第6話 伝説のスープ
「どうしてここにこんな弓があるのかな」
僕は不思議に思って、店主さんに聞いてみた。
このお店は森の横にある村の雑貨屋さん。
生活に必要な雑多な品物が並ぶ店。
それなのに、弓が壁に掛かっている。
それも、小さめだけど、程度が良い弓だ。
「それはエルフが作った弓でして。この村は森に住むエルフと交易をしているんです」
そうか。程度がいいと感じたのはエルフが作っているからか。
エルフは長命で木工細工とかが上手い。
弓も良く使うので、エルフ製の弓は高値で取引される。
「そういえば、もうすぐエルフの王様がやってくる時期ですね」
「へぇ、エルフの王様が村に来たりするんだ」
「年に一時だけ、やってくるんです」
そんな話を聞いたからには、ちょっと興味を持ったしまった。
特に特徴がある村ではないから、宿泊しないで次の村に行こうと思っていた。
「エルフの王様に会うことはできるのかな」
「それは無理だろう。だけど、明日、村にいたら伝説のスープが飲めるぞ」
「伝説のスープ?なんだい、それは」
村とエルフの王が付き合いを始めた原点が、伝説のスープ。
村の料理人が出した伝説のスープを飲んだエルフの王様が感動したのがきっかけだ。
そこから、エルフの人たちが村に来るようになって、取引が始まった。
「それっていつ頃のことなんだい?」
「今年でちょうど100年経つんだ」
なんと100年前。
すると伝説のスープを作った料理人は既にいないか。
「今回、伝説のスープを作るのはひ孫にあたる料理人。4代目さ」
「代々、伝説のスープが伝えられているってことか」
「そう。その料理人以外知らない、門外不出の秘密レシピらしいよ」
伝説のスープ!秘密レシピ!!
もしかしたら僕の「不思議のレシピ帳」に掲載できるかも、そのスープ。
「明日、伝説のスープをいただくにはどうしたらいいのかな」
「プレパーティが村の広場で行われるから、そこで飲ませてくれるはずだぞ」
これはぜひ、飲んでみたいといけないな。
どんなスープなのか、今からドキドキしてきた。
でも、明日、「おまえの分など無い」って言われたらいやだな。
今のうちから、ちゃんと僕の分を作ってくれるように根回ししておかないと。
まずは村長さんにご挨拶しなければ。
「こんにちは。村長さん」
「はて。あなたはこの村の人ではないですね」
身なりや顔をじっくりと見て言う。
せまい村だから、ほとんどが顔見知りなのだろう。
「はい。旅の者なんですが。明日のスープの話を聞いて是非、僕も飲んでみたいと思いまして」
「それは。それは。もちろん、村人でなくてもいいですよ」
「ありがとうござます。僕も料理人をしているので興味ありまして」
「ほう。料理人ですか。村以外の料理人が伝説のスープを飲むのは初めてかもしれません」
「そうなんですか」
「ぜひ、感想を聞かせてください」
「もちろんです」
よしよし。
これで明日、伝説のスープを頂ける準備はできたっと。
明日を楽しみに、今日は早目に寝てしまいましょう。
伝説のスープ。なにかありそうなのが出てきたね。
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