第7話 伝説のスープの不思議さ
「であるからして、このスープこそが、我が村が発展する原動力になったのであった」
ふうっ。
長々と村長さんが、伝説のスープの由来を話して今、終わった。
「この伝説のスープを作った料理人と儂は・・・」
甘かった。村長の話、終わってない。
まだ続くの?飽きたよ。早くスープ出してよ。
「ね。毎年、この話聞いているの?村人は」
「ええ。いい話でしょう。何回聞いても感動するわ」
ダメだ、こりゃ。
村人はこの話が大好きらしい。
仕方がないから、どんなスープか想像してみる。
エルフの王様に出したってことは、野菜ベースのスープ。
エルフはほとんどがベジタリアンだからね。
あと、この村の近辺で採れた地産地消のスープだという。
このあたりの野菜、木の実、果実、穀物、根菜、キノコ等々をイメージしてみる。
それらを組み合わせて、調味料で味付けをする。
ダメだ。パターンが多すぎて、どんなスープなのか全くわからない。
「まぁ、飲んでみれば分かるはずだ」
舌は自信がある錬金料理人は、いよいよ出てくる伝説のスープに思いをはせた。
「紹介しましょう。今回、伝説のスープを料理した料理人です。かの伝説のスープを作った料理人のひ孫で、4代目料理人です」
すごい歓声があがった。
4代目料理人は、両手を上げて歓声に応えている。
「このスープは一子相伝のレシピによって作られた100年前と全く同じ伝説のスープです。それでは皆さん、とくと味わってください」
いいぞ、料理人。話が短いのが気に入った。
やった、いよいよ、味わえるぞ。
と言っても、僕の順番は最後。
その間にスープが冷めないといいけどな。
台車に載った大きな鍋から伝説のスープは各自の木の皿に注がれていく。
なんと、その台車には魔石コンロが設置されている。
魔石コンロは、貴族の家には珍しくはないが、こんな辺鄙な村ではまず見ることがない。
伝説のスープのための設備なのだろう。
来た来た。もう少しで僕のとこに伝説のスープが来る。
それも熱々だから、楽しみだ。
「旅人さん。私の作った伝説のスープ、口に合うか試してください」
「ありがとうこざいます。楽しみにしていました」
村長と4代目料理人の注目しているところで、伝説のスープを味わう。
「うまい!」
立ち上る香り、ぴりっとくる香辛料、そして野菜の自然な甘さ。
思わず、感嘆の言葉が出た。
喉を通るのど越しを素晴らしい。
そして、余韻も・・・余韻も・・・余韻も?
「あれ?」
「どうしました?」
「いえ、なんでもないです」
おかしい。
これだけの美味いスープだったら、当然余韻が残るはずだ。
なぜか、それがない。
「すげー、おいしい」って味覚が言っているんだから、余韻だってあるばすだ。
それなのに、余韻が感じられない。
どうしたことだろう。
どうした?伝説のスープよっ。
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