40.夏への扉
ガラスケースには、酷く画質の荒い写真が一枚飾られていた。
随分古いもののようで、写真の淵は日に焼けて黄ばんでいる。
何かの資料記録だったものらしく、写真の端には日付とナンバーが振ってあった。
画質が荒いうえ、ブレも酷く内容は判然としない。
オレンジ色の光る何かが、空に浮かんでいる。それ以上はなんとも言えなかった。
「これは?」
「これは、銀河歴の始まる前……遠い昔の、遥か彼方の星で撮影されたものです」
「なんの写真なんだ?」
「名称は不明です。“UFO”とか“FF”とか、そう呼ばれていました。現存する最古の未確認飛行物体の記録です」
未確認飛行物体というのは、実はそう珍しい呼称でもない。
戦時において飛来する敵機は多くの場合は未確認機で、レーダーから突然消えたり人間をさらったりはしない。
「この機体は戦闘機だったと推測されています。同時代の機体と比較するとオーパーツそのもので、何機かの子機を引き連れる母機としての役割を担っていたようです。独特の跳ねるような機動は反重力装置によるものと考えられていますが、機体の開発者も、『何と戦っていたのか』も不明です」
「お伽話だな」
「……この機体の特筆すべき点は――銀河歴においても確認されている、ということです。銀河の各地で目撃情報があります。一番新しいもので十八年前」
「それとこれが同一機体だと?」
「断定はできませんが」
ありえない。
何年飛び続けているというのだろう?
「誰が?何のために?」
「目撃者曰く、『何かを探しているようだった』と」




