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異能パンデミック!!  作者: バジ
3/11

1-3 吸血

関東領 第一潜入班会議室


「只今戻りました!」


新田が会議室に入ると三人の人物が彼を迎え入れた。


「お疲れ様です!新田さん!」


彼に負けない元気さで迎える情報処理員の佐藤ひより。


「良くやった新田。少女は無事か?」


少しだけ普段より高いトーンで労いの言葉と救出した少女の安否確認するのは第一潜入班班長真壁雅人。


「ほら、ヨミ」


新田が振り向き声をかけると彼の後ろにピッタリ張り付いていたヨミが顔を見せる。


「何その子!?かわいいーーー!!!」


その瞬間、奥のテーブルで優雅に紅茶を飲んでいた白衣の女性が豹変し、ヨミに駆け寄って髪や頬を撫で回す。


「うぅー、真司さん。やっぱりこの人変な色してますー、、」


ヨミの微かな抵抗も、ものともせずに撫でることを止めない女性は救護員【異能者・草野冬子(くさの とうこ)】。


スレンダーな体つきに加えて、鋭い目つきや、それを強調させるフレームの細い眼鏡を掛けていることもあり、正にクールビューティーという言葉が似合う女性である。


ただし可愛いものに目が無く、そこそこの頻度で暴走してしまう。


「色?」


草野の暴走よりもヨミの言葉が気になった真壁が言葉を漏らす。


「ヨミの能力です。相手のオーラみたいなのが見えるみたいで保護するときも、すぐに信用してくれたんで助かりました」


「視覚を強化する能力の一種ね。たしか、自分にとって相手がどんな人物か見えるらしいわ」


草野はヨミのことを抱きしめた状態で後頭部を撫でながら新田の話に補足を加える。


彼女は内戦時に異能者について研究する組織に所属しており、その後革命軍に加わったため能力に関する知識は豊富に有していた。


「えーと、‘自分にとって’ってことは心が読めたりする訳じゃないんですよね?」


すると今度は、佐藤が疑問を口にする。


「良いところに気づいたわね、ひよりちゃん。あくまで自分に対して敵意があるか好意的かっていう漠然としたイメージが見えるだけみたいよ」


「草野に対して変な色と言っていたのが良い証拠だな」


「ちょっと!真壁班長酷いですよー、私は可愛いヨミちゃんが大好きなだけです!」


抗議しながら草野はヨミを強く抱きしめる。


「く、くるしい」


「ほら草野さん、そのくらいで」


新田が草野の腕を解き、自由になるとヨミは再び新田の後ろに隠れる。


「もー、信ちゃんったらヤキモチかしら?」


「違いますよ、そもそも草野さんは男に興味ないでしょ」


「失礼ね!可愛い少年は大好物、、じゃなかった、大好きよ!」


「草野、いい加減にしないと本気で彼女に嫌われるぞ」


ギラついた目でヨダレを垂らす草野を見てヨミが更に怯えているを見て真壁が忠告する。


「ヨミちゃん、ちょっと変わってるけど草野さんはとっても良い人だから大丈夫よ」


いつの間にかヨミのそばで彼女と目線が合う位置にしゃがんでいた佐藤が優しく話しかける。


「ホント?」


「ホントよぉ〜。だからこっちにいらっしゃい、ヨミちゃん」


佐藤の言葉を受けて新田の陰から顔を出すヨミに草野が穏やかに語りかける。


「ひぃ!」


しかし、その表情は欲望で緩みきっていたため、ヨミの恐怖心を増長させてしまった。


「はぁ、佐藤その子を医務室に連れて行ってくれ。別動の救護員が戻っているはずだ」


「りょ、了解しました。それじゃあヨミちゃん一緒に行こっか」


苦笑い気味で返事をした佐藤は立ち上がると、ヨミに手を差し伸ばした。


「うん!」


するとヨミは元気よく頷き、佐藤の手を取る。


「・・・」


「?どうかしたの?」


「うんん、何でもないよ。では真壁さん行ってきます」


ヨミの行動に少し驚いた佐藤だったが、そのまま二人で会議室を出て行った。


「あぁーん、ヨミちゃーん!」


「随分素直について行ったな」


「きっと、ひよりちゃんからは変な色が見えなかったんじゃないですか?」


