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異能パンデミック!!  作者: バジ
4/11

2-1 絶対王政

関東領 政務庁・長官室


月城が革命軍の関東領第一潜入班を壊滅

させてから2日後の昼間。


国会議事堂跡地に建てられた政務庁に二人の男が訪れていた。


「随分勝手な事をしてくれましたね、三神さん」


机を挟んで三神の正面左側に腰掛ける初老の男性、関東領財務省長官【異能者︰内藤忠敬(ないとう ただたか)】は静かに威圧をかける。


「なんの事ですか?内藤さん」


「ネズミ共のことだ。分かってんだろ慎夜」


内藤の隣に座る長身の筋肉質な男性、軍事庁長官【異能者︰本郷将義(ほんごう まさよし)】は恍ける三神に親しげに話しかける。


「本郷さん、正式な場でその呼び方は辞めてください」


「かたっくるしぃな、俺らしか居ないんだから良いだろ。な?内藤の旦那」


「今は、そのようなことを話している場合ではありません!何故革命軍を独断で討伐したのか、その理由を聞かせて貰えますか三神さん」


場を和ませようとする本郷の努力も虚しく、内藤は三神に張り詰めた空気の中、問いかける。


「何か問題がありましたか?彼らは私達に対して害悪でしかない」


「奴らには利用価値があった!それはあ貴方にも伝えていた筈だ!!」


「まぁまぁ、落ち着けよ内藤さん」


今にも三神に掴みかかりそうな勢いの内藤を本郷が宥める。


「、、、失礼。少々取り乱しました」


「正直俺としちゃあ、害獣が居なくなった程度の認識なんだが。、、、うちの若いのが一人殺られてるってのは聞き捨てならないんだよなぁ、慎夜」


本郷から穏やかな空気が霧散し、内藤以上の威圧的なオーラを纏って三神を睨み付ける。


「確かに作戦中、軍事庁の人間が革命軍の構成員が接触したとの報告は受けていますが」


「お前ンとこのは関与してねぇと?」


「作戦担当者からは敵内部への侵入工作中だったため介入出来なかったと聞いてますが?」


「報告は俺も受けてるよ。、、それは、真実なんだな?」


「うちの情報は正確だ。お前も知ってるだろ将義」


そこで初めて三神は本郷に対して砕けた口調を使う。


「、、、、、わーたよ」


数秒の沈黙の後、本郷の普段通りの声が部屋に響く。


「内藤さん、今回の作戦には早急に実行しなければならない理由があったんです」


本郷が納得すると三神はそのまま内藤に視線を向け、会話を再開する。


「その理由は?」


一度冷静にはなったものの未だ三神の行動に対する不満が収まらない内藤は素っ気ない態度で聞き返す。


「奴ら、革命軍が関西領と同盟を締結したと情報が入りました」


「「!?」」


「関西領ですって?」


「マジかよ?」


「現在、最終確認の為に私の部下を現地へ向かわせています」


「確かにそれが事実なら領内の革命軍を残しておくのは危険過ぎますが、、」


三神から告げられた意外すぎる理由に動揺が隠せない内藤は、そこで言葉を区切り考え込む様子を見せる。


「向かったのは、またあの嬢ちゃんか?」


「あぁ、月城を向かわせた」


内藤とは別のベクトルで不安を見せる本郷の問いかけに三神は淡々と答える。


「ちょいと背負わせ過ぎじゃないか?」


「経路には中部領がある。彼女が適任だ」


「だがなぁ、、、」



一時間後、


関西領と革命軍が同盟したという情報を信じきれない内藤と管轄を越えて政務庁所属の月城夜魅の身を案じる本郷は、三神が現状証拠として提示した資料を確認したあと、防衛体制の強化と月城が戻り次第、改めて彼女を交えての対策会議開くという内容で一旦話し合いが落着き、政務庁を後にした。


