうで何よりです」


「準備は出来てんだろ?さっさと親父の死に顔を見に行こうぜ」


「あはは、兄上は相変わらずですね。ですが大丈夫でしょうか、我々が二人とも前線を離れるなど」


甲冑を纏っていることと言動を除けば、ジッとしていられない子供にしか見えない兄に、権次は不安を漏らす。


「あー?お前んとこは瓜ちゃんが居んだろ?俺んとこは、そもそも命令なんざ聞かねぇ奴らばっかだ」


「確かに瓜は優秀ですが、それでも」


「だぁー!お前は細けえこと気にし過ぎなんだよ!そんなんじゃ当主なんて勤まんねぇぞ!?」


不安が拭えないでいる弟に対して面倒くさそうに怒鳴る策真の言葉に権次は疑問を覚えた。


「何を言って、当主は兄上が継がれるのでは?」


「ざけんな、そんな面倒なことやってられっか。それに俺の能力は前線向きだって分かってんだろ」


「た、確かに兄上の能力は戦闘に特化したものですが」


本家直轄の独立小隊である白虎隊は第一、第二、どちらの前線にも留まず、自己の判断で戦場を動き回ることを許された、戦闘特化能力集団だ。


その白虎隊隊長である策真は、たった一人でも数日は前線を維持できるとまで言われる得位能力の所持者である。


そのため彼は自分が前線から離れないでいいように、弟である権次を当主の座を継がせようとしていた。


「他の連中にも俺が当主にならねぇことは伝えてある。そしたら、お前以外にいねぇだろうが?」


「いや、しかし、」


「しかしもカカシもねぇ!良いから、さっさと行くぞ!」


「まっ、待ってください、兄上!」


兄が前線に居た方が良いという理屈は理解できても、自分が当主になるという実感を持てないでいる権次の腕をひっぱり、策真は無理やり総長室を出るのであった。



→第三章・二話【同盟】

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