「なるほど」


床に手を付き嘆く草野を無視して真壁と新田は会話を続けた。


「二人とも、ちょっと酷くないかしら」


「いや、だって今の草野さん面倒くさそうなんですもん」


「そんなことより新田、草野、今回の件どう見る?」


「そんなことって、、まぁいいわ」


草野は何かを諦めたかのように立ち上がると後ろ髪を払うと先程の席に戻る。


「軍人二人がヨミを追っていたことですよね?」


新田が真壁に確認する。


「それだけなら、軍事庁が後天性の異能者を捕獲しようとしていたってだけで済むんだけどねぇー」


「追っていた軍人は中位能力と正体不明の干渉能力保有者だ」


「たしかにヨミを捕まえる為だけにしては人選が不自然っすね」


「ヨミちゃんが中位能力以上かレアな能力を持っていたなら分かるけど、さっきの感じだと低位の強化能力ってとこでしょうね」


「能力自体も珍しい部類では無い」


「なら、どうして?」


そこで三人の会話は止まってしまう。


異能者に成ったとはいえ何故、強力な能力を持った軍人を二人も使ってヨミを捕らえようとしたのか、三人がそれぞれ思考を巡らせていた。


「酒井さん達が追ってる子も気になるわね」


「酒井からの連絡はまだ無いんですか?」


少し考えの視点を変えようと草野が、突如姿を消し離脱した女性軍人についての話題を振る。


「お前が戻る直前に一度連絡があった。川崎市手前にある監視塔に入ったようだ」


「あれ?彼処って今も使われてましたっけ?」


関東領が設立されて間もない頃、生活区隔離に不満を抱き区画外への侵入を試みる無能者を武力をもって阻止するため、両区の隣接地点に監視塔が建設された。


「もう閉鎖してるわよ。でも設備自体は生きてるみたいね」


「今回のような出動の際に拠点として使っているんだろう」


「そこに入ったってことは、まだヨミを諦めてないってことか」


「可能性はある。援軍を呼ばれて攻められる前に対策を、」


真壁が今後の対策を検討しようとしたその時、会議室は暗闇に包まれた。


「あら?停電かしら?」


「あー、廊下の照明も全部消えてますね」


「ヨミちゃん達大丈夫かしら?一応、非常灯は各所に設置されてるけど」


「俺、ちょっと見てきます!」


「新田、ついでに電源管理室も見てきてくれ」


「了解ですっ」


新田は真壁からの頼みを承諾するとそのまま会議室を後にした。




医務室前


「おーいヨミちゃんー、ひよりちゃんー大丈夫ー??」


新田は非常灯の明かりを頼りに医務室までたどり着くと先程会議室を出た二人の安否を確認する。


「・・・・・」


しかし室内からの返答は無く、新田は室内へ入り様子を伺う。


すると視界も慣れてきたのか、暗い室内で部屋の奥に置かれているベッドに横たわっている人影を見つけた。


「・・・ふたりとも〜、なーに寝ちゃってんのっ!、、、あれ?」


寝ている二人を驚かせようと忍び足で近寄り、大声を出した新田だがベッドに佐藤しか居ないうえに全く反応がないため呆気にとられる。


「・・・・・」


「おっかしいなー、おーい、ヨミちゃーんどこだー??」


ヨミの姿を探す新田だがその姿は部屋の何処にも見つけられない。


「・・・・・」


「てか、ひよりちゃーん。いつまで寝てるのー?」


先程、真横で大声出され、医務室の至るところを新田が探しているにも関わらず未だに起きる気配の無い佐藤に再度近寄る。


「寝てる訳じゃないですよー?」


「!!」


佐藤の寝顔を覗こうとした新田は突如、背後から話しかけられ慌てて振り向く。


「安心して下さい!即効性あるやつですから苦しんで無かったですよー」


「・・・・・・お前、なんで」


目の前にいる女性から発せられた言葉の意味を理解した新田は、怒りを限界まで抑え込み何とか声を絞り出す。


「なんでってー。真司さんが連れてきてくれたんじゃないですかー」


ケラケラと笑いながら答える女性。


しかし今度はその意味が理解できない新田。


「俺が?そもそも何で名前を知って、、」