「(あの二人には困ったものだ。所詮は主義も主張も違う者同士の集まりか)」


三神は心の中でボヤくと、先程まで二人に見せていた偽の資料をまとめ、シュレッダーへと挿入した。




中部領 政府館・謁見室


高山城跡地に建てられた中部領の中心部、政府館。


中世王室を思わせるきらびやかな室内には三人の姿があった。


「出せっ!!出してくれ!!!」


その一人、囚人服を着た太めの中年男性は部屋の中央で、牢屋程度の広さがある結界に閉じ込められていた。


「黙りなさい、中部に敗者は不要よ」


閉じ込められた男性の正面、玉座に腰を掛け真っ黒なドレスを身に纏いレースで顔を隠した女性【異能者︰兒玉雅(こだま みやび)】がつまらなそうに呟く。


「雅様、準備が整いました」


「そう。なら始めましょう」


玉座の脇に控えるスーツ姿の細身な、眼鏡をかけた青年【異能者︰伊藤保(いとう たもつ)】が声をかけると兒玉は結界に向って手を翳す。


「まっ、待ってくれ!!お願いだ!もう一度、もう一度だけチャンスを、、」


「クドいわ」


男の懇願も聞かずに兒玉は親指と中指を合わせて指を鳴らす。


すると一瞬、結界内部で強烈な光が発生すると男の後に()()が現れる。


「ひぃっっ!」


男が振り返り、現れた()()に怯えた様子を見せると、次第にハッキリとした姿が浮かび上がる。


「あら意外」


「人型ですか。以前に出たのは一ヶ月以上前でしたね」


結界内に姿を見せたのは確かに頭が一つ、腕と脚が二本づつの人型の生き物。


しかし全身が光沢のある黒に染まり、両腕の先は剣のように鋭く尖端を尖らせ、脚は鳥類のような細い形状をしており頭部には凹凸が無く、目や口なども付いていない化物だった。


「頼むっ!!此処から出し、、」


男が再び兒玉の方を向き、助けを求めようとしたその時、彼の頭部は床にこぼれ落ちていた。


「ギィィーギャァァァ!!!」


男の首を腕の剣先で切断した化物の頭部に、口のような切れ目が現れ、そのまま大きく開くと不快な鳴き声を発して遺体に飛びつく。


「はぁ、一人づつやるのも飽きたわね」


化物が男の遺体を貪り食う様を見ながら兒玉はそんな言葉を呟く。


「では選抜戦を増やし、数人同時に行えるようにいたしましょうか?」


伊藤も残忍な光景を前にしながら涼しい顔で兒玉に提案をする。


「そうね、貴方が可能なら任せるわ。好きになさい」


「畏まりました。、、おや、そろそろですね」


兒玉に頭を下げた後に伊藤が結界を見ると、ちょうど化物が遺体を食べ終わるところだった。


それと同時に結界全体にヒビが入り徐々に消滅していく。


「ギィィィ!!!グガァァーー!」


解き放たれた化物は再び不快な鳴き声を上げると、伊藤に向かって襲いかかる。


「・・・跪け、王の御前である」


「ッ!!」


襲いかかる化物を前にしても微動だにしない伊藤が、眼鏡の奥から鋭い眼差しで見つめながら静かに呟く。


すると化物は、腕の刃と伊藤の額が目と鼻の先という位置で動きを止め、ゆっくりとその場に跪く。


「では雅様。私はコレを福田殿の元へ届けて参ります」


「えぇ、宜しく。私は少し休むわ」


「畏まりました。、、、行くぞ」


「グギィィ」


伊藤は兒玉に一礼すると化物を連れて謁見室を退室する。


「・・・・」


兒玉はその姿を無言で見つめながら見送った。




能力研究施設・第一研究室


謁見室を出た伊藤は政務館の地下に設立された異能者の能力研究施設に訪れていた。


「お疲れ様です。福田さんはいらっしゃいますか?」


伊藤は第一研究室に入室すると、その場にいた研究員に福田の居場所を確認する。


「これは伊藤様。福田様でしたら奥の実験室に居られますよ」


「そうですか。私は福田さんに用事がありますのでコレをお願いしても宜しいですか?」


伊藤は連れてきた化物を男性研究員に引き渡す。


「おぉ、人型ですか!最近足りなかったので助かります」


「では、お願いしますね」


少し興奮気味の研究員に化物を任せると伊藤は第一研究室をあとにする。




能力研究施設・実験室


「あぁーー!足りん!素材が足りんぞ!!おい、誰か居らんのか!?」


「すみません、研究員の皆さんには席を外していただきました」


手術台のような機材の前で両腕を振り上げ不満を叫ぶのは、手術着に大量の血液を付着させた老人【異能者︰福田玄治(ふくだ げんじ)


「おん?おぉー、これはこれは伊藤近衛官殿ではありませんか!」


「お疲れ様です。素材でしたら先程、人型が出ましたので第一研究室に預けてきましたよ」


「なんと!?それは素晴らしい!!」


機嫌を良くした福田はゴム手袋とマスクを外すと、そばに置いてあるスキットルを手に取る。


「相変わらずですね」


「はっはっ!儂にとって酒は水みたいなもんですわ。、、それで、ご要件は何ですかな?」


中身が無くなったのか、福田はスキットルの中を覗くような仕草をしながら話を続ける。


「実は、選別戦の頻度を増やそうかと考えていまして」


「ほう?それはそれは。しかし陛下は良いかも知れませんが、伊藤殿は宜しいのですかな?貴方の能力は制限が厳しかったでしょうに」


さして興味も無いという様子の福田は予備の酒を出そうと棚に向かって歩きだした。


兒玉の側近である近衛官、伊藤の能力は異能者によって生み出された生成生物を支配する上位の干渉能力、ただし上位とはいえ常識外の存在である、生成生物を操るにはいくつかの条件があった。


