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銀河歴1234年珍兵器博物館  作者: まいまい
“忘れもの”銀河歴1111年珍兵器博物館倉庫
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Ex.誰が誰を殺したのか?

新人学芸員の私には、とてもお手上げな事態だった。

「管理No.564が不正使用された疑いがあります」

うちの看板ロボ娘がそんなことを言い出したのだ。

「No.564ってなんだっけ?」

「『デカルト殺し』です」

「説明おねがい」

「分かりました。お客様用の説明になるので触り程度になりますが」

「それで大丈夫だよ」

「では。“哲学的ゾンビ”という話を知っていますか?」

「なんとなくは」

「哲学的ゾンビとは、“意識(クオリア)”を持たない人間を指します。これは外から見ても判別することは出来ません。普通の人間と同じ行動をしますし、例え精神鑑定をしてもそれなりの答えを返します。このゾンビが人間と違う点は一つだけ、意識を持っていないこと。つまりは電気的化学的物理的反応が集合した物理現象でしかないのです」

「そこはまあとりあえず大丈夫として。その『デカルト殺し』の方を詳しく」

「『デカルト殺し』は、“意識を殺害する”兵器です。暗殺兵器研究の副産物的なものらしいですが、要人暗殺などに使用しても期待した結果は得られないでしょう。これが用を成すとすれば私怨による復讐程度でしょうか」

「……もうちょっと詳しく」

「つまり、被害者が分からないのです。被害者の主観――これは少し哲学的な問題になりますが――被害者の意識は確かに殺され消えているのです。これを認識できるのは、殺された被害者と殺したという事実を知る加害者だけです。“死体”に残されるのは、電気的化学的物理的反応の集合だけ。しかし外からそれを認識することはできません」

「でも、確かに被害者は居るんでしょう?」

「はい。しかし、被害者は外から見れば――社会的には、と言うべきでしょうか――完全に代替されています。消えたのは形而上学的な“意識”だけ」

「……被害者は特定できる?」

「『デカルト殺し』の使用ログが抹消された形跡があります。少し難しいかと」

「えーとじゃあ、つまりは」

誰かが誰かを殺したけれど。

誰が誰を殺したのかは分からない。

「まあ、わたしから言わせて貰えば」

機械の少女が、事務処理の片手間で口を開く。

「電気的化学的物理的反応だけの存在に何か問題が?って感じですが」

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