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異能パンデミック!!  作者: バジ
1/11

1-1 関東領第一潜入班

2020年。


日本各地で、マンガやアニメに出てくるような、特殊な力を手に入れる者たちが現れた。


その存在は全世界に知れ渡り、彼らは【異能者】と呼ばれるようになった。


人智を超えた力を持つ異能者を恐れた日本政府は彼らを危険分子、人に危害を与える存在と公表し隔離施設に収容。


当時、圧倒的に少数であった異能者たちは自衛隊や警察によって制圧され、新たに異能者となった者たちも次々と確保されていった。





・・・・・・


2025年。


しかし、初めて異能者が確認されてから5年。


北海道札幌市で一人の異能者が収容施設を強襲、たった一人で収容されていた異能者を開放し、政府への徹底抗戦を宣言した。


この事件が火種となり、各地で息を潜めていた異能者たちが活動を開始する。


密かに連絡を取り合っていた者同士などで団結し、北海道同様に収容施設を攻撃して戦力を強化し、異能者の地位を確立するために政府主要機関を襲うなどのテロ活動が勃発した。


そして、日本は異能者と政府による内戦時代へと突入していった。





・・・・・・


そして、2028年。


内戦開始から3年の間、異能者も数を増やしていったが、政府も他国に協力要請するなどして均衡を保っていた。


しかし、一人の異能者によって沖縄を除いた日本全土を覆う巨大な結界が張られ、他国からの助力を得られなくなった日本政府はあっさりと敗北。


内戦勃発から3年後、日本は能力を持たない者が無能者と呼ばれ異能者たちによって支配される国となった。









・・・・・・

内戦終結から2年の月日が流れた現在、2030年。



関東領 政務庁・長官室


「準備は整った。あとはお前次第だ」


深夜に灯りも付けずに月明かりのみが照らす室内で高級スーツに身を包んだ男性、政務庁長官【異能者・三神慎夜(みかみ しんや)】は部下と連絡を取っていた。


「“お任せください。三神様のご命令、しかと成し遂げてご覧に入れます”」


「・・・任せたぞ」


通信機から部下の返答を聞くと一言、どこか冷たさの感じる声で答え通信を終える三神。


「・・・」


だが月に照らされたその口元は微かに微笑んでいた。





内戦末期、日本には異能者たちによる複数のテログループが存在した。


当初から北海道で活動していたグループが道内の完全に掌握すると新たにアイヌ領としての独立政権確立を宣言し、各地方でも同様の現象が起こった。


現在、日本はアイヌ(旧北海道)・東北・関東・中部・関西・中国・四国・九州がそれぞれ独自の政を行い、他領の動きを警戒する戦国時代に再び突入していた。


尚、沖縄を含む結界外との連絡は未だ取れておらず、結界を張った異能者本人も見つかっていない。





関東領 旧横浜駅・地下街


今にも消えそうな照明が照らす地下街を歩く中年の男性を見かけ、彼の部下である青年が声をかける。


「真壁さーん」


「??」



内戦時に駅ごと崩壊して以来、使用されていなかった地下街を拠点にする者たちがいた。


当時、政府側にも異能者側にも属さずに双方の共存を訴え、現在は【革命軍】を名乗っている組織【革命軍関東領第一潜入班】。


「新田か。もう戻ったのか?」


そう答えるのは、真壁と呼ばれた30代後半とは思えないほど整った顔立ちをした男性、関東領第一潜入班班長【無能者・真壁雅人(まかべ まさと)


「もうって、酷いですよ。今、夜中ですよ?俺、朝方から駆け回ってたんですから!!」


真壁に言い返すのは制服を着崩した茶髪の青年、関東領第一潜入班工作員【異能者・新田真司(にった しんじ)