そこまで口にしたところで、新田は全身に力が入らなくなり床に倒れ込む。


「ごめんなさーい真司さん。貴方はコレで殺さないといけないんですぅー」


そう言いながら彼女はタイツの上からバンドで太ももに固定されたナイフを抜くと、爛々とした眼差しでナイフと新田を交互に見つめた。




会議室内


新田が医務室に向かった後、真壁と草野は今後の対策について話し合っていた。


しかしコレといった具体案は出ず、真壁は軍事庁の最近の動きについてを草野はヨミの能力について、それぞれが手持ちの資料を確認していた。


「やはりニ班からの報告で特出すべき内容は無いか」


軍事庁長官の調査を担当している関東領第二潜入班から提出された、報告書などの資料を一通り確認した真壁は、落胆というよりも予想通りといった面持ちで呟いた。


「こっちもですよ。やっぱりヨミちゃんの能力が特異的なものとは思えませんね」


真壁の言葉に草野が反応する。


彼女も革命軍が今までに確認した異能者の能力に関する資料に目を通していたが似たような能力を持つ者も多く、ヨミの力に特異性は無いと判断した。


「ひどいですよー」


「!?」


「あはっ!いやだ雅人さん。そんな怖いモノ向けないで下さーい」


いつも間にか草野の背後に立っていた女性に対して真壁は咄嗟に腰の拳銃を構えた。


「どこから現れた?」


「もぉー、雅人さんも同じような質問ですかー?」


「同じ?」


「そーですよー。二人して失礼しちゃいます」


そう言いながら女性は真壁に近寄るために右脚を動かす。


「動くな!」


真壁は警告の言葉と共に引き金を引き、彼女の足元へ威嚇射撃を行う。


「あららー、落ち着きましょうよー。雅人さん」


「俺は至って冷静だ。先ずは草野を開放して貰おうか」


次は当てるという意思表示のために真壁は銃口を女性の額に向ける。


「えー?別に良いですけど、どうするんですかー?もう死んじゃってるのに??」


女性の言葉に真壁が動揺を見せると彼女は、先ほどから俯いた体制になっていた草野の頭部を持ち上げ、ライトを当てる。


「なっ、?」


すると目を充血させ、鼻や口から血を流し、肌が青紫色に変色させている草野の姿があった。


「ねっ?」


「貴様ぁ!!」


笑顔を向ける女性に対し真壁は怒りの感情を顕にし、そのまま彼女に向けた拳銃の引き金を引く。


『装着承諾:火竜の鎧』


「!!」


しかしその銃弾は突如彼女が纏った赤い鎧によって弾かれてしまう。


『変更承諾︰ブーストアーマー』


更には音声と共に鎧が姿を変化させ、彼女はそのまま真壁の視界から消える。


「すっごーい!やっぱり真司さんの能力って便利ですね!!」


真壁の真正面に現れた女性は、そう言いながらいつの間にか握っていたナイフで彼の両手両足の腱を的確に切断する。


「!!??」


声にならない悲鳴を上げながら真壁は床に倒れ込む。


「ふぅ。コレはちょっと馴れるまで大変そうですねー」


そんな真壁を見下ろしながら感想を述べる女性は既に装備を解除していた。


「なぜ、、新田の、、、力を、」


真壁が痛みに耐えながら見上げるとそこには、やたらと露出度の高い赤色の軍服を着た女性が楽しそうな表情で立っていた。


「気絶しないなんて流石ですねー。この能力ならさっき貰ったんですよー?」


「貰った、、だと?」


「はい!“殺した相手の力を奪う”それが私の能力ですからー!」


「ころ、した、、?」


女性の言葉を理解できず真壁は無意識に口を動かす。


「そーですよー、このナイフでグサッと!」


女性は先程も使用したナイフを再び取り出し両手で握るとそのまま振り下ろす素振りを見せた。


「馬鹿な、新田が殺られただと?そもそもお前は一体、、」


未だに混乱している真壁はそれでも、まさかという気持ちで疑問を投げかけた。


突如現れ気づかないうちに草野を殺害し、新田をも殺したと言い、彼の能力を使って自分を一瞬のうちに行動不能に追い込んだ女性が想像通りの人物ならば、川崎近辺の監視塔に居るはずなのだから。