「そこでご相談なのですが、例の実験を実行させて頂けないかと」


中部領では兒玉の能力によって生まれる化物を生物兵器や実験材料として使用しているが、彼女以外を見境なく襲うため伊藤の能力は領の運営に不可欠である。


そこで、伊藤の能力を最大限活かすために異能官の福田から過去にとある実験を提案されていた。


伊藤の言葉を聞いた福田の動きが一瞬、停止する。


「・・・宜しいのですかな??」


次に動きを見せた福田は、振り返りしっかりと伊藤の顔を見ながら、彼を知らない人間が見れば思わず後退ってしまいそうな程の不気味な笑顔で確認の言葉を口にする。


「安倍さんには私から話を通しておきます。雅様が負担を感じられている以上、協力してくれるでしょう」


実験には選抜戦を仕切る軍部官の安倍に協力してもらう必要があり、危険も伴う実験のため以前は伊藤が話を自分のところで止めていた。


「軍部官殿は伊藤殿を信頼されてますからなぁ。では!本格的な準備に取り掛かりましょう!!」


「お願いします。来週の選抜戦から投入できるように予定を調整しておきますので」


もう我慢ができないといった様子で実験室にある様々な機材を掻き集める福田に、伊藤は声をかけると部屋をあとにする。


「ひゃはっは!忙しくなるわい!!」


老体とは思えないほどの身のこなしで動き回る福田の意識からはすでに、実験の途中だったであろう手術台に横たわる解剖された化物の存在は完全に抜け落ちてしまっていた。




中部領 甲武信ヶ岳


軍事施設があり、関東領との隣接地でもある甲武信ヶ岳に訪れる者は滅多にいない。


しかし、そんな人気のない場所歩く二人の男女の姿があった。


「中部五官?」


「そーですよー。中部領のトップは、ほとんど人前に出ないでー五人の幹部に領政を任せてるんですぅー」


連れの男からの質問に軽口で答えるのは、露出度高めに改造された()()()()を着た女性、月城夜魅。


「それで中部五官か。だが、その連中と今回の任務に何の関係がある?俺たちの目的は関西領の調査だろ?」


月城の後を追う形で進むのは、同じく黒い軍服を着た()()()()()ほどの男性、元革命軍関東領第一潜入班班長、真壁雅人。


「その中の一人に面白そうな能力持った人がいるんですよねー。、、てゆうかぁ、雅人さん!!」


右手の人差し指を口元に当てながら答える月城は突然振り返ると、真壁の全身を舐めるような視線で観察すると彼を人差し指でピンッと指さす。


「な、何だ?」


「うぅん!やっぱり若い雅人さんはイケメンさんですよねぇー」


「はぁ、またそれか。第一、本当にこの姿になる必要があったのか?」


月城の言葉を呆れ顔で返す真壁。


真壁は第一潜入班の会議室で瀕死状態に陥った際に月城の血液を摂取させられたことで月城が手に入れていた、ある能力が発動した。


「勿論ですよー。おじさんの雅人さんが私と一緒に行動してたら犯罪みたいで色々マズイじゃないですかぁー?」


「おじ、、、お前な」


おじさんと言われショックを受ける真壁を月城が笑う。


「あはっ!良いじゃないですかー、今はもうピッチピチですよー」


「20代がピチピチかは置いといて、未だに信じられん。俺が異能者になっただなんてな」


月城が使った能力、それは自分の血を飲んだ相手を絶対服従の眷属にする力だった。


しかも無能者に対して使用した場合、対象者を異能者にしてしまう付加作用も持っていたのだ。


「なんだか吸血鬼みたいですよねー」


「たしかアレは吸血鬼が血を吸うんじゃなかったか?」


真壁が獲得したのは、身体能力を爆発的に向上させることができる能力であり、それに伴って向上した身体能力を発揮する際に体が耐えられるように肉体の強化も行うことができるようになった。


それを応用して見た目を若くできないかと月城に指示させ試したところ成功したのだった。


血を飲んで若返り、強靭な肉体を手に入れたことから月城は吸血鬼と表現したが真壁はそれを否定する。


「・・・吸っても良いですか?」


真壁の何気ない言葉に、少し考えるような素振りを見せた月城は冗談っぽく問いかける。


「すまんヤメてくれ」


即座に謝罪する真壁からは仲間を殺された恨みや憎しみは感じられない。


決して忘れた訳では無かったが、妹を思う気持ちと絶対服従の能力が月城への敵対心を消し去ってしまっていたのだ。


「えぇー、良いじゃないですかぁー。ちょっとだけ!ちょっとだけですからー」


「おっおい!ヤメろ!!」


二人の主従関係が能力によって成り立って立っている以上、月城が本気で命令すれば真壁は逆らうことができない。


自分が抵抗できているのは月城が冗談半分で遊んでいるだけだと、真壁は分かりながらも彼女の戯れに付き合った。


そんな歪な関係の二人は、じゃれ合いながらも進む。


目的地は岐阜県高山市、中部領最重要都市。



→第二章・二話【中部最強】

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