新田は真壁に並ぶと同じ方向へと向かってあるき出す。


「各班の様子はどうだ?」


「二班も三班も、これと言った成果はないですねー。一応、拠点だけじゃなくて実際に動いてる工作員にも接触しましたけど」


第一班は関東領の潜入班統括も兼任しているため、無線機による連絡以外にも直接各班に赴いての状況確認を行っている。


「そうか、すまんが引き続き頼むぞ」


「了解っす!」


関東領は無能者を内戦時に崩壊した地域で生活させ、異能者の生活域への侵入を禁止している。


潜入班各班は関東領の主要人物3人の調査をそれぞれ担当しているため、他班の拠点に向かうためには警備が厳重な施設付近を通らなければならない。


そのため、第一班でもトップクラスの実力を持つ新田が一人で動いている。


「それは良いとして新田、一週間以上待ってる政府庁の調査報告はいつ貰えるんだ?」


爽やかに答えた新田の表情が一気に青ざめた。


新田は第一潜入班で工作員の指揮をしているので各員の報告をまとめるのも仕事なのだが。


「いや、それはー、、」


「確か、今日出発する前にまとめて提出するはずだったよな?」


「・・・・ッ!」


「待て!新田!!」


「いで!」


逃走しかけた新田の襟首を掴み逆の手で拳を造り振り上げると、そのまま頭部に振り落とした。


「これからミーティングだ、さっさと行くぞ」


「ハイ」


「報告書は明日までだからな」


「・・・ハイ」


か細い声で返事をすると新田は真壁のあとを追ってトボトボと歩きだした。




第一潜入班・会議室


内戦前は地下の職員たちが休憩所に使っていた部屋を現在は第一班が会議室として使用している。


「全員集まっているか?」


「真壁さん!お疲れ様です、実は酒井さんと草野さんが間に合わないそうになくて」


「何かあったのか?」


会議室に入った真壁に挨拶をしてメンバーの欠席を伝えるのは、髪を一つに束ねたまだ幼さが残る顔立ちの女性、関東領第一潜入班情報処理員【無能者・佐藤(さとう)ひより】


「ひよりちゃーん!聞いてよ!さっき真壁さんに、、いで!」


「新田、お前は黙ってろ」


入室するなり佐藤に泣きつく新田に再度、真壁の拳が振り落とされた。


「お、お疲れ様です、新田さん。だ、大丈夫ですか?」


「佐藤、新田は放っておけ。報告を頼む」


「真壁さん、、ヒドイっす、」


新田が落ち込むなか佐藤は報告を始める。


「りょ、了解しました。先程、酒井さんに偵察員の一人から連絡がありました。内容は、旧桜木町駅付近で異能者が能力を使用したとの事でした」


酒井というは第一潜入班偵察員の指揮を取る男で、佐藤もまた情報処理員をまとめ役をしている。


「桜木町?あの辺りはまだ無能者の生活区域だった筈だが?」


桜木町駅も横浜駅同様に内戦時に倒壊してしまい、関東領政府は異能者との格差を明確にするため修繕などは行われていなかった。


「はい。ですが報告では軍服を着た異能者二名が確認され、そのうちの一人が能力を使っていたそうです」


「軍人か、、、能力の詳細は分かるか?」


真壁は少し考える素振りを見せると佐藤に確認を取る。


「遠目での確認だったようですが、地面から火柱が複数上がっていたと」


「生成能力か?それで、草野も酒井について行ったんだな?」


草野は救護員をまとめている女性の異能者で、付近で暮らす無能者たちに被害が出ていることを想定しての行動だろうと真壁は考えた。


「報告では今のところ大きな被害は出ていないようでしたが、横浜駅と桜木町駅の間には多くの人が暮らしていますから」


「でもさ、聞いた感じだと中位能力っぽいし、なんでそんな所で暴れてるのかな?」


二人の会話を聞いていた新田が疑問を漏らす。


異能者が使う能力は大きく分けて【生成】・【強化】・【干渉】の3種類に分類され、更に能力ごとに【下位】・【中位】・【高位】という3段階のレベルが存在する。


異能者のほとんどは下位能力の持ち主であり、中位であれば関東領軍でも優遇され、部隊長や能力を活かした部署に特別待遇で配属されている。


無能者の監視も軍の仕事ではあるが基本的には低位の戦闘能力を有する者が担当しているため、そこに新田は違和感を感じていた。


「あの、新田さん。ごめんなさい私、まだ能力のレベル判断ってまだよく分からなくて」


「えっ?あー、ごめんね、ひよりちゃん。俺、直感的に何となく分かっちゃうから、上手く説明できないなー」


「いつも思うがレベルが分かるのに説明というのは、どうにかならないのか?」


「そうは言いますけど真壁さん、これって本能みたいなもんなんで言葉にしろって言われると、こう、モヤモヤ!バーン!!バリバリー、みたいな?」


「「・・・・・」」


「あ、あはは〜」


新田の謎のジェスチャーと擬音によって固まった空気に佐藤が乾いた笑いが響く。


「はぁー、、いいか佐藤。俺も確証がある訳じゃないが、おそらくは燃費の問題だろう」


「燃費、ですか?」


「低位の異能者で火柱を出すヤツとは戦闘になったことがあるが、2・3本出したら5分くらいは能力を使えなくなっていた」


「それで燃費ですか」


納得した様子の佐藤を見て真壁は頷き、説明を続ける。


「そうだ、うちの偵察員なら火柱の具体的な数ぐらいは報告してくるはずだ、それが複数という表現になっているということは、数えきれないほど発生していたか、報告中も現在進行形で増え続けていたんだろう」