「もぅー、まだ気付いてくれないんですかぁー?夜魅ですよ!月城夜魅ですよー!」


夜魅、そう名乗った女性軍人【異能者︰月城夜魅(つきしろ よみ)】は「しょうが無いですねー」とでも言いたそうな表情を見せると次の瞬間、10歳前後の幼い容姿へと姿を変えた。


「・・・・」


そこで真壁の思考は完全に停止してしまう。


無能者ではあるが能力について、そこ等の異能者以上に知識を有している、少なくとも異能者な上に専門家としての経験も持つ草野と対等に会話出来る程度には理解していると思っていた真壁の幻想は目の前で一人の女性が起こす現象によって打ち砕かれた。


「これ、潜入とかする時に便利なんですよー」


そう言葉にする彼女の姿は既に20歳ほどの容姿に戻っていた。


「いったい、どれだけの能力を使える?そもそも能力を奪う力なんてもの聞いたこともない。何なんだお前は」


自分の知識で理解することを諦めた真壁は頭に浮かぶ疑問をただ相手にぶつける。


「質問が多いですよー?雅人さん。まぁあ?私のお願いを聞いてくれるならー、教えて上げても良いですよー??」


「お願い、だと?」


「そうでーす。私が此処に来たのは、二つの目的の為なんですよー」


「目的、、それに強力しろと言うことか?」


「ですですー。まぁ、一つはもう済んでるのでぇ、あと一つですけどねー?でもそれには雅人さんの協力が不可欠なんですぅー」


「俺に何をさせたい?」


現状自分の命も第一班の運命も彼女に握られている、それを身を持って味わった真壁は素直に相手の要求を確認する。


「あはっ!素直でいいですねー。目的の一つは真司さんの能力を奪うこと、そして残りの一つわぁー、、、、、()()()()()真壁雅人さん」


新田の能力を奪う、改めて聞いたその言葉に怒りが再燃仕掛けた真壁。


だがその後に放った言葉には一切の感情が無く、今までの彼女からは想像も出来ないほど冷たい視線を真壁に向けていた。


「・・・だったら何故殺さない?今なら簡単だろ?」


「えぇー?何言ってるんですか雅人さーん。殺しませんよー。言ったじゃないですか貴方が目的なんですからぁー」


真壁の問いかけを返す彼女は、先程までのあざとさ全開の月城夜魅に戻っていた。


「それはどういう、」


「そのままの意味ですよー?()()()()()()()()である貴方が必要なんですぅー」


「!!どうしてそれを!?」


そう口にしながら真壁の頭には一つの可能性が過っていた。


しかしそれは、真壁にとってあり得るはずの無い可能性だった。


「もぅ、分かってるんじゃないですかぁー?私に今回の作戦をご命令されたのは、、、政務庁長官三神慎夜様なんですからぁ!!」


三神慎夜、その名を口にする彼女は恋する乙女のような純粋な曇り一つない瞳をしていた。


「!?!?!!」


だからこそ真壁は月城の後に三神慎夜がいると確証を持つことができた。


嘗ての自分たちが三神に対して抱いていた絶対的な信頼、それと同じモノが彼女の中には確かに存在していたからだ。


「三神様は貴方達ご兄妹との協力関係をお望みなんですよー。良かったですね、雅人さん!」


「何を今更!だったら何故、新田たちを襲った!」


「必要なのは雅人さんたちだけですから、他は別に必要ないんですよー」


「ふざけるな!そもそも俺たちが従うと思っているのか!!」


命を握られた状況にも関わらず真壁は彼女に怒りをぶつけ、睨み付ける。


「従いますよー?ほーらぁ」


真壁の怒りなど気にもせずに月城は数枚の写真を胸元から取り出す。


「従ってくれないとぉ、妹さんがこんな事になっちゃいますよぉ?」


「!!、、お前は何なんだ、、」


写真を見た真壁は、もう何度目か分からない質問を月城に投げかける。


真壁が見たのは、酒井を含めた第一潜入班メンバーの無残な姿だった。


ある者は四肢を切り落とされ、ある者は全身を焼き焦がされ、またある者は草野の様に皮膚を変色させているなど、先ほどまで元気にしていた仲間たちが見るも悍ましい姿へと変貌してしまっていた。


