37.死んじゃってませんかこれ?
「これはどんな機体なんだ?」
「ワープ機構を搭載したものですね」
「ワープとな」
博物館の隅に置かれた10メートル級ロボットは、めちゃくちゃ目立つ派手なピンク色をしていた。
「ただ、そこまで万能なものではありませんでした。銀河にいくつかあらかじめ用意した『駅』に飛ぶもので、自由自在に空間を行き来できたわけではありません。いわゆるワープポイントってやつですね」
「ワープドライブとは違うんだな」
「ワープドライブは空間をショートカットして目的地に飛んでいますが、この機体は違います。もっとも、この機体も正確に言えばワープではないのですが……」
「どういうこと?」
「これは、機体をパイロットごとデータに分解して、ワープ先で『組み立てなおす』ことで疑似的な空間跳躍を可能にしていました」
「それ、パイロットは死んでしまうのでは」
「この機体の忌避された点はまさにそれで、ワープ先にはパイロットを完全再現した存在が再構成されます。肉体も記憶も完全に引き継いでおり、『本人そのもの』と言って間違いありません。しかし、意識の同一性がどこまで保たれているのかを知る術はありませんでした。あるいは、パイロットはワープのたびに死んでいて、その都度『本物』が複製されているのではないか……と」
ちょっと試したくない代物である。