「すげー、よく分かりますね真壁さん」


「お前の語彙が足りないだけだ」


真壁が呆れていると、佐藤の無線機に連絡が入る。


「はい、佐藤です。・・・・はい。・・・・はい、了解しました。真壁さんにお伝えします」


「酒井たちか?」


通信を終えた佐藤に真壁が声をかける。


「はい、連絡にあった軍人二名と彼らに追われる少女一人を確認。現在、軍人たちは廃ビルに逃げ込んだ少女を見失い捜索中とのことです」


「!!」


「待て!新田!!」


佐藤の報告を聞いた新田が、突然飛び出して行こうとするのを真壁は制する。


「行かせて下さい!真壁さん!俺、」


「分かっている、だが報告を全て聞いてからだ。焦るな、新田」


「・・・分かりました」


渋々といった様子ではあるが、新田は真壁の指示に従い、元いた席へと戻る。


「・・新田さん」


「佐藤、続けてくれ」


「はい。軍人二名の能力は一人が火柱を地面から生み出す生成能力、レベルは新田さんの見解と同じく中位レベルだろうと草野さんが判断したようです」


新田の心境を按じていた佐藤だが、真壁に言われ報告を再開した。


「その根拠は?」


「そちらも真壁さんのご意見と一致しています。同系の低位異能者とは比べ物にならない数の火柱を確認したと。残るもう一人ですが、女性軍人なのですが能力は不明とのことです」


「不明、力をまだ使っていないのか?」


真壁が今後の対応を悩みだすと佐藤が彼の言葉を否定する。


「いえ、能力自体は使用しているようです。実際、彼女が隠れた少女を見つけては攻撃の指示をしていたそうです。ただ、現在は少女を見つけられていない事と、今までどうやって見つけていたのかが解ら無いので特定できないと、草野さんは仰っていました」


「隠れた相手を見つける能力か。どうだ新田、何か分かるか?」


先程、新田に対して語彙が足りないと言った真壁だが、決して彼の直感を疑っているわけでは無く寧ろ信頼していた。


だからこそ、他人に伝えられるようになって欲しいと思いつつ、自分だけでも新田の伝えたいことが分かるようにとしようと努力していた。


「低位の干渉能力だと思います。根拠は、耳や目の強化とは違う感じがするからなんですけど、、、すみません」


そして、ある程度であれば自身の経験や知識から新田の感じたのもを理解出来るようになっていた。


「大丈夫だ新田、強化能力で無いとお前が判断できたならそれで十分だ」


干渉能力は実態が詰めない分、危険ではあるが指定した対象にのみ作用するという弱点もある。


低位能力であれば酒井たちの存在が気づかれる可能性は低いと真壁は考えた。


「真壁さん」


「行ってこい新田、酒井たちと合流して追われてる子を助けてこい」


「はい!!」


真壁の言葉に勇ましく答えた新田は勢いよく会議室を飛び出して行った。


「大丈夫でしょうか?新田さん」


「問題ないだろう。寧ろ追われてる子の方が危ないかも知れない」


「暴発、、ですか」


「軍に追われているなら、おそらく後天性の異能者だ。今まで無能者として生きてきた子供がいきなり異能者になれば、混乱して能力を暴発させる可能性がある」


後天性異能者とは内戦が終結した2028年以降に異能者となった者に使われる名称である。


5年程前までは突然異能者として能力が見につく者も多かったがある時を境にその数は激減、それもまた内戦が起こる原因の一つになった。


「しかし詳細不明の干渉能力と中位クラスの戦闘向きな生成能力を相手ではいくら新田さんでも」


干渉能力は強化や生成と違い、物理法則と無関係な力が多く、たとえ低位であっても戦闘になれば十分に警戒をしなければならない。


いつ発動したのか、どのような効果があるのか傍目からでは、実際に効果が出るまで分からないからだ。


「たしかに干渉能力は厄介だが、あれは対象を指定しなければ力を使えん、今回の目的は戦闘では無く救出だからな。それに、忘れたのか?」


「?何をですか??」


子首を傾げる佐藤に真壁は笑いながら答える。


「新田は高位能力の異能者だぞ」



→第一章・二話【幼き逃走者】

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