そしてその全ての写真には笑顔の月城の姿が写り込んでいた。


「もう忘れちゃったんですかぁー?私はぁ、三神様の部下月城夜魅ですよぉー」


「そうじゃない!関東領の各地で行動する彼らとは昨晩に定時連絡を取ったばかりだ!つまりお前はこの数時間で第一潜入班全員を殺害した事になる!そんなことは上位能力を持ってしても不可能だ!!」


月城の戯けた態度に真壁は怒鳴り気味に捲し立てる。


しかしそれでも月城は調子を崩さずに真壁に言葉を返す。


「そりゃそうですよー。雅人さんは私が上位能力の異能者だと思ってるんですかー?」


「何を今更、」


「じゃあー?私の能力の種類って何だと思いますぅ?」


「そんなもの、、、、?、?」


簡単だ、その言葉を出す前に真壁の口は動くことを止めた。


「わくわく」


そんな真壁の様子を月城はふざけながら笑顔で眺める。


「(殺した相手の能力を奪う力。そもそも他人の能力に直接作用するのは干渉能力だけのはずだ。しかしそれでは自分で使うことはできないはず)」


異能者の能力はDNAに刻まれた遺伝子情報によって決まるという論文が内戦勃発前に発表され、今ではそれが一般的な知識になっている。


だからこそ、()()()()()という力は、相手の遺伝子情報に()()して解析、さらにその情報を自身が扱えるようにD遺伝子情報の改変、()()を行わなければ成立しないはずの力であり、真壁にはその答えが出せなかった。


「やっぱり雅人さんは知らないんですねぇー?」


「・・・何をだ?」


「私の力わぁ、上位能力の更に上、特位能力なんですよぉー!」


「特位能力、だと?」


「そうですぅー。二つの属性を持った能力のことを特位能力って言うんですよー。すっごく珍しいんですから!」


えっへん!と言わんばかりに両手を腰にあて胸を張る月城。


「二つの属性を持つ、たしかにそれなら説明が、、」


そこで真壁は自分の異変に気がついた。


厳密に言えば気づいてはいたが余りにも想定外の出来事の連続で一種のハイ状態になっていたのだ。


「あれれー、雅人さーん大丈夫ですかー?」


しかし体は既に限界を迎え、両手両足を斬られた真壁は大量の血を流してしまい、出血多量による意識障害を起こす寸前だった。


「小夜には、手を出す、な、」


朦朧とする意識の中で真壁は一人の女性の名前を口にする。


【異能者︰真壁小夜(まかべ さよ)】革命軍の代表であり、真壁雅人の妹、そして関東領政務庁長官の三神慎夜とも因縁のある人物。


「だからー二人の協力が必要なんですよぉー。なので取りあえずはー、雅人さんが頷けば直ぐに手出しはしないですよ?」


「協力も何も、、俺はもう、、」


「大丈夫ですぅ。コレを飲んでくださーい」


意識を失いかける真壁に月城は胸ポケットから小瓶を取り出して差し出す。


「なんだ、それは」


「血、ですよ。私の血液ー」


そう言って小瓶の蓋を開ける月城の瞳は見るものを全てを魅了してしまいそうな妖艶な輝きを放っていた。


「・・・」


「あら?気を失っちゃいましたねー」


月城は中身を知る前に気を失ってしまった真壁を仰向けに寝かせると、口元に小瓶を近づけ、そのまま口内へ流し込む。


「・・・」


「さぁ、雅人さーん。貴方に力を上げますよー。それでしっかりと三神様のお役に立ってくださいねー」



→第二章・一話【絶対王政】

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