第9話 スープ対決は紅クジャク茸で
「あった!」
スープ対決の日の早朝。僕は近くの森の中に来ていた。
あの森は魔物が出るから入らない方がいい、と注意されていたけど、この森にあるキノコがどうしても必要で、危険は承知で森に入った。
もっとも、錬金料理で魔物除け豆腐を作って食べて行ったから、遭遇する可能性は低くなっているんだけどね。
そして森の中を探すこと1時間。お目当てのキノコを手に入れた。
「これがあれば、きっと余韻が残るスープになるはずだ」
一本のキノコを手にしていた。
紅クジャク茸。
真っ赤なクジャクが羽を広げているような姿をしている。
取り扱い注意なキノコで、危険な毒がある。
ただ、対処法をしっかりと理解していれば、最高の味だともいわれている。
たぶん、伝説のスープのレシピにはこの素材は入っていないはずだ。
ただ、どうしても、余韻を残すためには必要なもの。
それだけ採取して、村の厨房に戻った。
「味の調整、難しいな」
あまりに綺麗な紅クジャク茸を見ながら思う。
余韻は残ったけど、雑味が増えました。
そんなオチは嫌だからね。
1g単位で微妙な調整で味は変わらないが、余韻が残る様にする。
「エルフの王様なら、このあたりの味の違い絶対分かってくれるんだろうけどなぁ」
残念ながら審査員は、村の人たち。
分かるのだろうか。。。不安だ。
まぁ、心配しても仕方ないので、最高の味の「伝説のスープ改」を作ることにする。
4代目調理人も伝説のスープを作っているはず。
12時ジャストに審査員5人に飲んでもらうために。
伝説のスープ対決は、昨日と同じ村の広場で行われる。
村人たちは、ぞろぞろと集まってくる。
伝説のスープ対決は、4代目か旅人か。
娯楽が少ない村だから、こういうことがあると盛り上がる。
それを見越して村長さんは、伝説のスープ対決にしたんだろうな。
「それでは、伝説のスープ対決、スタートです」
村長を含めた5人が同時に用意されたスープを試食している。
白木の皿は、伝説のスープ。
茶木の皿は、旅人のスープ。
さすがに、公式には「伝説のスープ改」って名前は採用されなかった。
残念。
村人たちが固唾をのんで見守る中、それぞれのスープを審査員が飲み干した。
投票に入る。
一番左の審査員の上げた札は、白丸だ。
伝説のスープに一票。
村人の観客から歓声があがる。
「まぁ、あいつは料理人の親友だからな」
そんなことを観客が言っている。
それは仕方ないな。
次はどうか。
2番目の審査員の札は、黒丸だ。
なんと、旅人のスープだ。
「なんと。伝説のスープより美味いというのか!」
村人からどよめきがあがる。
これで1対1の同票。
わからなくなってきたぞ。
わーい。グルメ漫画の料理バトルみたい。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
今日も4話アップ予定です。
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